時事解説「ディストピア」

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雑考4(生活の負担)

2015-02-28 00:00:05 | アベノミクス批判
これまでの雑考で、アベノミクス型量的緩和(※)では、
①有効求人倍率や失業率の上昇・下降傾向に特に影響を与えていない
②正社員が減少し、非正規社員が増えている傾向が止まらない

の2点を確認した。

また雑考3では、私立高校の非正規社員の増加など、
現場の非正規社員の苦境、現場の声について紹介した。


もちろん、それは現場全体の声ではないと喝破することも出来よう。
実際、記事に取り上げられるのはとりわけ厳しい人の姿だと思われる。

だが、少なくとも最もダメージを受けた側に立つと意気揚々と語る人間が、
低賃金労働に苦しむ人間を「それは一部だけだろプゲラ」と笑うことは許されないだろう。

(※量的緩和は絶対の特効薬ではないが、成功した事例も過去に存在する。
 問題は、過去に効いたものが今、効くかどうか確認することだ)


さて、量的緩和は雇用には特に影響を及ぼさなかったが、
その一方で、家庭や中小企業の経済には大きな負担をかけた。




(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-24/2014112403_02_0.html)

2014年11月の時点で、
実質賃金は2013年6月をピークにマイナス値を示している。


注目すべきは、実質賃金の低下が消費税8%実施以前から起きているということだ。

どこぞの学者は何でもかんでも消費税のせいにしたがっているが、
中小企業を含む労働者たちの生活は量的緩和によって確実に負担がかかった。


賃金が下がったのは非正規が増えたせいなんじゃー!という声もあるが、
安倍が説明しているように、名目賃金自体は上がっている。

消費者物価上昇率>名目賃金の上昇率であるゆえに起きている現象であり、
実質賃金の連続低下は物価上昇以外に原因がない。


実は、物価上昇に伴う家計への負担は、リフレ派も認めていることである。
さる学者は、家計への負担を指摘され「食料品だけ消費税を非課税にしては」と
適当なことを言っていたが、これは実のところ、数年前、
菅直人首相(当時)が消費税の増税を提案したときに述べられた言葉だ


菅の場合は、食料品以外も含む生活必需品を非課税対象にしようとしたが、
さる学者の場合、食料品だけの非課税になっており、菅よりも家庭に冷たい。


生活必需品もさることながら、人間には娯楽も必要だし、
自動車を有する家庭は車検やガソリンの費用なども要るし、
子どもがいるなら、塾や家庭教師や参考書の費用がかかるものだろう。


そもそも、問題の学者は消費税が諸悪の根源論を語っているのだから、
5%に引き下げろと本来なら言うべきなのだ。それを言わないあたり、
菅と同じ物価を上げるのが前提の付け焼刃的救済案だと思われても仕方がない。



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雇用はどうか。


「雇用は100万人以上増え、高校生の就職内定率は13%アップ」(首相、21日)
「有効求人倍率は1・09とこの20年間でもっとも高い数字」(茂木氏、22日)

などとばら色であるかのように描いています。



しかし、増えたのはすべて非正規労働者です。
総務省の労働力調査(7~9月期平均)によると、
2012年と比べて非正規雇用で123万人増加。正規雇用は22万人減っています。


有効求人倍率が1・09倍(9月)と“22年ぶりの高水準”といいますが、
正社員は0・67倍。正規雇用の求人は1倍を切る厳しい状況が続いています。

高校生の就職内定率が54・4%(9月)で2012年比13%改善としていますが、
内定が決まったのは半分程度しかなく依然、厳しいままです。



中小企業は、「増税不況」と、円安による資材高騰で苦しんでいます。


ところが、「中小企業の景況感も22年ぶりにプラス」(茂木氏)
「倒産件数は24年ぶりの低水準」(自民党ビラ)などと自慢しています。


実態は、「アベノミクス」が中小企業の経営を直撃。
帝国データバンクによると、円安の影響を受けて倒産した企業は
前年に比べ2・8倍に増加。

輸入原材料や燃料費の高騰が経営を圧迫し、
さらに、多くの倒産を生むとの観測も示されています。

(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-24/2014112403_02_0.html)
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リフレ派の卑怯なところは、正規と非正規が交代している現実を指摘すると
「失業よりはマシ」と語る一方で、非正規職の苦境、特に派遣の規制緩和を
問題視されると「オレも反対じゃあああ!!!」と語る点につきる。


一体、どちらなのだろうか?雑考2で指摘したが、今起きているのは
壮年期を主として、正規雇用から非正規雇用へのキャリアダウン現象であり

これは歴史的に見ても雇用量の増加に連動して起きているものだ

実のところ、「正規と非正規の交代」と派遣の規制緩和は
同じことを言っているのだが、前者は「雇用が増えたからいいだろ!」で
後者は「規制緩和は絶対反対です!」というわけで、何がなにやらだ。




中小企業の負担は大企業に課税することで緩和できると語る人間もいる。


ここで『2012年国民春闘白書』を見てみると、1989年度から2011年度において、
法人税は累計221兆円減収している一方で、消費税は累計238兆円増大している。


つまり、消費税の増税は法人税の減税と一対になっている。
もちろん、消費税が8%に増加された時にも法人税は引き下げられた。


法人税を下げるための増税になっている以上、
これでは、大企業への課税など実現できるはずが無い。



よく、共産党を「反対のための反対」と揶揄する人間を見るが、
私に言わせれば、彼らこそ「賛成のための反対」をしているのであって、
根本的な部分、この件に関すれば物価上昇のために申し訳程度の反対をしている。


彼らは真実の弱者のために戦っているのだと言うが、
どう見たって安倍晋三の太鼓をドンドコ鳴らしている。

○hihan


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