持続しているのに
切断される
繋がっているのに
切り離される
遠い
遠いところにいる
声が聞こえるところ
いやだから直接ではなく
波に乗って
水の波や
空気の波ではなく
糸の震えでもなく
ときおり
乱れて
中断する
かすれて
聞こえづらかったり
まったく
聞こえなかったり
つながる . . . 本文を読む
空が青い
雲も多いが
陽も出ている
西の山は寒々と白い
青黒い森をはんぶん白いものが覆う
橋を車が往来する
古い橋がはんぶん解体されている
新しい橋を車が往来する
道が繋がっている
寒すぎないが
きりりと冷えてはいる
暗くはない
昼の明るさ
歩行者は見えないが
人間は活動している . . . 本文を読む
朝食を摂って
歯を磨いて
着替えて
カバンを持って
玄関を出る
行ってきます
そのまま
家を出る
夜になっても
帰らない
※
電車に乗って
遠くまで行く
終点に辿りつかない経路を探す
新幹線は
たぶん使わない
ずっと線路を周遊しつづける
星の瞬く夜も
日の出の朝も
. . . 本文を読む
それは
あるのかないのか
ないわけはない
あるのだが
それはいったい何なのか
これは本だ
だれかが作成した本だ
かれが書いた本だ
かれが編集した本だ
かれが発行した本だ
かれが印刷した本だ
かれが製本した本だ
かれが梱包した本だ
かれが発送した本だ
かれが受け取った本だ
かれが並べた本だ
かれが売った本だ
かれが買った本だ
かれが読んだ本だ
& . . . 本文を読む
いいよ
私の詩でなくとも
書きたいことを自由に書けば?
なにも
私のことを書かなくてもいいのよ
かわいいだとか
きれいだとか
そんなこと書かなくてもいいわ
眠ってしまう
もう眠りについてしまう
明日の朝に
眼が覚めて
あなたにまた
愛してる
とか
言ってもらわなくてもいいのよ
言わなくとも
聴こえてくる
から . . . 本文を読む
わからないことを書こうとすること
わかることを書いているうちにわからないことに出会ってしまうこと
どこをどう書いてもわからないことにぶつかってしまうこと
ほんとうはわかっていることなんてひとつもないこと
いや
ひとつふたつはある
10パーセントくらいはわかっていることがある
でも
いくら多めに見積もっても
たかだか10パーセントくらいだということ
この部屋の中の . . . 本文を読む
中心に何かある
おぼろげに
よく見えないような
よく知っているような
直接に知っていることはない
また聞きだったり
媒介を通してだったり
とてもよく知っているような気になっているだけ
なのだろうな
意味はない
とりたてて意図もない
周縁があるので
自ずから中心がある
というようなことになっているだけ
底抜けの円筒
底の抜 . . . 本文を読む
想い出は美しすぎる
いつもいつも
想い出は美しい
残酷なことも
非道なことも
冷酷なことも
悲しいことも
泣きたくなるようなことも
淋しすぎることも
すべて
透明に
美しくなる
美しい
美しくなる
いつのまにか
透明になる
無重力の
内実が脱け落ちて
形だけ残ったような
質量を失って
形相だけに . . . 本文を読む
誰もが皆
祖母になれるわけではない
しかし
誰もが皆
老婆にはなる
生きている限り
おばあさん
生きていて良かったね
美しい老婆
七五歳を過ぎても
美しい女性
しかし
頬のあたりに張りがあって光沢があって
しわひとつない五十歳代や六十歳代が
人間として美しいかどうかは
疑問だな . . . 本文を読む
朝起きると
何ものかになっている
わたし
わたしでない何か
昨日のわたしと違うなにか
体の組成は確かに幾分か違っている
体を構成する分子は確かに入れ換わっている
わたしとは固定されたモノではない
ああ
だから
水の流れが川であるようなもの
風の動きが台風であるようなもの
美味しいものを食べて
わたしは変わる
. . . 本文を読む
小さな頃
川に遊びに行った
川で泳げるように
ほんとうの自然のままではなく
少しだけ手を掛けてあったように思う
石を積み上げた堰をつくるとか
底を適度に深くほぼ平らにして置くとか
ひとの手だけでできるようなことをしていた
と思う
せいぜい
小学校1年生のころのことだから
記憶も定かじゃないけど
近くの大人がそういうことをしていたのだろう
と
. . . 本文を読む
窓の外に青い空
よく晴れて白い雲が浮かんでいる
昨日は曇り空だった
どんよりと雨が降り出しそうな
おとといは雨だった
全天を覆う鼠色の雲
その前は
曇り時々雨
その前の日は
晴れ
特筆すべき特徴のない晴れの日
ありふれた
凡庸な晴れの日
天の半分以上が雲に覆われ
半分に満たない青空
今日は
晴れ
特筆すべき晴れ
輝くような白い雲の . . . 本文を読む
海は大きい
そして広い
青かったりもする
緑がかった青だったりもする
黒いほとんど黒に近い紺色のときもある
空が晴れ渡って
白い雲が映っていたりもする
夕陽が光を映していたりする
太陽と一緒に出かけてしまったりする
太陽と一緒に溶けてしまったりする
そもそも液体が
溶けるっていう話はないのだけれど
海は大きい
. . . 本文を読む
高山の中腹のキャンプで
ギターを掻きならして歌う
ハードロックとか
ブルーズとかは似合わない
カントリーミュージック
がいちばん似合う気がする
歌謡曲やJポップではありえない
気がする
いっそ
日本の民謡
っていうのもシュールで良い
かもしれない
ギター一本で
さいたら節か
前は海
サアヨオ
後は山で
小松原
トオエエ
あれはエ . . . 本文を読む
最近は
あ これを書こう
とぼんやり思って書き始めると
それなりの長さが自ずから書けてしまう
ダイレクトにそのことだけ書いても意味が伝わらない
読む人に伝わるように書こうとすると
直接には念頭になかったこと
暗黙の文脈
前提から書き起こさないと
なんのことか分からない
ということになる
もちろん
長編ではあり得なくて
それなりの
ごく短い . . . 本文を読む