いつはりの 青き実をなす 花を選り ぬすとをゆでる 竈に投げよ
*これは、かのじょが2008年に詠んだこの歌に答える形で詠われたものです。
花の実の 朱を欺きて ことごとく あをきにしたり 阿呆の宴
覚えておられる方もいることでしょう。
朱い花の実を、嘘をついて、ことごとく青いものにしてしまった。それが阿呆の馬鹿騒ぎというものだ。
「阿呆」は「あほう」と読みましょうね。わかっているとは思いますが、一応。語調を調えて読むと、実にきつい歌です。
実際、この時代、馬鹿な人間たちがしたことはこういうことでした。嘘をついている自分を正しくするために、神が創った世界の姿をことごとくゆがめてしまったのです。馬鹿なことをやるほうが正しいのだにしたかった。だから、美女というものはみんな馬鹿なものだにした。朱い実にことごとく青い色を塗っていくように。それでなければ、自分のものにすることができないから。
だがその結果、得られたものなどほとんどなかった。馬鹿は幻の中に描いた自分の空想を食べていただけだった。そしてとうとう美女という美女を滅ぼしてしまった。
愚かなことをした。何も知らなかったからできたことだが、何も知らなかったでは済まされない。だから、誰かが表題のような歌を歌ったのです。
虚偽で作った青い実をつけるという花を、ことごとく選り出し、盗人をゆでる竈の火に投げ込んでしまえ。
馬鹿は、こういうことができるものがいることを知らない。高い存在はみな、女のようにやさしく、自分たちのすべてを許してくれると思っている。
だが、そうはいかない。
借金取りのように、きつい顔をして、馬鹿がしでかしたことの責任を、無理にでも取らしてくれる、痛い存在がいるのです。
地獄の釜の下で、ぼうぼうと火を焚いてくれる、鬼の仕事をしてくれるものが、いるのです。