時事解説「ディストピア」

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創られる「米朝危機」

2017-04-25 23:34:20 | 北朝鮮

ここ数日、西側メディアは「近いうちに北朝鮮が核実験をするに違いない」と喧伝している。
根拠は核実験施設で職員がバレーボールをして遊んでいたからというもの。


仮に米軍基地で米兵がボール遊びをしていたとして、
それを根拠に核実験が行われるはずだと断言する専門家が存在するだろうか?




冷静に考えれば、大変ナンセンスな話なのだが、
殊、北朝鮮に限れば、この手の馬鹿馬鹿しい話がまかり通ってしまう。

(ただし、核開発は続けると明言している以上、核実験はいずれ行われる)



もう一つ、「北朝鮮は過去、4回、この4月末の記念日に核実験を行った」という見解がされていたが、
実際には、ただの一度も4月に核実験が行われたことはない。


恐らく、人工衛星の発射と混同しているのだと思う。

結局、宇宙ロケットの発射を「事実上の核ミサイル実験」と表現するから、
「北朝鮮は祝日に花火の代わりに核を爆発させる国なのだ」という妄想が信じられるのだろう。

(祝日に花火のような感覚で核実験を行う国がどこにある?)




さて、メディアが米朝対決を煽る一方で、北朝鮮は平和そのものだ。


・・・というのがここ最近の私の雑感である。


試しに次の記事を読んでみると良い。


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黎明通り竣工式/金正恩委員長が参席

【平壌発=文・金淑美、写真・盧琴順】


民族最大の名節である太陽節を控え、平壌の錦繍山太陽宮殿地区に黎明通りが建設された。



錦繍山太陽宮殿と龍興交差点の間に新しい通りを建設するという
金正恩委員長の発起で昨年4月に着工した黎明通りの建設は、
洪水により甚大な被害を受けた咸鏡北道の被災地復旧のために建設部隊を現地に派遣したことで
計画は遅れたが、わずか1年の間に驚くべき建設速度を発揮し、完工した。



朝鮮は米国とその追随勢力による制裁と圧力の中でも、
過去に建設された通りの規模をゆうに超える巨大な黎明通りを、自らの力と技術、資材で建設した。
黎明通りはどんな制裁と圧力の中でも力強く前進する朝鮮の姿を明白に示している。



13日、金正恩委員長参席の下、黎明通り竣工式が永生塔前で盛大に行われた。



朴奉珠内閣総理は竣工辞で、金正恩委員長が黎明通り建設を宣布し、
建設の全過程を精力的にけん引したことについて言及し、
金正恩時代の象徴である黎明通りは朝鮮の軍隊と人民の不屈の精神力と
自力自強の限りない力に支えられ建てられた万里馬時代の創造物であると強調した。





ライトアップされた黎明通り

金正恩委員長が黎明通りのテープカットを行った。

竣工式では総聯中央の権淳徽顧問を団長とする
太陽節慶祝在日本朝鮮人祝賀団をはじめとする総聯活動家と朝大生、
祖国に滞在している在日同胞らが参加した。


~中略~



金正恩委員長が参席する行事に初めて参加したという総聯生野南支部の池昇哲委員長は
「今回8年ぶりに祖国を訪問した。日本のメディアでは朝鮮の核、ミサイル開発に言いがかりをつけ、
 連日、朝鮮バッシングを行っているが、今日祖国では金委員長の下、
 一心団結した人々の力でこのような素晴らしい建設物が
 数多く建設されていることを目の当たりにし、感無量だ」と話した。

竣工式終了後、参加者は黎明通りを参観した。

http://chosonsinbo.com/jp/2017/04/yr0421-6/
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軍事パレードしか映さない日本のテレビ局の映像とは裏腹に、
対立が煽られていた13日の時点で、何とも呑気なセレモニーが開かれていたわけである。



4月9日には、こういうイベントもあった。



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沿道にあふれる笑顔、第28回万景台賞国際マラソン


【平壌発=文・金淑美、写真・盧琴順】

太陽節に際して平壌で9日、第28回万景台賞国際マラソン競技大会が盛大に開催された。
回を重ねるごとに参加者が増え、盛り上がりを見せる同大会。



今年は、昨年を上回る1100人以上の外国人ランナーが参加し、
市内を周回する新たなコースで、初春の平壌の街並みを存分に謳歌した。


春の陽気のなか


この日の平壌の最高気温は、例年よりも高めの20度。
大会開幕前から温かな日差しが降り注ぎ、絶好のマラソン日和となった。



約180人の国内選手と外国人選手、約1100人の外国人市民ランナーが快走した。



今年は、各地での予選を勝ち抜いた国内の選手らと、
エチオピア、ケニア、モロッコ、ルワンダ、ウクライナの選手ら、
オランダ、米国、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、スウェーデン、
オーストラリア、コスタリカ、カナダ、台湾、日本など、50カ国を超える国と
地域の1100余人の市民ランナーがレースに参加。




スタート地点である金日成競技場に外国人ランナーらが続々と入場すると、
客席を埋め尽くした平壌市民らが拍手と歓声、手を振って歓迎し、ランナーらは大声援の中、スタートした。


~中略~


市民ランナーらは
スマートフォンやカメラを片手に市内の風景を撮影したり、
音楽を聴いたりしながら思い思いに楽しんでいた。



子どもからお年寄りまで年齢層も幅広く、なかには赤ちゃんをおぶりながら
走るパワフルなママさんランナーもいて、周囲を沸かせていた。



平壌市民たちとハイタッチを交わすランナー

ハーフマラソンに出場したエドワードさん(27、ドイツ)は、
平壌でマラソン大会が開かれると聞いて、朝鮮観光を専門的に扱う
「コリョ(高麗)旅行社」を利用して訪れたという。


初めて見る朝鮮について「街並みも、人々の歓迎も期待以上」と満足感を示していた。
観光日程には妙香山や板門店も含まれており、これから始まるツアーを楽しみたいと話した。




一方、訪朝は4度目だというマルクスさん(33、オーストラリア)は、
開発が盛んな平壌の変化を感じ取っていた。



「初めて訪れた2年前と比べて、新しい建物がたくさんでき、平壌は大きく様変わりした。
マラソンに参加したのはこれが初めてだったが、市民の声援のなか春の景色を眺めながら走り、
とても良い時間を過ごした」。


外国人ランナーが一様に感動と喜びを示していたのは、平壌市民の温かい歓待だった。

コース沿道にはたくさんの平壌市民が列をなし、
手を振ったりランナーとハイタッチしながら激励する心温まる光景が随所に広がっていた。



市民ランナー部門女子10km種目で1位に輝いたコスタリカのマリアさん



市民ランナー部門女子10km種目で1位に輝いたマリアさん(31、コスタリカ)は、
旅行が大好きでこれまでたくさんの国々を訪れたが、
「街並みも美しく朝鮮料理も美味しいけど、何より、フレンドリーな人々の姿に感動した」。


平壌市民の温かい声援も手伝って、いい結果を出せたと話す。
閉会式では表彰台に上がり、大歓声に両手をあげ満面の笑みで応えていた。



太陽節に際して毎年開催されている万景台賞国際マラソンは、
国際陸上連盟(IAAF)の認証を受けた正式な国際大会で、
以前はプロ選手のみ参加できる大会だったが、
2014年からは国内外の市民ランナーも参加できるようになった。


同大会は、マラソン競技の発展とともに各国との友好親善を促すうえで、
近年、その意義がいっそう高まっている。


http://chosonsinbo.com/jp/2017/04/yr0413-2/
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悪の帝国北朝鮮の実像は以上のようなものである。


全方位に向けて挑発行為を繰り返す鎖国国家というイメージが
如何に歪められたものであるかが、お分かり頂けるのではないだろうか?



もちろん、上のニュースをもって、
党内の熾烈な抗争や、国内のポピュリズム的政治まで正当化することは出来ない。
しかし、我々の持つ北朝鮮像が現実とはかなりかけ離れたものであることは確かだ。

(金正恩の統治スタイルより、橋下徹の大阪府政のほうが
 より弾圧的で独裁的だったと思うのだが、この点はあまり知識人も触れようとはしない)


そもそも、メディアが伝えるように、
米朝の危機は本当に高まっているのだろうか?



アメリカ空母、日本ではなくインド洋に移動
(http://parstoday.com/ja/news/world-i29156)

アメリカの主張に反し、空母が北朝鮮に向かっていない可能性
(http://parstoday.com/ja/news/world-i29348)



移民政策しかり、シリアへの空爆しかり、
ここ数か月のトランプ政権の内政・外交は、まず初めに何か派手なパフォーマンスを行い、
その後、相手国や自国の国民の反応を見ながら軟着陸させる手法が取られていることを忘れてはならない。



先月の金正男暗殺事件の時でさえ、格好の材料であったにも関わらず、
トランプ政権は何かしら強硬な手段に訴えなかった。



恐らく、今回もいつも通りの経済制裁の強化に訴えるべく奔走するのではないだろうか?



私が気になるのは、むしろ日韓政府のほうだ。


金正男殺害事件しかり、今回の米朝危機しかり、
客観的に見れば、アメリカ以上に日韓政府のほうが積極的に危機を煽っている。


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日本の朝鮮人避難民保護の用意




日本の安倍総理大臣が、
「日本政府は、朝鮮半島で危機が発生し、
 避難民が日本に流入した場合に備えて対応を検討している」と語りました。


安倍首相は、衆院決算行政監視委員会で、
「日本政府は、朝鮮半島の有事の際、日本への難民流入を想定した対応を検討している」
と強調しました。



また同時に、中国の協力により、朝鮮半島が戦争に向かわないよう望んでいるとしました。



こうした中、日本政府は、
在韓の邦人6万人の自衛隊航空機や艦船による避難を検討しているとしています。




アメリカが、原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島周辺に派遣することで、
朝鮮半島の危機を煽っている中で、日本と韓国は、異なる対応を示しています。



中国は、危機を管理することで、
朝鮮半島の危機の拡大と戦争の勃発を避けようとしていますが、
日本と韓国は、アメリカの同盟国として、この国に同調し、緊張を高めると共に、
地域の人々に懸念を抱かせようとしています。



言い換えれば、日本と韓国は、北朝鮮に対する心理戦を煽り、
この国の人々の間に恐怖を生み出そうとしています。


この2カ国は、アメリカの艦船の地域への派遣を、
中国や北朝鮮に圧力をかけるための機会と見なしています。





アメリカの目的のひとつは、中国恐怖症、北朝鮮恐怖症を広めることです。



それにより、中国や北朝鮮の周辺海域への自国の艦船の派遣や
地域での軍事駐留の強化を正当化しようとしています。


日本と韓国は、このようなアメリカの目的を実現するための政策を取っていますが、
何らかの理由でアメリカと中国が危機をコントロールできなくなり、
地域で戦争が起こった場合、最大の損害を蒙るのは第一に韓国、そして日本です。



そのため、安倍首相は、朝鮮避難民の受け入れの用意を強調し、
地域の緊張拡大を支持することをアメリカに確信させようとしました。



これに対し、アメリカ政府も、地域に艦船を派遣し、同盟国を支援する決意を示しました。


しかし、安倍首相は、何を根拠に、
北朝鮮とアメリカの間で戦争が起こった場合の日本の人々の安全を保障し、
朝鮮人の避難民への支援を約束しているのでしょうか? 



多くの人は、アメリカが北朝鮮を攻撃した場合、
北朝鮮は日本と韓国の特定の場所を攻撃するだろうと考えています。


そしてそれは、これらの国に償いきれない結果をもたらし、
その状況を、第二次世界大戦の時代に引き戻す可能性があります。



こうしたことから、安倍首相は、
中国が協力によって、地域の戦争の勃発を防ぐことを期待しているのです。



http://parstoday.com/ja/news/japan-i29092


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安倍首相の支持率燃料としての戦争の期待
(https://jp.sputniknews.com/opinion/201704253570765/)



北朝鮮がミサイル発射しても安倍首相はフィットネスに絵画鑑賞
…危機を煽りまくった張本人が豹変
(http://lite-ra.com/2017/04/post-3085.html)



北朝鮮の危機を煽ることで自国の軍備拡張を正当化する。

もっと、ざっくばらんに話せば、
日韓政府は与党の支持率を上げるために米朝衝突の危機を煽っている。


実際には、米朝との軍事的対立において、重要なプレイヤーであるはずの韓国が現在、
前大統領が服役し、大統領の椅子が空白になっている状況でアメリカが戦いを仕掛けるだろうか?


・・・ということを扇動家は理解している上で、
さして危険でない状況を大変な危機だと騒ぎ立てていることを見逃してはならないだろう。


・追記

朝鮮戦争、湾岸戦争、アフガン・イラク戦争、リビア空爆、シリア空爆。
いずれにおいても、アメリカは実は他国と共同で戦いを仕掛けている。

(IS掃討の名の下に、アメリカ主導の有志国連合軍が
 アサド政権の了解を得ずに、国内の重要なインフラ施設や軍事施設を「誤爆」していたことを
 忘れてはならない。先日のシリア軍空爆は、この延長線上にある)


つまり、アメリカが戦争を挑む際には、
フランス軍やイギリス軍、韓国軍等の同盟国軍も出動するわけで、
そこまで準備が整ってはいない以上、真の緊張はこの後、到来すると思われる。