人間が 見栄えばかりを 磨くのは 自分がつらくて しょうがないから
*大火節ばかりが続きます。スランプ中は、どうも彼のこの作風がやりやすいようです。古語を使って気取って詠みたくなる時もありますが、そっちのほうはどうもうまくいきません。
これも、言い言葉がそのまま歌になったような歌ですね。それをそのまま言っていて、別に解説などしなくてもいいようなものだ。実にそのとおり。人間が見栄えばっかりきれいにするのは、自分がつらいからなのです。
本当の自分を馬鹿なものだと思い込んでいるからです。
なんで自分を馬鹿なものだと思い込むかというと、日ごろ、自分が馬鹿なことばかりしているからです。自分というものは常に自分を見ていますから、そういう自分の馬鹿さ加減のことも知り抜いているのです。
なぜ馬鹿なことをするのか。そうでもしないと自分がいいものにならないからです。馬鹿な人は自分が馬鹿だと思い込んでいますから、とにかく嘘でも自分をいいものにしたいのです。そのために、いやなことやずるいことをたくさんしてしまう。そんな自分がまたつらくてしょうがない。
そんな自分がいやなら、嫌なことはすっぱりとやめて、正直な自分に戻るほうがいいのだが、そうなると自分が痛い感じで醜くなるので、それは嫌なのです。
嘘でも、自分が美しいほうがいい。
でもそれだと、嘘をついている自分がつらくてたまらない。
こういう負のスパイラルにとらわれている人は、とにかく見栄えをよくします。嘘をついて作った自分をきれいに磨きまくる。せめて見栄えくらいよくしないと、自分には何もないと思い込んでいる。
ですから、とにかく見栄えを磨いている人は、自分がつらい人だということができます。嘘をついて作った自分を着込み、本当の自分を隠している人なのです。
嘘をつかない人は、あんまり見栄えは気にしないものですよ。本当の自分で生きているだけで、自信にあふれ、それだけで十分に美しく見えるからです。