夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『メタモルフォーゼの縁側』

2022年06月25日 | 映画(ま行)
『メタモルフォーゼの縁側』
監督:狩山俊輔
出演:芦田愛菜,宮本信子,高橋恭平,古川琴音,汐谷友希,
   伊東妙子,菊池和澄,大岡周太朗,生田智子,光石研他
 
同じく久しぶりのTOHOシネマズ伊丹にて。
 
ウェブコミック配信サイトで連載されていた鶴谷香央理の同名コミックを狩山俊輔が映画化。
原作漫画の連載媒体がだんだんと紙ではなく配信になってきているんですねぇ。
 
17歳の高校生・佐山うらら(芦田愛菜)はボーイズラブ漫画が大好き。
しかし学校ではその嗜好を口にすることすらできず、そのせいで友だちもいない。
 
ある日、うららのバイト先である書店にやってきた老婦人・市野井雪(宮本信子)が、
ボーイズラブがなんたるかも知らずにただ綺麗な表紙に惹かれて1冊買ってゆく。
その面白さにハマった雪は、さっそく書店で続巻の有無をうららに質問。
 
丁寧に答えようとするうららを雪はお茶に誘って意気投合。
以降、ふたりはボーイズラブについて語り合い、60近い年の差を超えて友情を育むのだが……。
 
好みでした。
 
なんといってもやはり芦田愛菜、素晴らしい。
彼女の表情を見れば、台詞になくてもどの感情も伝わってきます。
宮本信子も実に可愛らしいおばあちゃんで、この友人関係を応援したくなります。
 
夫に先立たれた雪と、あまり家にいない母と二人暮らしのうらら。
寂しいなんてどちらも言わないし、ひとりでいることを楽しんではいるけれど、
でもこんなふうに、大好きなことについて話せる相手がいれば。
 
ふたりがファンの漫画家役の古川琴音がまたすごくよかった。
友だちのいないうららと同じ団地に住む幼なじみ・紡役の高橋恭平との関係も好き。
 
優しい話です。心が洗われる。

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『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』

2022年06月24日 | 映画(は行)
『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』
監督:西谷弘
出演:ディーン・フジオカ,岩田剛典,新木優子,広末涼子,村上虹郎,渋川清彦,
   西村まさ彦,山田真歩,佐々木蔵之介,小泉孝太郎,稲森いずみ,椎名桔平他
 
ようやく映画を観に行く気持ちにはなったものの、近場の劇場にしか行く気なし。
箕面、エキスポシティ、茨木をぐるぐる回っていましたが、
上映スケジュールを見たら効率の良いハシゴができそうだったからTOHOシネマズ伊丹へ。
 
原案はもちろんアーサー・コナン・ドイルの“シャーロック・ホームズ”シリーズ。
でもディーン・フジオカ岩田剛典によるコンビでTVドラマ化されていたとはつゆ知らず。
2019年の秋に月9で放映されていたそうですね。その劇場版とのこと。
 
犯罪捜査コンサルタント、すなわち探偵の誉獅子雄(ディーン・フジオカ)と
その助手を務める元精神科医の若宮潤一(岩田剛典)は、
瀬戸内海の離島に暮らす日本有数の資産家・蓮壁千鶴男(西村まさ彦)から捜査依頼を受ける。
 
千鶴男によれば、ある日、娘の紅(新木優子)が誘拐されて身代金を求める連絡があったが、
受け渡し場所に行っても誰も現れなかったばかりか金も奪われなかった。
千鶴男が帰宅してみると紅も犯人から解放されて戻ってきていたというのだ。
 
いったい何が目的だったのか調べてほしいと話している途中、
千鶴男は電話の向こうで急に倒れて苦しみ出し、死亡してしまった。死因はなんと狂犬病。
 
真相を探るべくこの島へとやって来た獅子雄と潤一。
蓮壁家の豪邸には、千鶴男の妻・依羅(稲森いずみ)、息子・千里(村上虹郎)、娘・紅が暮らし、
長年この邸に仕える執事の馬場杜夫(椎名桔平)もいた。
ちょうど千里の元家庭教師で大学で教鞭を執る地震の研究者・捨井遥人(小泉孝太郎)が来訪中で……。
 
登場人物はそれほど多くありません。
上記以外だと、蓮壁家に出入りするリフォーム業者夫妻役の広末涼子渋川清彦
警視庁捜査第一課警部役の佐々木蔵之介とその部下役の山田真歩。そんなもん。
この程度だと誰だか忘れることもなく、こんがらがることもありません。
 
千鶴男が相当変わり者で、彼が金庫を隠している場所がめちゃめちゃ不気味。
ここに伝説の黒い魔犬が潜んでいるのかと思うと怖くて怖くて。
 
登場人物が少ないぶん推理もしやすくて、犯人は想定内。
でも複雑な事情には子どもを失った人の気持ちが映り、とても切ない。
また、小泉孝太郎演じる変人に見える准教授の恋心もよかった。
 
いかにもTVドラマの劇場版という感じはありますが、これはこれで面白い。

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弟亡き後。

2022年06月23日 | まるっきり非映画
が亡くなってから明日で3週間になります。
 
9年前、大学生だったお嬢さんを突然亡くした先輩が、
弟が亡くなった当日の晩に連絡をくれました。
「悲しみは決して消えないけれど、時間と共に小さくはなるよ」。
いつか大丈夫になる。
 
弟が死んじゃってから数日間は、何を見ても何をしても悲しくて、
でもやらなきゃいけないことが多すぎて、
涙と鼻水を垂らしながらあれやこれやと片付けていました。
3週間経とうという今、不思議なもので泣く頻度はどんどん減り、
こんなに早く立ち直っていいのか私、ごめんよ弟と思っています。
 
安心したわけではないのです。
だけど、いつ弟の容態が急変するか気が気でなくて頭がどうにかなりそうだった頃と違い、
今はもう弟はいないのだから、電話が鳴るかもなんて思わずに映画にも行ける。
しかし独り言を言う頻度は実に高くなり、気がつけば弟に話しかけている状態です。
 
弟の部屋と実家にはほぼ毎日寄っています。弟の部屋は実家の3軒隣。
こんなにも頻繁に両親の顔を見に行くことは今までありませんでした。
私の晩ごはんを喜んで用意する母。「飯だぞ」と言って呼びに来てくれる父は、
弟の部屋から出たゴミを私がビニール袋に詰めると、
台車をがらがら引きながら、マンションのゴミ置き場に運ぶのも担当。
 
1週間ほど前、実家の扉を開けたらえらく散らかっていたことがありました。
「どないしたん!? 物盗りにでもあったような乱れ様」と驚いたら、
息子がいなくても自分でなんでもできるところを見せたい父が勢い余って転んだらしい。
その父はどうしているのかいうと、和室で仰向けになってじっとしている。
父は筋力がなさすぎて、転ぶと自分で起き上がれない。母も父を抱き起こせない。
仕方がないから、転んだ後そのままズリズリと背中で張って和室へ行き、
抱き起こしてくれるであろう私が来るのを待っていたそうです。
 
その様子を話す母が涙を流しているので、「お母さん、笑ってるん?泣いてるん?」と尋ねたら、
「笑ってるの。お父さんの姿があまりに可笑しかったから」。笑ってくれてよかった。
 
父は一時「もう何もかもどうでもいい」と投げやりな態度を見せていましたが、今は数独に没頭。
そうそう、弟の葬儀の日、ネクタイを結ぶのに苦労していた父でした。
後日、弟の部屋で見つけたワンタッチ式の弔事用ネクタイを父に渡したら、「こりゃいいな」。
それを見た母がボソッと「いつ使うつもりかいな」。
母と私はこっそり「ほんまやな。自分のお葬式のときしかもう着けるときないがな」と笑いました。
 
そんなこんなで、遺された両親共に今年92歳もなんとか正気、元気です。

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『峠 最後のサムライ』

2022年06月22日 | 映画(さ行)
『峠 最後のサムライ』
監督:小泉堯史
出演:役所広司,松たか子,香川京子,田中泯,永山絢斗,芳根京子,坂東龍汰,榎木孝明,
   渡辺大,AKIRA,東出昌大,佐々木蔵之介,井川比佐志,山本學,吉岡秀隆,仲代達矢他
 
日曜日の朝、イオンシネマ茨木にて2本ハシゴの2本目。
前述の『太陽とボレロ』の次に。
 
原作は司馬遼太郎によるベストセラー小説『峠』。
『蜩ノ記』(2013)の監督であり、『散り椿』(2018)の脚本家でもある小泉堯史の監督作。
時代ものへの苦手意識はずいぶん克服したはずが、寝てしまいそうな予感も。
入場すると小学生ぐらいの女の子が親御さんと着席していて、
えーっ、すでに歴女なのかしらんとビビる。日本史を教えてもらおかな。
 
時は1867(慶応3)年。徳川慶喜(東出昌大)がおこなった大政奉還により、終焉を迎えた江戸幕府。
諸藩は旧幕府軍の東軍と新政府軍の西軍に二分されてゆく。
翌年、戊辰戦争が始まると、越後の小藩・長岡藩の家老・河井継之助(役所広司)は、
どちらの軍にも属さない中立を目指し、戦争を回避しようとするのだが……。
 
案の定、一瞬寝ましたが(寝不足のせいだということで(^^;)、序盤わずかなときのこと。
話がわからなくなるほどは眠るに至らず、もともとわからない日本史が、
少しは理解を深められるぐらいには起きていられたので良しとします。
 
こんな家老がいたことを知りませんでした。
お侍さんは戦ってなんぼという認識なのかと思いきや、河井継之助は徹底して戦いに反対します。
それでも戦わねばならぬときが到来したときのため、
懇意になった商人エドワルド・スネルと話を進め、近代兵器の購入をするのですけれども。
 
戦うことは誰のためにもならないと継之助は嘆願書を携え、
新政府軍監の土佐藩主・岩村精一郎(吉岡秀隆)に面会を申し入れますが、この岩村のムカつくこと(笑)。
吉岡秀隆を嫌いになりそうなほど憎々しい。
 
継之助の妻・おすがに松たか子。ちょいと歳が離れすぎじゃないでしょか。
継之助は41歳で亡くなっていますから、年齢的には舞台版の市原隼人のほうが合っている。
お付きの若者・松蔵には永山絢斗。彼の控えめさがとてもよかった。
継之助の父・河井代右衛門役の田中泯の貫禄ったらありません。ステキです。
 
いつの世も、民のため、戦い争うことをなんとか阻止しようとする人もいる。
なのに戦いは続く。

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『太陽とボレロ』

2022年06月21日 | 映画(た行)
『太陽とボレロ』
監督:水谷豊
出演:檀れい,石丸幹二,森マリア,町田啓太,田口浩正,田中要次,藤吉久美子,小市慢太郎,
   渋谷謙人,松金よね子,六平直政,山中崇史,檀ふみ,河相我聞,原田龍二,水谷豊他
 
毎日実家に寄っていますが、そろそろたまには休んでもいいかなと思い、母に尋ねたら、
「うんうん、用事で出かけることがあればそのついでに寄ってくれる程度でええよ」と言う。
やっぱり寄ったほうがよさそうだから、映画を観る用事を作りました(笑)。
実家に寄る前にイオンシネマ茨木にて映画を2本。本作はその1本目。
日曜日朝イチの回、8:35スタートです。はやっ。でも道もイオンも空いていてスイスイ。
 
水谷豊の初監督作は『TAP THE LAST SHOW』(2017)でした。
2作目は『轢き逃げ 最高の最悪な日』(2019)で、これが3作目ということになります。
正直言って、あまり好きじゃないんですよね、水谷豊。
好きじゃないけど嫌いでもないというのか。わりとどうでもいい感じ。
どれを観ても作り物っぽくて、でもTVドラマも映画も所詮フィクション。
作り物っぽくて当たり前なんでしょうかね。
 
本作では主演に檀れいを起用し、彼女がまたザ・タカラヅカ
思いっきり作り物なところが水谷豊と合っているように思います。
……とすごく上から目線で書いていますが、普通に楽しめました。
最近ずっと寝不足だから積極的に寝ようと思ったのに、睡魔に襲われなかったし。(^^;
 
婦人服店のオーナー・花村理子(檀れい)は、音楽をこよなく愛する。
高校時代の先輩で中古車店のオーナー・鶴間芳文(石丸幹二)に協力を仰ぎ、
地元の弥生交響楽団を主宰している。
 
18年活動を続けるこの楽団の定期演奏会には、
理子の恩師で著名な指揮者・藤堂謙(水谷豊)に東京から足を運んでもらっていたが、
最後の演目を無事終えて、あとはアンコールを残すのみというとき、藤堂が倒れる。
 
藤堂がいなくなったら、どのように楽団を続けて行けばよいのか。
悲しいことに年々客は減っている。理子と鶴間が工面する資金も底を尽きそう。
もう続けるのは無理だと考えた理子は、ついに楽団の解散を決定。
せめて最後にお別れ演奏会を開催したいと思うのだが……。
 
「映画×音楽」は見逃したくないから朝もはよから観に行ったわけですが、
言うほど演奏のシーンは多くないのですよね。
ただ、本物のレディ・マエストロ、西本智実が出演していて、
彼女の指揮による演奏を聴くことができます。
とても重要な役ですが、台詞は無しにして、ミステリアスな感じがとても良い。
 
団員のメインは、理子の店に勤務するヴァイオリニスト・あかり(森マリア)。
あかりと同期で恋仲に発展しそうなトランペッター・圭介(町田啓太)。
そのほか、原田龍二、田中要次六平直政、藤吉久美子、田口浩正など。
久しぶりに見た藤吉久美子が太ってバリバリおばちゃんになっていたから驚いた。
 
副指揮者役の河合我聞がこの上なく鬱陶しい。
この役、本当に必要だったかなと思うほどで、まったく笑えません。
笑わせたいのだろうけど笑えないシーンがたくさんあるのも、水谷豊を苦手な理由。
なんとなく、理子役が天海祐希だったらもう少し笑えたかもしれないなぁ。
結果的には不気味な河合我聞と逆恨みも甚だしい田口浩正が最も印象に残る作品に。
 
オーボエ奏者は前歯が抜け落ちるとか、トランペッターは寿命が短いとか、
知らなかったことを知ることができたのはよかったです。

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