チェインブレーカー及び関連領域の郵便史

ユーゴスラヴィア建国当時~1922年頃までの旧オーストリア・ハンガリー帝国地域のチェインブレーカーを中心とした郵便史

2006クロアチア官製葉書 セルビア軍占領下のバラーニャ地方での使用

2008年10月15日 21時06分43秒 | 葉書
2006クロアチア官製葉書 セルビア軍占領下のバラーニャ地方での使用

解説: セルビア軍占領下のバラーニャ地方
第一次世界大戦後、セルビア軍は、鉄鉱石鉱山の支配を目的として、ハンガリー南部のバラーニャBaranya地方を占領しました。
その中心都市PÉCSペーチは文化都市であり、ハンガリー最古の大学であるペーチ大学があります。
バラーニャ地方では、セルビア軍の占領下で当初はハンガリー切手がそのまま使用され、後にハンガリー切手にBaranyaと加刷した一連の切手と葉書、レターカード、書留封筒が発行されました。

ユーゴスラヴィアの切手(スロヴェニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア)の切手は、バラーニャ地方の郵便局の窓口で発売されることはなく、これらは公式にはバラーニャ地方では無効でした。また、バラーニャ加刷切手がユーゴスラヴィアの郵便局で発売されることも無く、もちろんそれらはユーゴスラヴィアでは無効でした。

しかし現実には、セルビア軍占領下のバラーニャ地方で、スロヴェニアのチェインブレーカーの使用例が非常に少数ですが報告されています。
私の知っている範囲内では3例の使用例が文献で報告されており、私はその内の2例(この葉書とこれとは別の封書)を持っています。
私のコレクションの2つの使用例は、イギリスのYugoslavia Study Groupの機関誌Jugopošta No. 42, p.32-34, September, 1995に投稿してあります。
もう1例は封書で、Jugopošta No. 41, p.24, June, 1995に掲載されています。



ご参考までにBaranya加刷切手がユーゴスラヴィアのクロアチアのNOVA GRADIŠKA(ノヴァ グラディシュカ)で使用された郵便為替(料金計算と切手の貼り付けは郵便局員が行なう)の使用例は、
EXPONENT
SLOVENIAN ISSUES FROM 1919 TO 1920 IN MIXED FRANKING
http://www.japhila.cz/hof/0146/index0146_076.htm
に公開されています。

この他に、ユーゴスラヴィアの葉書やレターカードがセルビア軍占領下のバラーニャ地方で使用された例も報告されており、下記の文献があります。
イギリスのYugoslavia Study Groupの機関誌Jugopošta
①No. 52, December, 1995
②No. 51, Sepetember, 1995 ---これは私のコレクションの報告であり、クロアチアで発行された軍事葉書へ加刷した葉書がバラーニャのPÉCSペーチからスイス宛てに使用された例です。ただし、これはフィラテリック・メールと考えられます。

このようにバラーニャ地方の国境近辺では、ユーゴスラヴィアとバラーニャ占領地の切手が非常にまれに併用されたと考えられます。
それらは、公式に郵便局で発売されたものではなく、旅行者や軍人が持ち込んで使用したと考えられます。

画像の使用例の解説

クロアチア官製加刷葉書: Mi P39 B, 15 filir
切手: セルビア軍占領下のハンガリーのバラーニャ地方加刷
5 fillér (Mi.20)
3 Korona (Mi.32)
45 fillér (Mi.40)
50 fillér (Mi.53)
100 fillér (Mi.55)
合計5 Korona 15 fillér

書留ラベル: Pécs 2823

宛先: Zürich (スイス)

セルビア軍占領下のバラーニャ地方の郵便料金
外国葉書料金: 100 fillér
外国書留料金: 250 fillér
合計: 350 fillér
ただしこの郵便料金の文献の著者は、外国宛て葉書料金に関しては、今後再確認が必要と記載しており、この料金が正しいとは限りません。

参考文献:セルビア軍占領下のバラーニャ地方の郵便料金の出典
イギリスのYugoslavia Study Groupの機関誌Jugopošta No. 66, p.66/5-66/10, June, 2003
著者: Bernard Sharp
The Baranya Republic – The Serbian Occupation of 1918 to 1921 – Postal Tariffs バラーニャ共和国- 1918年から1921年のセルビア占領- 郵便料金

消印
PÉCS 920 JUN ? A1A (セルビア軍占領下のバラーニャ地方)
PÉCS 1郵便局1920年6月?日、消印識別記号A、ハンガリー型消印
PÉCSの日本語読みは「ペーチ」です。

この使用例では、書留ラベルが貼られ、スイスの到着印がありますから、実逓便であることは間違いないと思われます。
この使用例では、クロアチア官製加刷葉書にセルビア軍占領下で発行されたBaranya加刷切手が貼られています。消印はBaranya加刷切手には押されていますが、クロアチア官製加刷葉書の料金印面15 filirには押されていません。
正確な外国宛葉書料金はまだ確定していませんので、クロアチア官製加刷葉書の料金印面15 filirが郵便料金に含まれるかどうかは確定できていません。



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