1週間ほど前から、果樹コーナーの整理に掛かっております。
ワタシの園芸の中心にあるコンセプトは、①きれいな花を育てる ②珍しい植物を栽培する そして最大のテーマが③美味しく食えるものを作る、であります。
果樹コーナーは、ワタシら夫婦が10年ちょっと前、向後の半生の浮沈をかけて貸店舗を建築した際に、取り残された十数坪の雑種地にあります。それまでは、駐車場の一角でしたが、固くなった地面に背丈の低い雑草がびっしりと生えていたのです。建物を作った時には訳あって、この部分だけは開発の対象外になっていて、開業後は人も立ち入らない薮と化していたのです。
8年前これを見て思い立ったのが、畑や果樹園として活用しようというアイデアでありました。先代の存命のころまでここはいくつかの工場や病院などが使っていて、農地として利用していた形跡はありません。
「開墾」つまり、聞いたことはあっても、生まれて一度もやったことが無い難工事にチャレンジしたのであります。ちょうど季節は今時分でしたか、しかし案の定、土地の改良に着手したワタシは、大変な困難な作業にぶち当たったのです。
計画は、間口7m位、奥行き8m強の長方形の土地を、およそ50㎝前後の深さまで全部掘り上げ、雑木の根っこ「塊根」を切り草の根っこを除外し、埋まっている石ころや廃材・ガラを撤去する。これによって嵩が減った分、黒土や赤玉土、たい肥・腐葉土などを投入する、でありました。計算上は、7×8×0.5=28(立方メートル・㎥)になりますね。人夫はワタシ一人、道具は小さなスコップとツルハシ、土をふるうための「篩」でありました。先代が建物を壊して更地にして駐車場にするとき、建設物のうち可燃物(木造建築)はここで燃やしたのです。そして残った屋根や壁・基礎部分のコンクリートは破砕してそのまま地下に埋設したのです。戦前戦後はそんなことは当たり前のことでした。アスベストがどうとか、など誰も言う人は当時にはいませんね。
南西の角から順番に、何十年もかけて固まり、砂利に草の根がびっしりと表面に詰まった石のような土に、つるはしを打ち込み、草の根を掘り起こしたあと、スコップで、その下にある砂礫混じりの土を篩にかけるという単純にしてしんどい作業を来る日も来る日もこなしたのです。凡そ2/5位までで掘り出したところで、積み上げたガラの山で作業が出来なくなったために、廃棄業者を呼んで処分してもらいました。たしか2,3tあったかな。その時土嚢に詰めてくれればあとの廃棄が楽になると言われて、ガラを土嚢に詰めるようにして出来たのが200個でした。一個あたり約10㎏として2トンでありますな。
この時すでに秋風がたち冬を目前にしており、ワタシの体力や作業能力は限界に達していたのです。全体の面積のうち1/4ほどを残していました。そこで、もはやこれまで、と件の業者に依頼して50㎝の深さまで全部土を削って持って行ってくれ、空いた空間に黒土を入れてくれるように依頼したのです。
結果として、処分費用と投入した黒土などで20万円の費用を支払い、自分は約21立方メートル(重さにすると30トン)ほどの石くれ混じりの砂礫を、スコップ一丁で掘り起こした、という計算になります。しかも、そのすべての土を手作業で篩ってガラを取り除いたのです。
それだけの労苦をかけ、お金を投じて出来た果樹園に、たくさんの果樹苗、多種多様な肥料を「買い込ん」で、片っ端から果樹を植えました
柑橘は、「せとか」「はるみ」「金柑」。リンゴは「ふじ」「つがる」「シナノゴールド」「姫リンゴ」。桃は「白桃」「白鳳 」
プラム・ケルシー、さくらんぼ「佐藤錦」「ナポレオン」などお構いなしに植えました。メインは「シャインマスカット」でした。
イチジクは白イチジクの定番「バナーネ」、これにポポーやフェイジョア、ジューンベリーにラズベリー・・・・
数えきれないくらい植えて、それなりに収穫もできたのです。いい土と有機肥料をふんだんに使い無農薬でした。おかげでワタシの血糖値もだいぶ上がったのです。しかし、素人の悲しさ、すべての果樹が順調に育ち、毎年美味しい果実がなるはずもありません。だいたいこれだけぎっしり植えれば日照が悪くなります。
そして、5年を過ぎたあたりから「処分」することが始まりました。まずはさくらんぼ、異種を混植することによって受粉したり収量が増すというのは果樹栽培の基本で、そのためにわざわざ授粉樹まで植えた佐藤錦ですが、着果率が低く、そのうちどんどん落果、食べられる時期になると鳥に食べられるといった具合で、通算数粒しか食べられなかったのです。
次に次男推奨で植えたのが「貴陽」であります。甘くて大きなスモモでありますが、木は大きくなるばかりで花が咲かず、花が咲いても実が付かず、付くのは大量のアブラムシでありました。結局一度も実をつけないまま昨年切り倒しました。シャインマスカットは、長年雨に当たっているうちに、ほとんど花が咲かず、ブドウも大きくならなくなりました。雨に弱い品種で恐らく樹全体が病気になってしまったので、これも泣く泣く処分しました。
1週間前に、ついに諦めたのが「白桃」であります。桃クリ三年といいまして、植えて翌年には2,3個桃が生ったのです。しかしそれ以降は開花しても受粉しません。わずかな数の幼果も途中で腐ったり成長しなかったり・・・
木は年々成長しましたが、アブラムシの巣窟になり白い死骸・黒い糞・べたべたの蜜とそれに群がるアリ。勿論殺虫剤を撒きますよ、でも実がついていないものに薬を撒く虚しさはやった人しかわかりません。柑橘は日陰になるし、通り道はふさぐしで、ついに思い切って伐採しました。
伐採前
伐採中
今朝
すっきりしました。簡単に通れて日当たりが良くなり、草むしりも楽になります。だいたい素人が何の手もかけず(殺菌・殺虫・剪定・受粉・袋掛け)て美味しい桃を食べようと思ったのが間違いであります。
現在67歳、断捨離にはちと早いのかもしれません。
しかし、「経済合理性」つまり時間と手間とお金をかけることと、買うことを天秤にかけるのも欠かせません。また、割合しつこい性格ではありますが、時と場合によっては「諦めも肝心」なのです。それでも、処分すると決めてもその日までは肥料や水をやったりする愚昧な人間なのであります。
問題はまだまだ続くのです。
ここには、4年目にしていまだ花が咲かない「アイスクリームバナナ」と「さるナシ」、ツルがどんどん伸びているキウイフルーツという、いまだ「食えない」果樹があります。それ以外にこの写真には「フェイジョア・リンゴ・イチジク・ラズベリー」が居るのです。
開墾自体は結果として大変有用で、ワタシのその後の10年に愉しいひと時と、健康、そして多くの甘い果実をもたらしました。なので「悔恨」はしていないのです。
しかしながら、桃の次は、こちらの処分がワタシを待っているような待っていないような・・・