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生真面目で不器用で、誠実で・・横綱の姿は忘れない

2019-02-02 07:00:00 | 編集手帳

1月17日 編集手帳

 

 期日や期限とかいう場合の【期】は、
「とき」を意味する。
以前、
漢和辞典で引いたとき、
それ以外の字義があることを知った。
「ちぎる」「約束する」。
これらは期待の期である。

つまり期待とは、
約束が果たされるのを待つ心持ちといえる。
横綱へのファンの心理に似ていよう。
強い相撲を見せてくれるはずだ――
それに応えようとして、
けがや不調を押し無理に土俵に上がったことは確かだろう。

横綱・稀勢の里が引退した。
生真面目で不器用な人だという。
綱取り後、
千秋楽まで取り切ったのは2場所のみ。
胸中の無念は察して余りある。

国技館に連日ため息が漏れたが、
同時に見せたものは約束を誠実に果たそうとする横綱の姿にほかならない。
在位2年とはいえ、
体が思うように動かず、
ひとり悩み苦しむ時間だったろう。
寺山修司の詩を思い出す。
<いろんなとりがいます
 あおいとり
 あかいとり
 わたりどり
 こまどり 
 むくどり…
 でも
 ぼくがいつまでも
 わすれられないのは
 ひとり
 という名のとりです>
 (「ひとり」)

最後まで、
つらい孤独には負けなかった土俵人生だろう。
忘れまい。

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