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ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

かれいどすこーぷの演奏 ヴァンガードにて

2015-06-08 00:32:18 | エッセイ

 今夜も、南町ヴァンガードのライブ。

 先日の酒井俊が、本当に久しぶりのことで、震災以降、はじめてのライブだった。

 ヴァンガード自体では、ある時期から再開していたが、私の方で、いまひとつ、聴きに行く態勢になっていなかった。

 もっとも、ヴァンガードも、最近はずっと、積極的にライブを開催し、ということではなくなっていて、どちらかと言えば、断り切れずというか、あるいは、本当に好きで、みたいなものに絞り込んではいるようだ。

 で、今夜は、ふたり組み。カレイドスコープというユニットらしい。

 チラシを観て、あ、これは、と思って、チケット購入したはずだが、具体的にどんな音楽なのか、把握していなかった。

 女性は、ヴォーカル。

 男性は、ギター(クラシックギターで、ピックアップ付き)とピアノとキーボードと足でバスドラムのように叩く金属のパーカッション(えーと、カウベル、か)と、ボイパー(というのか、声のパーカッション)とコーラス。

 なんというか、余計な力の入らない、高尚な趣味の音楽を聴かせていただいた、有難い、みたいなところ。

 趣味の音楽というと、素人が自己満足で、というものと誤解される恐れがあるが、これは音楽のほんとの玄人が趣味でやってます、みたいな贅沢な代物である。

 一曲目、ジャズで、ボサノバで、みたいな雰囲気で始まると、二曲目は、案の定、というか、アントニオ・カルロス・ジョビン。クールで、無機質で、不協和音で、上品な音楽。

 女性は、クラシックをきちんと学んだ人で、後に、ジャズが好きでというふうに進んだ人のように思われる。良く分からないのだが、ソプラノでもなくアルトでもなく、メゾ・ソプラノではないのかと思う。クセのない上品な声と正確な音程。歌謡曲のような情念とか、安易なJポップのような過剰なサービスはない。テレビに出てきそうな、ステージの真ん中にひとり立って、いかにも歌手らしい存在感を誇示する歌手ではない。しかし、きちんとした楽器としてふるまえる音楽的素養を備えた音楽家。

 男性は、本来は演奏家ではない、と思う。しかし、ギターも、ピアノも、きちんと良き音を鳴らす。どちらかというとゆっくりと指を置きに行っているかのような。流暢な、流麗な演奏ではない。しかし、しっかりと確実で正確で心地よい演奏。あれっと思うと、いつのまにか、早弾きもしているみたいな。作曲家兼編曲家が本業のような気がする。作曲家が、歌手のために書いた曲を歌うと、実は、声質などはそれほどではないにしても、とてもいい歌を歌う、本来のあてがわれた歌手よりもいい歌を歌ってしまう、そんな感じの演奏、といえばいいか。ジャンル的には、フリージャズの範疇のひとではあるのだろう。フリージャズのひとというのは、実は、スタンダードなジャズ、ラテン、クラシックその他全ての音楽ジャンルに精通したひとのことなのである。たぶん。

 ふたりともそういう音楽の玄人なのだが、通常には人前で歌ったり演奏したりを本業にはしていないひとが、やはり、止むにやまれず、人前で演奏したくなってしまって、小さなライブハウスのツアーに出ていますよ、みたいな感じ、といえばいいか。

 脱力して好きな音楽を好きなように演奏してくれているが、そこに、きちんと修行した底力がおのずと現れてしまっている、みたいな演奏というか。

 というわけで、今夜のヴァンガードもとても上質の心地よい空間であった。もう少し、多くの観客に聴かせられれば、もっと良かったのに、もったいないな、みたいな。

 ヴァンガードには12年続けて来ているそうで、来年もぜひ、ということで、楽しみにしておきたい。

 とまで書いて、改めてチラシを見ると、女性は、前田祐希、男性は松井秋彦というかたらしい。男性は、バークリー出身か。岡本優子さんの先輩か。

 で、いま、買ってきた松井氏のアルバムCPJを聴き始めた。なるほどね。

 あ、そうそう、チラシは「かれいどすこーぷ」と書いてあるが、かれらは口ではカレイドスケイプと言っていた。普通には「カレイドスコープ」で万華鏡の意味だが、どうなんだろう?


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