松実ブログ

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おばちゃんと海老フライ

2011年02月03日 20時53分16秒 | Weblog

伯母は幼い兄貴とオイラをすごく可愛がってくれた。
奈良県に住んでいて、夏休みに遊びに行くと嬉しそうな笑顔で、
オイラたちを迎えてくれた。

埼玉県と奈良県では距離が離れている為に、
一年間に一度、夏休みぐらいにしか会えない。
だから、会う度に「大きくなったね~。」と、頭を撫でてくれた。
オイラはそれがすごく楽しみだった。

でもそれ以上に楽しみなことは、
おばちゃんが作ってくれるとても美味しい料理を食べることだった。

年に一度しか会えないから、
腕によりをかけてご馳走を作ってくれていたからなのかもしれない。
とにかくオイラはおばちゃんの料理が好きだった。

もう20年以上前の話。
夏休み、お盆の時季。
幼い兄貴とオイラは新幹線に乗って奈良県に行った。
帰省客で混んでいる新幹線に乗って、二人だけで新大阪まで向かった。

新大阪から特急に乗り継いで、伯父と伯母が待つ駅に向かう。
兄貴に手を引かれ、見たことのない景色の中汗だくで歩いた。

電車を降りて改札を出ると、笑顔の伯父と伯母が、
顔をくしゃくしゃにして「よう二人だけで来られたな~。」と、
優しい関西弁で迎えてくれた。
田舎の駅を出て、坂道を上った途中にある伯父の家。
隣には神社があり蝉がミンミン鳴いている。

冷たい麦茶を飲んでから、兄貴とオイラはすぐに神社に遊びに行く。
夕方、日が落ちるまで遊んで、遊び疲れてから伯父の家に帰った。
家に帰るといいにおいがする。
「もう少しで夕飯できるで~。先お風呂入ってき~。」
伯母の優しい声に応えて兄貴と一緒に風呂に入った。

網戸から夜風が吹き抜ける、少し線香のにおいがする和室。
伯母が作ってくれたアツアツのご馳走が待っていた。

ハンバーグ、サラダ、その他たくさん。
食べきれないほどの料理が、机に並んでいる。
「いただきま~す。」そう言ってパクパク食べた。
すごく美味しい。お腹いっぱい食べた。

その中でも、オイラは伯母の手作りの「海老フライ」が大好きだった。
「おいしい、おいしい。」と言いながら兄貴とオイラは食べまくった。
「まだまだあるからどんどん食べや~。」と伯母は言ってくれた。

オイラたち兄弟が成長し、中学校、高校に進むと、
都合がなかなか合わず奈良には行けなくなった。
年賀状などで、「奈良においでね。」「今年は遊びに行きます。」
そんなやりとりをしてはいたが、なかなか実現できなかった。

結局オイラが20歳の時、再び兄貴と奈良県を訪れた。
伯父と伯母は、成人したオイラと兄貴を嬉しそうに迎えてくれた。
そして夕飯には「海老フライ」を出してくれた。
相変わらずすごく美味しかった。


そんな料理好きで優しい伯母が、おととい亡くなった。

体調が悪く、入院していたことは聞いていた。
でも、まさか、そこまで体が悪かったなんて・・・。

悲しみと同時に、あの美味しかった海老フライが思い出されて、
涙がこぼれた。

おばちゃん、なかなか会いに行けずごめんよ。
「またそのうち」なんて思っていたけど、足が遠のいてしまった。

お通夜とお葬式に行く母に、オイラたち兄弟の気持ちを託した。
いつか必ず奈良県に行って必ずお線香をあげに行きます。


オイラの中で、伯母を思い出す時、
伯母の顔とあの海老フライがセットで頭に浮かぶように、
もし、オイラが亡くなったら、誰かがオイラの顔と何かをセットで思い出してくれることはあるのだろうか。
もし、思い出してくれるなら、そのセットは何なのだろうか。


おばちゃん、
美味しい海老フライをありがとう。
ゆっくり眠ってくださいね。


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