マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

あいち国際女性映画祭2008

2008-09-14 | 映画について

終了して1週間経った。祭の後の淋しさをかみ締めている。
 今年もさまざまな出会いを楽しむことが出来た。映画を観ることも好きだが、映画を通して多くの人と触れ合うことはさらに好きだ。
5日間のうち2回、二次会を開いた。メンバーは重なったり、異なったりだが、延べ16名の集いとなった。うち1人は県外から、2人は新しく加わった夫婦である。
2回にわたる楽しい語らいをまとめてみた。
あいち国際女性映画祭2008
①作品評 ( 5点満点)
「私たちの生涯最高の瞬間」・・・5点/3人 、4点/1人
・スポーツの描写が良い。
・ベテランの男性監督と新人の女性監督、男性監督と女性の選手 同士との対比が面白い。
・とにかく惹きつけられた。社会性のある良質のエンターテイメント。
・ストーリーは分っているが、泣ける。

「シンガポール・ドリーム」・・・5点/1人、4.5点1人、3点/3人
・文句なし。この映画と出会えたことが最高の収穫。
・とりとめのない話で、物足りない。

「ネコナデ」・・・3点/2人
・監督に興味を持って観たが・・・。
・シリアスドラマなのか、コメデイなのか、中途半端。

「ティラミス」・・・5点/1人、4点/3人、3.5点/1 人、3点/2人
・女性監督ならではのディテールのリアルさに感心した。
・大変面白いが、ラストが性急すぎて説明不足。
・オランダを訪れたことがあり、楽しみながら鑑賞した。
・ベテラン女優が主人公になるのは、日本では珍しい。
・職業、住居、夫婦、親子など取り上げ難い問題を扱っている が、まとまりがない。
・白地が多く、字幕が読みにくい。

「小梅姐さん」・・・4点/1人
・自立した女性の生き方として、興味深く観ることができた。

「ピンアイ」・・・5点/2人 、4.5点/1人
・思想の表現が自由にできないない中国で、このように体制批判を堂々と述べる主人公の鉄の意志と行動、および監督の姿勢と覚悟に共感を抱いた。
・子どもや夫に尽くして本望という主人公。自分の人生の楽しみはどうなるのか。 現代女性の1人として不満が残った。
・中国の農民女性の生き様をみごとにとらえた作品は初めて。土地の移動に反対を貫いたのは当然。カメラを1人で扱っているため、土地の移動の位置関係が分り難いのが難点。

「ボーン・イントゥ・ブロッセルズ」・・・5点/3人 、4.5点/2人、3点/1人
・主人公の少年が凄い。こんな現実が今も続いていることにショック。身分を問わず,歴代、売春を生業にしているとは・・。監督の努力に脱帽。
・世界に問題提起する力作。「売娼窟に生まれて」のタイトルほうがわかりやすい。
・辛い状況を打破するには、とにかくやってみること。暗いなかにも光が見え、救われた。
・日本人の視点では、監督の行為は希望だが幻。子どもたち は、いつかどすんと落ちるのでは。

「ストーン・エンジェル」・・・3.5点/1人、2点/1人
・永遠のテーマ。歳は誰でもとるもの、人生をどう考えるか。
・我侭な女性の一代記 。テーマが絞りきれておらず、何がいいたいのか、散漫な印象。

「今日という日が最後なら」・・・3.5点/1人
・景色はいいし、主役の女の子は最高だが、素人が撮った作品の域を出ない。

「ファイター」・・・5点/1人 、4点/2人 、3点/2人
・カンフーシーンは普通の出来だったが、心理描写、宗教・移民など社会の状況がよく分った。
・主人公の女の子がカッコイイ。移民ムスリムとデンマーク人との接点がない北欧の事情がよく分った。これからの政治的課題としてとらえているところがいい。
・ありがちな内容だが、カンフーシーンがいい。画面が暗いのが気になる。
・師匠がホンモノのせいか、ダイナミックなカンフーシーンは香港映画よりも上手い。

「空想の森」・・・5点/1人、4点/2人
・一般にドキュメントの大げさな描き方がいやみななか、大変自然で演出力もあり、ぐいぐい引っ張っていく。合宿シーンや赤ちゃんが印象的。
・ 作って食べるだけでなく、買い手に渡るまでのプロセスや、外部の人たちとの関わりなどを描き、閉塞感を打破してほしい。冬場の暮らしも気になる。
・観ている間中、幸せ気分だった。子育てしながら土と親しむ姿に共感。あんなに幸せに農業がやれるのか、疑問に思えるほどだった。

「原口鶴子の青春」・・・4点/2人、3点/2人
・ダイナミックな展開に目を見張った。当時の製糸業の富裕さを実感。一部エリートの記録。日本女子大と心理学の格好の宣伝になるのでは。
・変わったモチーフに感心。生存者が身内に限られ、資料も少ないので、限界がある。
・建物と活字資料が中心なので、平板になりがち。素材はなかなか面白いのでぜひドラマ化してほしい。

②総評
* 作品
・2日で2本観た。
・4日で9本観た。まとめて映画を観られるいい機会。感動作品は5割。
・4日で7本観た。ドキュメントや外国作品などバラエティに富み、選択はいい。いやみがなく、劣っている作品もないが感動作がない。
・3日で 7本観た。全体にこじんまりして、いい風に収まりすぎ。もう1度観たい作品がない。 衝撃的・感動的な作品が1~2本でもあるといい。
・5日で8本観た。国内ドキュメンタリーが弱い。ベテランの重厚な作品があるはず。ドラマも小粒だ。商業映画にはないユニークな作品を探して欲しい。
・2日で4本観た。初公開ではない作品を目当てに来る人が多いことに疑問。
・5日で10本観た。作品はおおむね満足。
 ・4日で9本観た。6本に満足。これぞ、というものは4本。全体では質的にやや不満。

*入場
・夜来の台風のため、朝,時間に遅れた。交通や天災などやむを得ない事情がある時は、20分過ぎていても、途中入場を認めて欲しい。奥の席から出入りして、立ち見でもいい。

* 食事 
・昼食の時間が少ない。地下レストランはまずく、売店は予約制。コンビにも遠い。近くに飲食店が少ないので、弁当と飲み物を用意してほしい。
・地下レストランは 閉店が早すぎる。軽食程度でもいいから 夕食を用意して欲しい。腹が減っては戦は出来ぬ。
・祭だから、食の楽しみも大切。もてなしの心が感じられない。

*ゲストトーク
・形式的で、司会の質問はワンパターン。40分では少ない 。1時間は必要(シンポジウムジウムは2時間必要)。
・司会者は一新されたが、進行だけにとどめ、口を挟まないで欲しい。質問が途切れた時のみ、用意した質問をすること。
・写真と録音禁止にげんなり。祭だから楽しみを与えないと・・・。
・ ゲストと観客がダイレクトに交流する場が欲しい。せめてトークの後くらいは、別に座談室を設けて1時間ほどでも話したい。

*パンフレット 
・内容が貧弱。監督のコメント、フィルモグラフィー、作品紹介など
1作品に2p割いて欲しい。
・ 500円でもいい。もっと良いものを作って欲しい。
・挨拶などはいらない。
・前売り券発売時に、発売してほしい。
・13回も開催しているのだから、過去の作品の紹介も、毎回入れて欲しい。 岩波ホールのパンフを参考にしては?
・記録集を一般販売しては?希望者を募り、前金制度にしては?

*その他
・全国的に認知されるような魅力のある映画祭にしたい。
・PRは十分か?
・ゲストは家族共々招待されていると聞く。その費用と作品の質が平行していれば良いのだが・・・。
・主催者が頑張っていることは良く分る。年々改善されているが、まじめすぎてゆとりが感じられない。もっと楽しみながらやれば、もてなしの心も出てくるのでは?
・もっと全国の映画祭を研究すべきである。
・ 交流パーティー券は、例年と違って発売早々売り切れたが、常連の熱心なファンは置き去り状態。会場を変えて当日券を発売する、または、別の日に簡単な交流の場を設けるなど、柔軟な対応を考えても良かったのでは?

 以上、毎年、ファン同士の交流のチャンスを活用、感想をまとめ、提言をしている。
 なお、今年は司会の質問時間が少なくなった、ゲストとの交流の場が少し増えたなど、多少は改善の兆しが見られたことを評価したい。

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