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甕棺の図文は稲魂か?

2023-03-12 08:51:09 | 日本文化の源流

過日、辰巳和弘著『他界へ翔る船』なる著書を読んだ。船形木棺をもって『舟葬』が存在したとの表現には、多少なりとも違和感を覚えるが、その他の記述内容は成程と賛同でき、最近読んだ書籍としては出色であった。今回のブログテーマは、その書籍に記述されていた”木棺と甕棺に刻まれた十字文”に関してである。

以下、『他界へ翔る船』の記述内容の抜粋である。”成都商業街船棺墓と呼ばれる紀元前5世紀前後の遺跡から多くの船形木棺が出土した。その8号船形木棺に十字型の図文が刻まれていた。その十字の先端が三又となっていた。

出典:『他界へ翔る船』辰巳和弘著

佐賀市の東山田一本杉遺跡30号甕棺に似た図文が線刻されていた。その十字文の先端は、三又ではなく五つに分岐されていた。

出典:東山田一本杉遺跡 佐賀県教育委員会 1995.3.31

常松幹雄氏①は、この十字形図文を「束ねた稲穂を十字に結わえた『稲魂』の象徴で、それぞれ十字の先端の線刻は、稲穂と解釈できる。カメ棺に葬られる人はやがて祖霊の仲間入りをし、祖霊は再び新たな生命として誕生する。この線刻は、人の生死の輪廻を稲魂の去来に見立てた表現と思える」と理解した。

両者は葬送の棺として相通じる。前者は棺蓋をかぶせると見えなくなる位置に図文が刻まれ、後者は図文を墓壙の底側にして埋葬される。両社は共に現世から見えない領域、換言すれば他界に向かう記号という点でつながる。”・・・以上である。

このように、先が分岐する十字文は、稲魂との記述である。そこで、これは何処かで見た覚えがある・・・と。

出典:カミの誕生 岩田慶治著 講談社学術文庫

岩田慶治著『カミの誕生』に記載されてた『米倉の中の稲魂』ではないか。それは竹の枌を編んだもので、白黒写真ではあるが、稲籾の中にたつ造形物である。これは北タイのシャン族(タイヤーイ族)の造形物である。

この『稲魂』の本貫は、江南であろうと思われる。江南は孟宗竹(江南竹)の本場である。河姆渡遺跡の時代から稲魂は、祀られていたかと思われる。

尚、日本で舟葬は存在しないと冒頭記したが、これについては別途記事にしたいと考えている。また今回のテーマに関し、先哲のブログが存在するので紹介しておく。ココ(稲の呪符・倭人の出発点確定か?!)を御覧願いたい。

注① 常松幹雄 「カメ棺に描かれた弥生人の世界」福岡市博物館 1998年

<了>

 



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