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胃に優しくて家計にも優しい野菜

2021-01-22 07:00:16 | 編集手帳

2020年12月23日 読売新聞「編集手帳」


作家の井上ひさしさんは貧しい学生時代を過ごした。
毎日キャベツばかり食べていたと、
随筆に書き留めている。

<わたしは醤油をかけたでキャベツを主食にしていた。
 安く、
 しかも大好きだったのでそういうことになったのだろう。
 大量に食べると、
 胃の調子もよかった。
 なぜ胃にいいかについては「キャベジン」という胃腸薬が出来るまではらなかったけれど>

おいしいうえに胃に優しい野菜は最近、
家計にまで優しくなっている。
近所のスーパーで、
ひと玉100円で売られているのを見た。
宴会自粛などの影響らしい。

だが優しすぎるのも考えものだろう。
群馬県版の10大ニュースの3位、
猛暑を振り返る記事中にこうある。
<少雨により野菜の生育に影響が出た。
 嬬恋村の特産キャベツは例年より小ぶりになり、
 生産量も減った>。
夏の不作に冬の値崩れ。
群馬に限るまい。
もう一つ足せば、
春にも昨季の暖冬の影響で葉物野菜の値崩れが起こっている。
生産者にとっては苦しい1年が暮れようとしている。

この稿の中ほどあたりに、
<優>しいとあえて漢字で書いてみた。
人の横に、
憂いが立っている。

 

 

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