植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

あの日あの場所で君に言えたら

2020年07月05日 | 時事
ワタシが18歳、横浜の大学に入りたての頃です。46年も前の夏です。

 その頃の学生は合ハイというものが流行っておりました。合同ハイキング、つまり他行(女子大学)の女子を誘って、鎌倉や江の島、城ケ島箱根などに行ってハイキングするという健全この上ない恋人探しのシステムであります。その後に繰り出すのが合コンですが、合ハイはほとんど死語ではないでしょうか。

 神奈川県では、なんといってもF女学院という名門お嬢さん学校がありました。他にも相模女子大、関東学院大学、外語短大などともコンパはいたしましたが、F女は高根の花でしたね。

 そこで知り合った方で「外山」さんというお嬢さんがいました。色白で女優さんのような美形、スラッとしたスタイルの女性でした。この方は、同じ九州出身というので興味があったようです。お誘いして数回外で会いました。鎌倉に絵を描きに行ったり、生まれて初めて日生劇場で「ロミオとジュリエット」の観劇わ楽しんだりしましたな。
 
 九州、大分から出てきた晩生の田舎者であったワタシは、女性との付き合い方などわかるはずもなく、恋愛に発展することもありませんでした。ほどなくして生まれてはじめて芽生えた恋心はあっという間に霧散いたしました。人生最初の失恋というところです。

 不思議なもので、社会人になって間もなく新幹線の中でばったり再会したのです。その時広島の医師と結婚したのだと聞きました。彼女は熊本県人吉市の代々造り酒屋の資産家に生まれ、お父さんは医者、どのみちワタシら一般人には縁のない女性でしたから、なんの悔しさも無念さもありませんでした。その時どういう訳か、自宅の電話番号を渡されたのですが、すぐに捨ててしまいました。電話することは無かろう、するべきでもなかろう、と思ったんですね。

 球磨川は急峻な山間を激しく流れ下る、名高い急流の一つです。清流が泡立ち、その流れに竿さして船で観光する「球磨川下り」は有名です。その中心にある人吉は、緑の深い里でありました。生まれて初めて人吉に行ったのは大学1年生の夏、件の女性とお付き合いがあったからでした。
 高台の公園の木陰に佇み、眼下を流れる球磨川に目をやっていたあの時の彼女の楚々とした姿はそれは美しいものでありました。歌の文句ではないですが、あの日あの時あの場所で、娘さんをこの手に抱き寄せることが出来ていたら、お互いの人生は違ったものになっていたかもしれません。

 昨日、熊本から鹿児島にかけて観測以来最大の雨量を記録するような豪雨が発生しました。球磨川が氾濫、人吉盆地にも越水した濁流が流れ込み、市中を覆っていました。人吉市の被災現場のニュースを目にして、何十年かぶりにそんなことを思い出したのです。

 あの山に囲まれ自然豊かな町に濁流が押し寄せ、孤立し救助を待っている多くの方がいるのです。すでに熊本だけでも数十人の行方不明・死者が出ています。せめて一刻も早く救助され人的被害が少ないことを祈るばかりであります。

 毎年鹿児島から熊本にかけて、自然災害が目立つように思います。熊本は、大きな地震に見舞われ、毎年のように集中豪雨で大災害が起きていて、お気の毒としか言いようがありません。人間はこうした自然の猛威の前には無力であります。
 地球温暖化は、異常気象を常態化させ、永久凍土のシベリアが30℃以上の高温になりました。氷河は溶け、北極の氷は年々面積が狭まっています。日本では亜熱帯化が進んでいるのです。
 長年にわたる森林破壊・山の開発などで災害の危険を増幅させております。治水目的と言われるダムですら実は大洪水の元凶となりかねないのです。今、中国では未曽有の豪雨に襲われ、手抜き工事と言われる中国最大規模の三峡ダムは決壊の危険にさらされているようであります。すでに危険水位は超えているという情報もあるのです。
 このダムは、昔から漢詩にも取り上げられる、風光明媚で知られる「長江」の上流に作られました。あの武漢を通り河口の上海まで流れる大河で、ざっと中国の経済圏の4割がその流域にあるそうです。もし、決壊したら、農作物、インフラ、家屋、都市機能などの一切が壊滅し、停止、損壊、伝染病、食糧不足などの二次災害まで考えると想像もできないほどの激甚な大惨事・巨大災害が生じることになります。球磨川の比ではありません。

 中国も、世界の覇権争いに血道をあげ、領土的野心や国益追及、共産党政権維持などを考える前に、国土と自然を守り国民の生活や環境優先の政策に転換すべき時期なのではないでしょうか。

 豊かさはもう十分手にしたのですから。習さん、それと引き換えに失った物を取り戻してこそ3千年の知恵というものでしょう。

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