植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

田黄石 簡単に手にいるなら苦労しない

2023年05月03日 | 篆刻
海の中の沈没船からお宝を発見するのが、昔から今でも続くトレジャーハンターの典型的なパターンであります。
不謹慎ですが、ようやく海上で謎の墜落事故を起こして総員が亡くなった自衛隊ヘリコプターの機体が引き上げられ、フライトレコーダーも回収されたそうです。その解析は専門の会社が行うそうですが、操縦士が事故に遭うまで一言も残さなかったという特異な事故で、内部で爆発したように原形をとどめないとう状態であったようです。

何も証拠や証言もない時点で「事故」と公表された墜落で、軍の機密情報にあたるのですから、実際はどんな状況で何が起きていたのかという真実は、恐らくワタシたちには知らされないでしょう。亡くなった方々が無駄死ににならないことを願うばかりです。

うちの裏手の借家に一人で住んでいた90歳過ぎのおばさん(当地ではおばあさんとは呼びません)、認知症の症状がひどくなって、とうとう施設送りになったのがひと月前です。彼女は、しっかり者、働き者でずいぶん貯えがあって、老後の生活には困らないほどの預金があると豪語しておりました。しかも、数年前には、よせばいいのに何かあった時に困るから、と庭だか床下だかに100万円を埋めてあると近所の人にもらしていたのです。

さて、そのおばさんが施設に入所し、借家は全部片づけて大家に戻すことになったのです。二人の娘さんが入れ替わり立ち代わり引っ越し・残置物整理にあたっていたのですが、どうやらおばさんが隠した「お宝」があるということを聞きつけたらしく、廃棄業者を呼ばないで毎週やってきております。

庭を掘り起こしたり床下を探ったりは見かけておりませんが、一間しかない小さな建物内をくまなくチェックし、畳の上に固着していた絨毯をはがしたらあちこちから現金入り封筒が見つかったようです。おばさんはとっくにぼけているので、絨毯の下にお札を隠したことなど忘れ去っているのです。まぁ、引っ越し業者か解体業者が見つけたらそちらの懐に入るのでしょうから、近親者の手に渡ったのは良し、と考えるべきでしょう。

一方ワタシ・お宝ハンターは、もっぱらヤフオクでの「田黄石」探しであります。印材をたくさん集めるうち、突出して田黄石の希少価値や魅力があることを知り、なんとかして田黄を入手したいと落札を繰り返しております。残念ながら、真正の田黄石は、①福建省寿山郷にある田黄坂の土中から自然石の小石として発掘された ②紅筋というかすかな赤い筋が走る ③蘿蔔紋(らふくもん)という大根の切り口のような模様があるというような条件に、特有の黄色みがかった透明感のある光沢がある石、とされております。

ヤフオクなどでは、毎日数十に及ぶ「田黄」の出品があります。清朝の初期、つまり17世紀初頭にはほぼ掘り尽くされたという石、金の重さと同じ価格で取引されたという田黄は一個発見すればそれだけでお金持ちになると言われたような希少な石なのに、それだけ多く出回るというのには訳があります。

それは、ほとんどが偽物だからであります。人造石は論外ですがこれもよく見かけます。そして白っぽい半透明の安い石を煮込んで黄色くする、高山凍・黄芙蓉・杜陵坑・封門石・鹿目格、連江黄などの似たような黄色い石を「田黄」と偽るというのが圧倒的に多いのです。ワタシはざっとみて経験的には真正の田黄石は100個あって一つか二つ、くらいの確率だとみております。

それでも、相当な高値で取引されヤフオクで落札されるのは、ひょっとして「お宝」の本物かもしれない、あるいは本家田黄にも劣らないような美しい黄色い凍石であることも少なくないからなのです。

かく言うワタシ、また先日「田黄もどき」を落札しました。よくあるパターンの「サイコロ状」の黄色い石であります。もうこの時点で「自然石形」という条件を満たしていないのでほぼアウトなのですが、数千円というこんなものしかワタシレベルの人間には手が届かないのであります。

一応側款があり、彫られておりますが相当な篆刻家でないとこわくて彫れないといわれる田黄にしてはユルイ印面の彫ですね。「退谷」さんという号を持つ中国の篆刻家さんは19世紀に二人見つかりましたが、そんな方の刻とは見えません。石はかなりやわらかい為、角が「アタリ」で白く崩れていました。

実は似たものを既に所有済みで、まったく似たような木の箱に収まっております。こうなると、田黄に似せた安い石専門の模造グループがいるとしか思えません。

一段上のレベルでいくとこんな石があります。
自然石であることは間違いありませんが、夾雑物が多く薄意(表面の浮彫)も雑だったりします。田黄に似た石、田黄石の母岩と言われる寿山石の山坑で採取されたのかもしれません。

さらにもう少し価値がある(かもしれない)のが下の三つ
共通点が①非常に細工が細かく美しい ②作款「秋堂・福庵」がある ③透明度が高く、微黄色と乳白色が混在している、等であります。これとてその銘が真正かも疑わしい品物で、本来の田黄石の特徴と合致しているとは言い切れません。そもそも入手した時の金額は2,3万円の代物です。先日本ブログで記したように、これこそ本物だ!と見えた二つの美しい黄色い石は、落札額、50万円と20万円でしたから。

宝さがしはやめられませんが、ワタシの軍資金ではいつまでたっても本物を入手するのは不可能かもしれません。
本日最後はGWでもしつこく彫ったもの。石は似ても似つかない安物の寿山石であります。

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