忘れがたき、厳しき師匠の一言
（師を持たない人間の弱点は、傲慢な命をいさめてくれる経験がないが故に、自分自身をセーブすることが出来なくなる点です・・・・・。どうしても自分自身の弱くて汚い命に負けてしまって、醜い人間の振る舞いとなってしまうようです・・・・・。アショーカ大王も、師匠を持った時と、いない時では、180度人間性が変わり、当然行動自体も変わってしまって行ったようです・・・・・・・。）
こんにちわ。3月も半ばだと云うのに、毎日のこの寒さは、心の中まで、凍えさせて、なんとなく重苦しい気持ちにさせられます・・・・。どうした事でしょうか・・・・・・。
こんな時、よく思い出すのは、つらく厳しい設計事務所への弟子入り時代の、厳しい建築の師匠の一言です。
私は、以前にも述べましたが、中学校の学生時代に、担任と体操クラブの顧問で、毎日お世話になって、私をよく見ていたY先生に、『岩城君は、真面目すぎる。』と言われました・・・・。それが、どう云う意味なのか、今もって考えさせられ、忘れる事が出来ませんが、そうした事も関係しての事でしょうか、工業高校を卒業し、進学への夢にも挫折していた私を拾っていただき、弟子にして頂いた当時の設計の師匠であったS所長より、よく『岩城君！おまんは、女のような、はっきりしない、めめしい返事しかできんようでは、設計は出来んでよ・・・・。』『男やったらはっきりせんといかん！』・・・・このようにいつも厳しく、指摘を受けていました・・・・・・。
（中学三年生のときには、夜須川からこの自転車で、赤岡中学校に通っていました・・・・・・・。ただひたすら、体操クラブの活動に打ち込み、辛い現実を紛らわしていた時期かも知れません・・・・・。・・・・・厳しい現実には逆らうことなく、ただひたすら耐え抜く・・・・・・。いつの間にか身に付けたこの事が、『まじめすぎる』と言われる人格形成に繋がって行ったのでしょうか・・・・・・・。・・・・現実逃避の典型であったのかもわかりません・・・・。厳しき恩師は、それを見抜いての指摘だったのでしょうか・・・・・・。師匠は本当にありがたいものです・・・・・・。）
自分ながらに、何で、こんなに女々しいと言われる性格ながやろうと、本当に悩み苦しみ、早く力をつけて、みんなを見返してやるぞと、もがき苦しみながら厳しい苦闘の日々を送っていた時の事です・・・・・。その厳しいS所長が、ある日の仕事を終える夕方の6時ごろ、『岩城君！一緒に飯でも食いに行こうか・・・・！』と、初めて誘ってくれたのです・・・・・。尊敬する厳しい師匠からのその一言が、どれほどうれしかった事でしょうか・・・・。そして、居酒屋さんに連れられて行って、S所長が、すこし、お酒も入っていたのですが、しんみりとこのような話をしてくれたのです。
（百獣の王ライオンは、自分の子供を千尋の滝に突き落とすと云います・・・・・・。その千尋の滝から這い上がってきたものだけが、百獣の王の後を引き継ぐと云うのです・・・・・・。そのような厳しさの中でこそ、立派な後継者が育つと云うのです・・・・・・・。）
『岩城君・・・・・、女性の一番美しい姿は、どんな姿の時か判るかえ～・・・・・・。』・・・・と、私が、答えられずに黙っていると、S所長は、続けて『…それは、何にも着飾らない、女性の何にもつけない裸の美しさにかなうものは無いろう・・・・・・。それと同じように、建築もおんなじで、あれやこれやと着飾るよりも、何にもつけない裸の木の構造体の美しさに敵うものは無いでえ～・・・・・。・・・・女性もそうやろう・・・・・。』・・・・・このように言って、木造建築の極意を、これから建築を、学ぼうとしているおぼつかない私に、判り易く、こんこんと教えてくれたのです・・・・・・・。
・・・・・あれから、43年が経ちました。・・・・・その時の厳しき建築の恩師も、昨年他界してしまいました・・・・・・。しかし、その時の恩師の一言は、今もって私の心の中にシッカリと焼き付いて、建築学の生涯の指針となり、私の住まいづくりの大きな原点となっているのです・・・・・・。『世の中で最も美しい、女性の裸に、匹敵する美しさが、着飾らない木の骨組みの中にこそある・・・・・。』・・・・素晴らしい名言であると、建築の恩師の偉大さを、今更ながらに、深くかみしめている今日この頃なのです・・・・・・。
厳しき師匠にこそ、感謝です！！
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