鋭いだけでは ２

ただ鋭いだけで

攻めていた年月を経て


今は

無駄な動きもいっさい必要なく

落ち着き

読み深く

しかし

悟りの心境さえ忘れて

若い者の仕事ぶりを見て

穏やかに微笑む

・・・　老人に似ています



そんな

先が丸くなった「きり」には

迫力さえあって

尖（とが）っていなくても

目的は

充分に　・・・　果たせそうですね



この歳になっても

・・・　憧れるあり様です


・・・　玩味すべきあり様です

鋭いだけでは １

閑古錐　（かんこすい）



職人さんの道具は

持つ指の形にへこみが出来て

黒光りした

なんとも味のあるものです


これは

世界中共通していることかも知れません



この存在感は

道具といえども

さまざまな素材を相手に

仕事をしてきた長い経験に

裏付けされたものです


説明がなくても

その道具を見ただけで

歴史の重みを感じることができます



さて

「閑古錐」とは

そんな　・・・　道具のことです


使い込んで　使い込んで

先が丸くなった「きり」のことです


昔は　鋭かったであろう

・・・　「きり」（錐）のことです


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2につづく）

鏡 ３

廃屋に残った「鏡」は

無心に

荒れ果てた部屋を映し出します



しかし

「鏡」自身が

荒れた心になるわけではありません


栄枯盛衰する世の中を

共に生きながら

惑うことなく現実を

本質だけを

・・・　静かに映し出すのです



惑わされず　・・・

勘違いせず　・・・


今の私には

・・・　身にしみる言葉です

鏡 ２

人によって対応を変える人は

はたから見ても

・・・　嫌なものです



「鏡」の本分は

ありのまま　・・・　を映し出すことです


どんなに華麗でも

どんなに貧弱でも

「鏡」は

ただ無心で

・・・　態度を変えず

映った相手を

自分と　・・・　見間違えることもありません


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（３につづく）

鏡 １

鏡分金殿燭　（かがみはきんでんのしょくをわかつ）



「鏡」は

自分が映すものに惑わされない　・・・　という意味


どんなに豪華な宮殿の中にいても

絢爛（けんらん）に輝く蝋燭に囲まれていても

「鏡」は

自分を勘違いすることなく

無心で　その蝋燭を

・・・　映し出します



輝いているのは自分ではなく

蝋燭であるということを

・・・　知っているのです


そんな「鏡」のようであれ

・・・　という言葉ですね


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（２につづく）