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『護られなかった者たちへ』

2021年10月18日 | 映画(ま行)
『護られなかった者たちへ』
監督:瀬々敬久
出演:佐藤健,阿部寛,清原果耶,林遣都,永山瑛太,緒形直人,吉岡秀隆,倍賞美津子,
   奥貫薫,宇野祥平,黒田大輔,西田尚美,原日出子,鶴見辰吾,三宅裕司他
 
甲子園に行くために午後休を取った日がちょうどファーストデーでした。
 
原作である中山七里の同名小説を読んだときの感想はこちら
監督はなぜか私がいつもイマイチ乗れない瀬々敬久
イマイチ乗れないんだけれども、毎年こうしてコンスタントに撮られるのは凄いこと。
 
先にいちばん納得できなかった台詞に関して文句を言わせてくださいね。
どうでもいいことですが(個人的にはどうでもよくはない(笑))、
序盤に「汚名を挽回」という台詞が出てきたとき、
「汚名は返上だよ、挽回は名誉」とツッコミを入れたくなりました。
「言い切られる」という台詞もありました。
これは敬語の「られ」に取れなくもないのですが、そうではない可能性のほうが高い。
だったらこれは「ら入れ」になっている。「言い切れる」でお願いします。(^^;
 
さて。
 
東日本大震災から10年が経とうとしている宮城県仙台市
無人のアパートの一室で遺体が発見される。
被害者は全身を縛られたうえで放置されて餓死した模様。
宮城県警捜査一課の刑事・笘篠誠一郎(阿部寛)は、
まだ若い刑事・蓮田智彦(林遣都)とコンビを組んで捜査に当たる。
 
やがて被害者が福祉保健事務所職員・三雲忠勝(永山瑛太)だと判明。
誰もが三雲は善人で人に恨まれることなどないと断言するが、
その数日後、また同様の方法で餓死させられる事件が起きる。
今度の被害者は城之内猛(緒形直人)で、かつて三雲と同じ職場にいたとわかる。
 
笘篠と蓮田は、生活保護をめぐって保健事務所で揉めた人物を探す。
すると、出所したばかりの利根泰久(佐藤健)が捜査線上に浮上して……。
 
この作品を観に行くと話すと、複数の人から「あ、震災の話ですね」と言われました。
原作を読んだかぎりでは、震災の話だというイメージはなく、
それよりも生活保護にまつわる話だと思いました。
映画を観て納得、震災がすべての原因だという印象を受けてしまいます。
 
原作では犯人が終盤まで割れませんが、映画版はバレバレ(笑)。
それ――名札なのですけれど――を最初に見せちゃうのと苦笑い。
カンちゃんがいったい誰なのかということがすぐにわかります。
 
とはいうものの、原作未読の人にはわからないのかもしれない。
いえ、わかりますよね!?
 
震災当時、行き場を失った利根がたどり着いた避難所
そこにいたのがやはりひとりぼっちの「カンちゃん」(石井心咲)で、
利根とカンちゃんを実の子どものように可愛がってくれたのが遠島けい(倍賞美津子)でした。
このけいが生活保護を受けられず餓死したという過去があったから、
今回の殺人事件と結びつくわけです。
 
正確には、けいは生活保護を受けられなかったのではありません。
受給できることになっていたのに諸般の事情から辞退した。
他人様の世話になってはいけない、迷惑をかけてはいけないと、真面目な人ほど思う。
一方で、不正受給が横行しているという事実があります。
 
忖度という言葉が適切かどうかはわかりませんが、
原作よりも映画版のほうが福祉保健事務所の職員たちの気持ちに寄せているように思います。
永山瑛太、緒形直人、吉岡秀隆という、ふだんは善人役のほうが多い俳優を悪役に当て、
しかし特に吉岡秀隆に関しては、当時の自分の対応を悔やみ、
なんとか人に優しい社会に変えていこうと政治家になっている。
本当にこんなふうに考える政治家ばかりならいいのですけど、
ちょっと偽善っぽいにおいがするのも、私が瀬々監督に乗り切れない所以。
 
ちなみに清原果耶の役どころは原作では男性です。
女性に変更するにはちょっと無理がありませんか。あんなことでけんと思うねん(笑)。
 
映画版に満足はできなかったけれど、笘篠の台詞どおりになることは切に願う。
明るい未来をつくる優しい子どもが育てられる世の中になりますように。

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