2020年12月10日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
2021年夏に延期された東京オリンピック。
11月にIOCのバッハ会長が来日し
大会の実現に向け
どのような感染対策が必要なのかを日本側の関係者と話し合った。
そうしたなか徹底した感染対策を取り感染者をゼロに抑えた日米のスポーツ大会が注目されている。
大規模な感染対策の成功例としてあげられるNBAアメリカプロバスケットボール。
フロリダ州のディズニーワールドに選手344人を集め
1か所で集中的に開催することで
3か月間1人の感染者も出さずにシーズンを乗り切った。
期間中 選手や関係者は施設内にとどまり
外部との接触を遮断。
観客は入れず
取材メディアの数も制限。
選手たちには連日PCR検査を実施。
腕には特殊な端末をつけ
どの場所に出入りしたのか
行動を細かく管理された。
NBAはこうした感染対策に約200億円
6,500人ものスタッフをかけ
ウィルスを抑え込んだのである。
長年NBAを取材し
今回日本人でただ1人内部の取材を許された杉浦大介さん。
関係者は資格に応じて黄色や緑といった色で区別され
互いに交わることが無いよう動線が細かく決められていたという。
さらに手渡された機械で他の人と近づきすぎるとランプの色や音で警告され
人が密集することはほとんどなかったという。
ただ唯一人が集まってしまったのが
(杉浦大介さん)
「トイレはスポーツ取材だと
バスケの場合ハーフタイムやクオーターの合間に駆け込む。
みんな慌てているので
用を足している間にブザーが鳴ってしまい笑い合ったりしていた。
ほぼ唯一トイレがソーシャル・ディスタンスが難しかった場所だった。」
日本でも2021年のオリンピックに向けた感染対策のモデルケースとして実施された大会があった。
11月に東京で開催された体操の国際大会である。
日本をはじめアメリカ・中国・ロシアの4か国の選手30人が参加。
大会の出場はほぼ1年ぶりという選手もいた。
アメリカ代表のユル・モルダウアー選手。
堂々とした演技で会場を沸かせた。
(アメリカ代表 ユル・モルダウアー選手)
「他国の選手と特別な時間を過ごせました。
東京五輪に向けたすばらしい大会でした。」
大会前
モルダウアー選手は自宅のガレージを改装して練習を積んできた。
選手たちは日本へ出発する週間前から隔離が求められたためである。
(YouTube)
「僕のトレーニング場へようこそ。
ここではあん馬やつり輪ができます。」
庭には特注のエアマットを敷き
すべての種目をカバーした。
韓国出身で幼い頃に養子として引き取られ
アメリカで育ったモルダウアー選手。
オリンピック出場は育ててくれた両親のためにも叶えたい夢だった。
夢の舞台を実現させるためならばと
モルダウアー選手は今回の国際大会への出場を自ら志願。
安全にスポーツが行えることを世界にアピールしたいと考えたのである。
(アメリカ代表 ユル・モルダウアー選手)
「私たちが安全に競技ができることを見せたいと思います。
懸念を払しょくする良い機会になります。」
日本に到着してからはホテルと試合会場以外は外出は一切禁止。
PCR検査は毎日義務付けられた。
さらにチーム以外の人とは接触を禁じられ
ホテルでの食事も国ごとに仕切られている。
ホテルから一切出られず調整に苦しんだ選手もいたが
モルダウアー選手は苦にはならなかったという。
(アメリカ代表 ユル・モルダウアー選手)
「ホテルでは国ごとに部屋のフロアも別で
他国の選手とは一切会いませんでした。
さまざまなルールがありましたが私は負担とは思いませんでした。
日本は安全コリンピックを開催できると
この大会で示してくれました。」
こうした対策を取ったことで大会は1人の感染者も出さずに終了。
実施されたノウハウは今後さまざまな場面で生かされることになる。
多くの制約を受けながらも少しずつ動き出しているスポーツの現場。
オリンピックという巨大イベントの開催に向けて
限られた時間の中で
クリアすべきハードルをひとつずつ乗り越えようとしている。