で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2019回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『GAGARINE/ガガーリン』
移民の若者が老朽化した団地を守るため、修繕をする青春ドラマ。
2020年・第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション作品。
主演は本作がスクリーン・デビューとなるアルセニ・バティリ。
共演は、『フレンチ・ディスパッチ』、『パピチャ 未来へのランウェイ』のリナ・クードリ、ドニ・ラヴァン。
監督は本作が長編デビュー作となるファニー・リヤタール&ジェレミー・トルイユ。
物語。
パリ東郊に位置する、赤レンガの宇宙飛行士ガガーリンに由来する、大規模公営住宅ガガーリン団地。
この団地で育った16歳のユーリは、宇宙飛行士を夢見る一方で、自分を置いて恋人の元で暮らす母の帰りを待ち続けていた。
ある日、老朽化と2024年パリ五輪のため、ガガーリン団地の取り壊し計画が持ち上がり、それを決定する調査が行われることになる。
ユーリは団地を守るため、親友フサームや思いを寄せるロマの少女ディアナとともに、検査を突破しようと団地の修繕を開始する。
脚本:ファニー・リヤタール、ジェレミー・トルイユ、バンジャマン・シャルビ
出演。
アルセニ・バティリ (ユーリ)
リナ・クードリ (ディアナ)
ジャミル・マクレイヴン (フサーム)
フィネガン・オールドフィールド (ダリ/売人)
ファリダ・ラウアジ (ファリ)
ドニ・ラヴァン (ジェラール)
スタッフ。
製作:ジュリー・ビリー、キャロル・スコッタ
撮影:ヴィクトル・セガン
プロダクションデザイン:マリオン・ブルゲル
衣装:アドリアン・ドゥルプ
編集:ダニエル・ダルモン
音楽:エフゲニー・ガルペリン、サーシャ・ガルペリン、アミン・ブアファ
『GAGARINE/ガガーリン』を鑑賞。
現代フランス、16歳の少年が老朽化した団地を守ろうと修繕する青春ドラマ。
2024年のパリ五輪のために再開発予定になったパリ郊外の実在の公営住宅“ガガーリン団地”で撮影されたフィクション。あの宇宙飛行士にちなんだ名前だそうで、最初に実際のガガーリンが訪れている映像も流れます。
諦めの世界で、若者が修繕で抗うまっすぐな反抗ものとなっている。リアルであり、寓話ものなのよね。
フランスの公営住宅といえば、『ディーパンの闘い』や『アルティメット』や『憎しみ』など、あまりいい場所として描かれない。今作でもその要素はあるが、それよりも、住民同士の和やかな様子と共同体としての生活が描かれ、ノスタルジーを喚起される。
青春映画としては、『心が叫びたがってるんだ。』を思い出した。学園ものじゃないけど要素が似ていて、日本アニメの青春映画が好きだと見やすいと思う。
本作がスクリーン・デビューとなるアルセニ・バティリのまっすぐさが青くて哀しい。
リナ・クードリは、同時期に今作、『フレンチ・ディスパッチ』、『オートクチュール』と三作が公開される旬の女優で、今作でも映画を牽引している。フィネガン・オールドフィールドがだんだん熱が通ってくると味が出てくる。少ない脇キャラが息をしている。ドニ・ラヴァンがフランス映画と捺印す。
監督は本作が長編デビュー作となるファニー・リヤタール&ジェレミー・トルイユ。
あえて、隙間のある物語で、焦れと想像力を描き出す。
古く危うい地域を綺麗にして住民を追い払い歴史を消すジェントリフィケーションの問題を扱っている。
リアルな実際の建物での撮影による巨大さが魅力。
撮影と美術の良さに、「あぁー映画だなぁ、映画館だなぁ」と闇の中、孤独を分け合う。
ステキで苦みもある青春映画であり、児童映画になっている。
ミニマムな『オデッセイ』だったりします。
あるところでは、『さがす』に似ているところもあったり。
映画宇宙の星々に思いを馳せさせる。
ノスタルジーでファンタジーで、あなたの思い出を宇宙の風に乗らせる。
今日も、宇宙の一角で僕たちは生きている。
犬のような僕の人生、あの宇宙で死んだライカ犬と僕はどっちが不幸せだろうか?
テニスボールの太陽の周りをミニトマトが公転する星作。
おまけ。
原題は、『GAGARINE』。
『ガガーリン』。
2020年の作品。
製作国:フランス
上映時間:98分
映倫:G
配給:ツイン
2024年のパリ五輪のために取り壊されたパリ郊外に実在の公営住宅“ガガーリン団地”で撮影された。
ガガーリン団地は2019年から16か月をかけて解体され、跡地は、<グレーターパリ>計画の一環として、緑地多く、エネルギー効率の高い建築物が並ぶ街となる予定。
ややネタバレ。
犬の名前を、ライカと呼ぶのは、あのライカ犬のことになぞらえているからですね。
ややネタバレ。
フルーツ・チャンの初期作品を想起させます。
『メイド・イン・ホンコン』とかね。
ネタバレ。
ガガーリンの言葉では「地球は青かった」よりも「神はいなかった」の方が世界的には有名。
今作は、『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』の影響下にあるのではないか。
『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』のあらすじ。
兄エリクと結核を患う母の母子家庭で暮らす少年が、母の病状悪化で田舎の叔父の家に一人で預けられる。
少年は村の少年たちにまじり、サッカーとボクシングに興じる一人の少女と出会う。
今作は、これを反転して、置いていかれた少年が、世界になじめない機械好きのロマの少女に出会う話だったりする。
孤独についてを寓話化している。
宇宙の孤独に自分の孤独をなぞらえて、逆にそれを憧れの状況にすることで、訓練にさえしたてたところが素晴らしい。
宇宙ステーションだと修理も当たり前ですしね。
少年の名前もユーリとががー論と同じなので、お父さんが宇宙好きだったの可能性あり。
彼の宇宙への憧れはいない父への憧憬でもあり、ガガーリンは疑似父とも見える。
つまり、彼にとって、ガガーリン団地が父となる。