ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

椿の実

2018-06-06 04:20:31 | 短歌





椿の実 割れて落ちにし 道の辺に たたずみて見る ゆふぐれの空





*わたしたちの住んでいる家の近所には、椿の木が庭に生えている家があります。毎年のように、その椿には実がなり、ときどき大きな種が道に落ちているのですが、あの椿の種というのは実に魅力的ですね。

大きくて硬くて、何か宝物のようだ。椿油などあれからとるのでしょうが、素人にも大きな魅力がある。ひとつふたつ拾って、なにもできないのに、大切にポケットに入れたりする。

油でもとらない限り、役に立たないものだとはわかっているのだが、椿の花が作った硬い実は何か玉でも落ちているような気がして、ふとたたずんでしばし見てしまいます。

最後の七の、ゆふぐれの空、は椿の実を見て、子供じみた喜びを感じる自分というものを、自分で笑いたくなったときの心です。そんなとき、人はなんとなく空を見るのです。わかりますね。空に今のこんな自分を見てくれる人がいるような気がする。だから自分を冷静に見ようとするとき、人は自然に空を見るのです。

夕暮れ時に、近所の家の前を通って、硬い椿の実を見つけて、それを拾ってポケットに入れたいと思っている、こんな子供じみた自分を、空はどう思っているだろうか。

だれのものでもない椿の実を拾っていくのは自由だ。拾うだろうか。拾わないだろうか。植えるところもないのに拾ってもゴミになるだけだろうけど。わたしなら、しばしの楽しみのために、拾っていきます。

そんな不思議な椿の種は、しばらく不思議な香を放って、じっとそばにいてくれたりするのです。そして何かをしてくれる。

わたしたちが書斎にしている部屋のどこかには、そんな椿の種がどこかに潜んでいる。それはいつかしら見つかって、不思議なことをわたしたちに言ってくれるのです。






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