風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

映画/鑑定士と顔のない依頼人、メイジーの瞳

2014年06月13日 | 映画


面白い映画ですが、良・悪の評価は分かれます。
良い点は、謎の依頼人は誰かという謎解きと、彼女に恋心を抱いたヴァージル・オールドマンの運命や如何に、です。
悪い点は、鼻持ちならないイギリス的「貴族趣味」と、どんでん返し後の後味の悪さです。
高い授業料だった、生身の人間は名画よりなんぼも素敵だと新たな女性を求める終わり方ならどんなに良かったでしょうか。
比類の鑑定眼を持つヴァージル、ろくに調査をしないで、謎の女・クレアに籠絡され、ついには詐欺されます。
彼は、やばい手で入手した数多くの女性達の肖像画で囲まれた秘密の部屋で過ごすことを至福としています。
生身の女性を知らないだけならそんなに特別では無いのですが、
食事を摂る時も手袋をするというのは、どう見ても尋常ではありません。
この映画のもう一つの恐ろしい面白さは、観客の持つ「覗き見」のスケベ心です。
ヴァージルは、クレアが扉を開けて出てくる様子や、彼女が椅子に座って怪我した足の親指をなめる姿、
その時、彼女の股間が見え隠れする様などを彼は盗み見します。
股間が見え隠れするシーンは、「エマニエル婦人」など映画で何度も使われています。
ヴァージルが覗き見していると同時に観客も同様後ろめたく覗き見しているのです。
彼女は実は覗き見されていることを十分承知し、演出し、彼を虜にしていくのです。
観客は、段々こうして彼女のこうした不可解な言動に疑問・作為を感じ始めます。
映画の最後の方で、ヴァージルは彼女に孤児院で育って這い上がってきたこと告白します。
母親、家族を知らないで育ち、這い上がってきたのだから、彼の貴族趣味もしょうがないか、
生涯で一度の恋愛の成就も認めてやろうかと思う反面、そんな単純なハッピーエンドはあり得ない……。
ヴァージルは結局の所、見事にダマされるのですが、その黒幕ははっきりと名指しされません。
それはおそらく、ヴァージルが絵を手に入れるために組んできたパートナー、ビリーでしょう。
彼は、ヴァージルの虚栄心や弱点や貴族趣味、女を知らないことなど彼のすべてを熟知しているからです。
この映画、イタリア映画ですが、台詞は英語です。
イタリアでは大ヒットしたそうですが、イタリアではイタリア語の字幕だったのでしょうか。
ヴァージルの名前が、オールドマン=老人というのは恐ろしいですね。
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登場人物がまさにステレオタイプ、安っぽいアメリカ映画って感じです。
ストーリーにリアリティがなさ過ぎます。メイジーの父親は彼女のベビーシッター・マーゴと出来てしまい、
ロック歌手の母親は若いバーテンダー・リンカーンと再婚してしまいます。
適齢期のマーゴがなぜベビーシッターをしているのか、リンカーンがなぜ母親と結婚したのか全くつじつまが合わないのです。
そんなディテールやシリアスさはこの映画には全く関係ないのですが。
父親と母親は仕事人間というより、幼稚でわがまま、他方マーゴとリンカーンは若いのに大人で人の面倒見が良く優しい。
「血よりも優しさ」、「大人度は年齢とは無関係」と、言いたいのでしょうか?
それよりも「安っぽいヒューマン」と言うのは言い過ぎでしょうか。           【6月9日鑑賞】



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