風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

映画/偽りなき者、ハンナ・アーレント

2014年06月07日 | 映画


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彼女は、ハイデッガーに師事した哲学者のドイツ人で、ナチスの強制収容所から脱出し、アメリカに亡命しまし。
映画は、彼女がアイヒマン裁判を傍聴し、そのレポートをザ・ニューヨーカー誌に発表し、その反響・顛末を描きます。
1960年、アルゼンチンに逃亡し、最後のナチス戦犯と言われていたアイヒマンをイスラエル諜報特務庁(モサド)が探しだし、
イスラエルに連行し、裁判にかけます。
アメリカがビン・ラーディンをアフガニスタンやパキスタンの主権などお構いなしに殺害したように、
モサドも各国の主権など全く無視して行動します。
アイヒマンは、ドイツの親衛隊の中佐で、決して大幹部ではありません。当時の世論は「極悪非道な彼に弁護の余地は無い」です。
彼女は、「悪の凡庸さ」を言います。ナチスの犯した悪事は、特殊な「怪物」が成したのではない、人間的思考を停止し、
命令されるまま、己の「義務」とされることを淡々とこなす小役人的行動の帰結として起こったのだ、と言います。
また、彼女は「ユダヤ人指導者の中にもアイヒマンに協力した者がいた。それによってユダヤ人の犠牲が増えた」と言います。
それはそうしたユダヤ人指導者を糾弾するためでは無く、「悪の凡庸さ」は被害者側のモラルの崩壊をも引き起こすことを言いたいためです。
オーム事件も、連合赤軍事件も、ポルポトの悲劇、そして日本の皇軍等々の出来事も、「悪の凡庸さ」から来る悲劇かもしれません。
「人間は誰でも思考を放棄すれば悪になり得る」と言うのは一面の真実かもしれませんし、
「命令されない悪の凡庸さ」の危険さは、今の日本の感情的「右傾化」を支配している空気かもしれません。
むずかしいテーマを興味深く扱っています。しかし、この映画は成功しているとは言えません。
彼女のいわゆる伝記物にしなかったのは良かったのですが、彼女の夫とのエピソードなどは割愛し、
また、かつての友人達との軋轢や彼らの批判と議論などもっと冷静に静かに描いた方が良かったです。
一番嫌だったのは、彼女がいつもタバコを吸っていることです。                           【5月26日鑑賞】

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