2020年12月24日 読売新聞「編集手帳」
先端技術で知られるフィンランドはかつて貧しい農業の国であった。
冷戦時代、
隣接するソ連の脅威にさらされ続け、
当時のケッコネン大統領が繰り広げたのは「サウナ外交」である。
ソ連の指導者らを招き、
裸になって語り合う。
蒸気に包まれて友好関係を深めつつ、
内政干渉をしたたかにかわしたという。
クリスマスには身を清める神聖な場所であり、
国民の9割が週1回は入る。
「フィンランド式サウナの伝統」が先週、
ユネスコの無形文化遺産に登録されることになった。
空前のサウナブームに沸く日本の若者らも喜んだようだ。
サンタクロースの故郷はフィンランド北部とされる。
その国の外務省の発表に、
頬が緩んだ。
サンタが外交ルートを通じて各国に確認したところ、
オーロラ近くの空を飛ぶトナカイは、
新型コロナウイルスによる旅行制限が適用されない、
と判明したという。
世界保健機関(WHO)も負けていない。
感染症の専門家は「サンタは免疫を持っているからプレゼントを無事に届けられます」とほがらかな笑顔を見せた。
世界中のたくさんの子どもたちはどれほどほっとしただろうか。