12月3日 NHKBS1「国際報道2020」
新型コロナワクチンの接種が間もなく始まろうとしている。
パンデミックの終息に向けて期待が高まるが
ワクチンを途上国も含めてどのように世界にいきわたらせることができるかが今後の焦点となってくる。
そのカギを握っているのが
COVAXファシリティである。
WHO(世界保健機関)などが起ち上げた協力体制のことで
現在日本を含む世界189の国と地域が参加している。
この枠組みの中でまず
“CEPI”と呼ばれる国際的な団体はワクチンの開発の支援を担っている。
“Gaviワクチンアライアンス”が各国と交渉して資金調達などの調整を担う。
“unisef国連児童基金”がWHOが承認したワクチンを途上国へと配布する。
世界が注目するワクチン供給の見通しは今どうなっているのか
最前線に立つキーマンたち。
(8月24日 スイス ジュネーブ WHO テドロス事務局長)
「COVAXはコロナワクチンの開発から配布までのすべてを担います。」
世界各地で急ピッチで進むワクチン開発。
COVAXの中で世界中の製薬会社・研究所と連携し開発の支援などを担う国際的な団体 CEPI。
CEOのリチャード・ハチェット氏。
これまで9つのワクチン開発などに11億ドルを投資。
モデルナやアストラゼネカなど
安全性・有効性が確認された後ただちに大量配布できる体制を整えている。
しかしハチェット氏が懸念しているのは
先進国によるワクチンの独占である。
(CEPI ハチェットCEO)
「もし各国の指導者たちが自国民のことだけを考えればパンデミックは長期化します。
死者も増え
経済的打撃も大きくなるでしょう。」
ハチェット氏が教訓としてあげたのが
2009年に流行した新型インフルエンザのケース。
この時アメリカなどの先進国がワクチンを買い占めたため
途上国などの患者に行き届かなかった。
ハチェット氏は
グローバル化した社会でパンデミックを終息させるには
ワクチンを世界規模で公平に供給し
優先順位が高い人々に接種するべきだという。
(CEPI ハチェットCEO)
「自国民のワクチンを確保しても
パンデミックに苦しむ世界の一部であり続けることには変わりありません。
限りあるワクチンを管理して
医療従事者や症状が悪化する可能性の高い地域の人々へ割り当てる。
これがパンデミックを早く脱する方法です。」
世界が自国優先に陥らないために課題となるのが
十分な量のワクチンの確保である。
各国と交渉し
資金の調達など全体調整にあたっている Gavi(ワクチンアライアンス)。
Gaviによると
現段階で確保できるめどは7億回分で
来年末までに目標としている20億回分の半分に満たないという。
そこで期待を寄せているのがアメリカと中国の資金力とリーダーシップである。
すでに中国はCOVAXへの参加を表明。
(北京 10月9日 華春瑩報道官)
「中国はGaviと協定を結び
正式にCOVAXに参加しました。」
残るアメリカも
バイデン氏がCOVAXに積極的に関わり資金面などで大きな役割を担ってほしいと
バークレー氏は期待している。
(Gavi バークレー事務局長)
「我々はアメリカの現在の政権とも連絡を取っているし
次期政権の専門家とも連絡を取り合っています。
来年に向けてさらに50億ドルを調達し
途上国向けに10億回分のワクチンを購入したい。
この目標に向けアメリカが資金提供してくれることを期待しています。」
ワクチンがWHOに承認されれば
ユニセフが途上国へ配布し接種を支援する。
年内に5億2,000万個分の注射器を確保し
途上国へ向けて配布の準備を進めるユニセフ。
ベンジャミン・シュライバー博士は
南半球が秋を迎える来年3月までに大量のワクチン配布を始められるよう準備を急いでいる。
(unisef シュライバー博士)
「私たちはフルスピードで通常18か月かかることを半年でやっています。」
最大の課題がワクチンを冷蔵したままどう運び届けるかである。
COVAXが支援するアストラゼネカのワクチンは2~8℃で少なくとも6か月間
モデルナのワクチンも30日間保存ができるとされている。
そこで活用が期待されているのが
ユニセフが途上国で整備してきた太陽光などで動く冷蔵庫。
肺炎などのワクチンを配布するため
この5年で4万台が設置されてきた。
ユニセフがいま各国で
ワクチンを大量輸送できる拠点と
冷蔵庫を設置した集落までをバイクや徒歩などで結ぶ低温輸送体制の整備を急いでいる。
(unisef シュライバー博士)
「設置した冷蔵庫はCOVAXのワクチンも受け入れることができます。
本当に重要なことです。
しかし課題もあります。
冷蔵庫は低温輸送体制の外
遠隔地域や村落地域に置かれているからです。
各国がワクチンを受け取り
輸送できる適切な方法を確実に持てるようにしなければなりません。」