―TSUREZUREGUSA―

つれづれと、日々のおもひをつづること。

試みの数々

2010-05-14 22:35:39 | BOOK
自然な建築/隈研吾(岩波新書)
これぞ、試み、だと思う。
序章、終章では冷静な目で20世紀という時代の建築のあり方、
自然素材とは、という視点でラジカルに説き、
本章として、様々な自然素材を使用した実際の自身の設計事例を。
単なる設計手法ではなく、
その素材を自然素材として使用しつつ、現代の技術も駆使して
防火や強度の問題を如何にしてクリアしたか、という点が書かれていて面白い。
全体を通じて感じたのは、問題の解決には職人さんの視点が不可欠だということ。
ディテールのおさまり、その素材の生かし方、
職人さんはその素材の生き字引のようなもの。
設計者や構造設計者からだけでは出てこない案や技術の原石は職人さんとのやり取りから生まれる。

すごいなぁと思うのは、毎回、どれも初めての手法や試みであるということ。
以前使った手法や前例がある事例はそこにかける工程も手間も少ないし、
出来上がりも想像がある程度出来るであろうしリスクも小さい。
「初めて」とは挑戦で、守りの姿勢に入ったらそれなりのことは出来ても新しいことはきっと出来ない。
「初めて」というと試行錯誤する過程で日数もかかるし、手戻りも多いであろうし、リスクもある。
その反面、新しいことに挑戦する喜び、新しいことへの好奇心、
初めてのもの、初めての手法を知る喜びや、道が開けた時の達成感が数倍であることは想像に難くない。
きっと時間も忘れるくらい毎日仕事に打ち込んで、
頭がウニになりそうなくらい考えたり、わくわくしたり…。
そういう温度で仕事が出来ることは、とても幸せだと思う。

以下、一つ一つの事例がとても興味深かったので
自分のための覚え書き↓
杉を不燃化する技術、その技術者の話
竹という素材を竹を型枠としてコンクリートで強度を持たせた事例
割れない竹の品種を使用し、竹を裂いて編み上げた設計
中国という国ならではの規格の不揃いさ
土壁、日干し煉瓦、左官職人さんの技術と知恵
壁が和紙なのに横殴りの雨にも耐える家
サントリー美術館のアトリウムの和紙は一人の職人さんがすき上げたもの
柿渋とコンニャク、風船爆弾の話

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