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『レディ・マエストロ』

2019年11月05日 | 映画(ら行)
『レディ・マエストロ』(原題:De Dirigent)
監督:マリア・ペーテルス
出演:クリスタン・デ・ブラーン,ベンジャミン・ウェインライト,スコット・ターナー・スコフィールド,
   アネット・マレァブ,レイモント・ティリ,シェイマス・F・サージェント他
 
新御堂筋ではこのところほぼ毎週末、工事で車線規制をしているのです。
そのせいで恐ろしく渋滞する。
梅田へ向かう朝はまだマシでも、帰りは新御に乗るのさえ困難なほど。
空いていれば梅田から家まで20分で帰れるのに、
新御に乗っても迂回してもどのみち混んでいて1時間以上かかる。
 
だから、北摂あるいは西宮の劇場で手を打とうと思ったけれど、
梅田で観たい作品がいっぱいあるんだよぉ。
ダンナ出張中だから劇場から慌てて帰る必要もないし、梅田まで行くことに。
あ、電車で行けば渋滞は関係ないんですけどね、車が好きなんです(笑)。
 
迷いながらも梅田まで行ってよかったと心の底から思えたオランダ作品。
テアトル梅田にて。
女性指揮者の先駆者アントニア・ブリコの半生を映画化。
 
1926年、ニューヨーク。
両親とともにオランダから移住してきたウィリー・ウォルターズは、音楽が大好き。
楽器を買うことなど到底できない暮らしだから、
粗大ゴミの中から見つけて拾ってきたピアノをこっそりと弾いて練習。
 
コンサートホールで案内係として職を得るが、
従業員はホール内で演奏を聴かせてもらえないことが腹立たしい。
敬愛するオランダ人指揮者ウィレム・メンゲルベルクがやってきたさいに、
折りたたみ椅子を客席の最前列横の通路に広げて自分が座るという暴挙に出る。
当然ながら解雇を言い渡される。

めげないウィリーは、名指揮者で音楽学校の教授マーク・ゴールドスミスを訪ね、
音楽学校に入れるようにピアノを教えてほしいと懇願。
彼女のピアノを聴いたマークはその願いを一笑に付すが、
同席した地元の御曹司フランク・トムセンが彼女に強い魅力を感じる。
 
授業料を払ってゴールドスミスのピアノ指導を受けることになったウィリーは、
求人情報を手にあちこちの扉を叩くが、仕事は見つからない。
その様子を見かけた酒場のオーナー、ロビン・ジョーンズが彼女をピアノ弾きとして雇う。
 
コンサートホールをクビになったことがバレ、母親と口論。
そのさい母親がつい口を滑らせ、ウィリーは養子であることを知らされる。
本当の名前はアントニア・ブリコで、新聞の広告欄を通じて売買された赤ん坊だったことを。
 
あまりのショックに家を飛び出したウィリーは、ロビンの厚意を受けて部屋は確保。
ウィリーを探し続けていたフランクと再会、ふたりは恋に落ちるのだが……。

なんぼ演奏を聴きたいからって、従業員が最前列で椅子を広げるってあかんでしょ(笑)。
最初はあきれてしまって共感しづらかったのですけれど、
これぐらいの心臓がないと先駆者にはなれないのでしょうかね。
また、この暴挙のシーンが最後には非常に効いています。
 
指揮者になるために恋をあきらめると宣言したはずの彼女が、
フランクがほかの女性と結婚すると聞いた瞬間に前言撤回、
「私が間違っていた、考え直して」などと縋る手紙を出すシーンには違和感。
そんな簡単に「縋る女」にならんといてよと思ってしまいました。(^^;
 
どう見ても男装の女性であるロビンの苦悩に気づかないウィリーもどうだか。
気づくのが遅すぎる感が否めません。それにしてもロビン、いい奴。
 
でも、良かった。
女が指揮者なんて無理だと決めつけている人々を彼女が喝破するシーンは
思わず聞き入ってしまいます。
彼女が師事することになったドイツ人指揮者カール・ムックとのやりとりは特にイイ。
そして偏見の塊だったムックも、彼女の言葉を聞く耳をちゃんと持っている。
さぞかし良い師弟関係を築いたことだろうと思われます。
 
クリスタン・デ・ブラーンはとにかく美人で絵になる女優。
彼女が指揮棒を振るシーンに心を打たれ、いくつもの曲で涙がこぼれそうに。
いま話題になっている「音楽×映画」の筆頭は『蜜蜂と遠雷』でしょうが、
私は本作と『パリに見出されたピアニスト』のほうが断然好きです。
 
アントニア・ブリコは女性指揮者のパイオニアとなったけれど、
いまだに名指揮者ランキング50位に女性がひとりもいないというのは寂しいですね。
エンドロールで凹みました。

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