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映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

2022年5月に読んだ本まとめ

2022年06月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2022年5月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2696ページ
ナイス数:810ナイス
 
■十代に共感する奴はみんな嘘つき (文春文庫)
あらら、ならば私も嘘つき。薄さだけに釣られて買い、最初の数頁で、しまった、これは川上未映子の『わたくし率 イン 歯ー、または世界』のように、薄いのにやたら時間がかかるやつかと後悔。でも違った。わかるよその気持ちと言いたくなるシーンがどれだけあったことか。ラップになりそうな文体とか、確かにオバハンにはついて行きづらいけど(笑)、教師の言動を「あなたパンでも作っているんですか」と言ってみたり、一度は告った相手に「それ言われて喜ぶと思ったの?」と毒づいてみたり。わかるよほんとに。傷ついても生きる。今日が好き。
読了日:05月03日 著者:最果 タヒ
 
■ジグソーパズル48 (双葉文庫)
頭を使わずに読めそうな本だと思って手に取ったのに、めちゃめちゃ難しいじゃあないか。そもそもどうして48なのかと思ったら、登場人物の名前がAKB48のメンバーのアナグラムになっているんですと。知らんがな。同じ女子高に通う生徒が登場する短編7つ。日常に起きた事件と言うけれど超非現実的。笑ったのは「サドルは痴漢」。当時「サドルになりたい」とつぶやいていた男子がいたと何十年も経った最近知ったから(笑)。トイレに行って手を洗わずに出てくる女子が多いということもこの本で教えてもらいました。隠された謎、ひとつも解けず。
読了日:05月05日 著者:乾 くるみ
 
■死にゆく者の祈り (新潮文庫)
中山七里初心者だった頃には犯人を推理しつつ読んでいましたが、今は推理なんて全くしません。推理したところでどうせ当てられないから、「無」の気持ちで臨む。教誨師といえども、目の前にいる死刑囚が自分の命の恩人だったら冷静ではいられない。残された時間が一日だけだったとしても、生きていることに価値を見出せない時間を過ごすよりは、経を読むことにはよっぽど価値があるという言葉は突き刺さる。最後にドンヨリした気持ちで終わることにはならないと信じて読めるのも中山作品の魅力。御子柴弁護士登場か!?と思ったけど、来んか(笑)。
読了日:05月08日 著者:中山 七里
 
■流浪の月 (創元文芸文庫 LA な 1-1)
作中の台詞に出てきたように、ストックホルム症候群かと思って読み始めました。しかも『完全なる飼育』を思わせるような。小児性愛者と聞いただけで理解しがたくてゾッとしてしまうものですが、こういうケースもあるのですね。切なくて、苦しくて、堪らない。たった2カ月一緒に暮らした青年と少女。ふたりの間に何があったか、いや、何もなかったのだということはふたりしか知らない。どうして人は「あった」としか考えられないのか。理解されることはなくとも、ふたりが穏やかな時間を過ごしているラストシーンに救われる。こんな愛情の形もある。
読了日:05月11日 著者:凪良 ゆう
 
■死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】原作ではイケメンなんですよね、連続猟奇殺人犯。確かに阿部サダヲは上手いけど、どアップをそんなに見たい顔ではない。やっぱりイケメンのほうがよかったような。白石和彌監督らしく、直視に耐えないえげつないシーン多数。爪剥がす、腱切る、嬰児を焼くシーンまでモロ映しで、下手なホラー映画より怖いから、その手の作品が苦手な人はご注意くださいませ。岡田健史は良かった。岩田剛典にはちょい違和感。ラストシーンに至るまでゾーッとさせられるので、心身ともに元気な人にだけご覧になること推奨。
読了日:05月11日 著者:櫛木理宇
 
■流浪の月 (創元文芸文庫 LA な 1-1)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】公開初日の本日、舞台挨拶付きの回を鑑賞して帰ってきたところです。挨拶込みだと実に200分の長尺。もしも原作を読んで、文って結局どういう状態だったのかとモヤモヤしている方がいらっしゃるなら、あまりにも具体的な映画の描写にスッキリするはずです。松坂桃李がモザイクなしの全裸になってそこを晒す。更紗は原作よりも人づきあいを上手くこなす印象で、建物は原作のほうが瀟洒な印象。亮は「突き落とされた」とまでは言わない、最後はマシな人。原作の切ない感じは映画でも出ていると思います。
読了日:05月13日 著者:凪良 ゆう
 
■父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)
最も読みやすい芥川賞作家だと思っていますが、読み終わるといつも、苦しいような虚しいような、なんとも言いがたい感情に襲われます。どの著作にも出てくる、いわゆるちょっとイタイひと。空気を読めなかったり要領が悪かったりして、もしもそばにいたら苦笑いしてしまうかもしれません。そんなことを思う自分に嫌悪感を抱きます。これらの登場人物に私は優しく接することができるだろうか。そう考えること自体、自分を上に据えているのでしょう。彼女たちを幸せだとは思えない。でも幸せかどうかなんて本人にしかわからない。幸せであってほしい。
読了日:05月15日 著者:今村 夏子
 
■猫なんかよんでもこない。 (コンペイトウ書房)
漫画を登録するのは初めてです。なんとなく、漫画と本は別物で、読書の冊数に入れてもいいものかどうか迷っていたから。でもこれは読んだ本に入れておきたい。この猫の顔は猫なのか、全然好きな絵じゃないよと思うのに、読み終わる頃には可愛くて仕方ないように感じます。猫を飼ったことのある人なら誰でも「あるある」と笑い、「そうそう」と涙に暮れることでしょう。やっぱり、猫がなつかないなんて嘘ですよね。呼んでも来てくれないことは多いけど、呼ばなくても来てくれたりする。旅行帰りにミャーミャー鳴かれたときには悶絶したのを思い出す。
読了日:05月19日 著者:杉作
 
■院内カフェ (朝日文庫)
出版されて即購入し、一旦は読みはじめたものの頭に入って来ずに閉じてしまいました。あれから3年半。弟が癌になり、積読の山の中にあった本作に再び目が留まる。先月までが入院していた病院、そしておそらくもうじきホスピス棟に入ることになる病院のカフェを思い浮かべて読む。患者は、希望がない現実を見るよりもいいと、怪しげな道であってもミラクルを期待する。そんな時期がありました。現実を見るのはとても辛いことだけど、こんなカフェがあればいいなと思う。って、コーヒーはいたって普通のようですけれど(笑)。ここで待っていたい。
読了日:05月24日 著者:中島たい子

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