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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

近松門左衛門NO.14・・・四月大歌舞伎「廓文章 吉田屋」(歌舞伎座)

2009-04-22 | 近松門左衛門
■日時:2009年4月18日(土)、16:30~
■劇場:歌舞伎座
■作:近松門左衛門
■出演:坂東玉三郎、片岡仁左衛門、他

この舞台で圧倒的な存在感を見せたのが、坂東玉三郎でありました。美しいと劇場の観客から溜息が出ました。今回の四月大歌舞伎において一番印象に残ったのが、玉三郎が演じた夕霧です。彼が長くトップランナーとして存在しえているのは、たとえば茂木健一郎が司会を勤めるNHKの番組「プロフェッショナル・仕事の流儀」で紹介されていたような芸に対するストイックなまでの姿勢だけではなく、女形としての外観としての美しさもあるのだろうとその姿を見ると思わざるえません。男女問わず魅了してしまう美しさ、見た目もそして見えないオーラも違う玉三郎でした。

一方の片岡仁左衛門もイイ男でした。きりりと伸びた背筋、その立姿がボクからみればうらやましいかぎり。粋でいなせな感じその背筋から漂っています。他を寄せ付けない立姿に思えます。紙衣の派手な色の組み合わせも衣装に負けずに着こなしています。仁左衛門は他の演目も観たことがありますがどれも決まっていてベストドレッサーなんですね。彼を観た後は無意識に背筋を伸ばして歩いている自分がいるのに気がつきます。

ところで玉三郎が演じた夕霧は人気絶大であった実在の遊女であったそうですね。遊女とはいっても当時はアイドル、スターのような存在であったとか。丁度、NHK教育テレビの番組「知る楽」のシリーズで松井今朝子の「極付歌舞伎謎解」でこの「廓文章」についてやっており、事前にそれを見ていたのでそんな知識も仕入れて舞台をお観ることができたわけです。紙衣を着てみすぼらしくなった藤屋伊左衛門は、歌舞伎における和事の“やつし”の美意識であるとも。一度でいいから湯水のように大金はたいたお大尽遊びをしてみたいものです。

この「廓文章」にはもとになるものがあって、それが近松門左衛門の浄瑠璃「夕霧阿波鳴渡」、その「吉田家の段」の部分が改作されてこの作品になったそうです。そこでボクは図書館で近松の本にあたり「夕霧阿波鳴渡」にチャレンジしてみたのですが、語句についての解説や現代語訳などなかったので、読むのになかなか苦戦しました。どこまで読みえたか自身がないのですが、元の近松の作品と違うところは、近松の方は夕霧と伊左衛門の間に子供がいるということになっていて、二人ともその子供のことを不憫に思っている。一方の「廓文章」はそうした背景を削除して二人の痴話喧嘩をメインに持ってきて最後は伊左衛門の勘当もとかれて、夕霧は千両箱が運ばれ見受け、二人は結ばれめでたしめでたしのハッピーエンドとなっていました。

そうなると話は目茶苦茶単純なので、これは物語を楽しむのではく、さきにもあった“やつし”の美意識を味わうといったことなんでしょうね。



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4 コメント

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はじめまして (黒猫)
2009-04-22 22:16:15
トラックバックありがとうございます。
登場しただけで観客がため息をつき、どよめく歌舞伎役者は玉三郎だけですよね。

いつも素晴らしく且つ個性的な色使いを見せる彼の衣装ですが、夕霧は勿論、昼の部の政岡の衣装も非常に印象的でした。
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コメント (飾釦)
2009-04-23 22:09:32
ありがとうございます。

そんなに玉三郎を見ているわけではないのですが、今回は見惚れてしまいました。

また、よろしければみてやってください。
返信する
はじめまして (はるき)
2009-04-29 18:08:12
TB有難うございました。お洒落で内容の充実したブログですね。

「廓文章」は3度目位ですが、見ていて蕩けてしまいそうな気分になったのは今回初めてでした。やっぱり仁左玉コンビならでは?

私は特に澤瀉屋さんの贔屓ですが、仁左玉・海老様・菊五郎劇団等も好きです。又よろしくお願い致します。
返信する
コメント (飾釦)
2009-04-29 20:19:08
いただきありがとうございました。

はるきさんのブログは歌舞伎が充実していらっしゃいますね。私は最近、歌舞伎の魅力を発見しました。

数少ない歌舞伎鑑賞の中でも玉三郎はピカイチでした。
返信する

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