シュルレアリズムの理解者で紹介者でもあった澁澤龍彦。彼の著書「幻想の画廊から」にダリについての項がある。例によって魔術がかかっているような言葉でダリを評していた。
“インファンティリズム(小児型性格)の画家―そんな風に、ダリの人格を規定してもよいかと思う。ダリの諸作品を一見すれば明らかなように、彼の制作のモチーフには、つねにフロイト的なパン・セクシュアリズムが支配しており、その欲望の志向するところは、つねに性器前体制的であった。”
“ダリは顕著な内閉的な傾向を示す禁欲主義者であり、彼の好む世界は、近代の自由主義やアナーキズムと対立する、堅固な秩序に支配された、進学的な冷たい世界なのだ。”
“ダリのなかには、おそらく、形ののはっきりした堅固なものに対する知的な執着と、形の定まらないぐにゃぐにゃしたものに対する無意識の執着との、奇妙なアンビヴァレンツ(両極性反応)が潜在しているのにちがいない。”
“ダブルイメージも、トロンプ・ルイユも、パラノイア的批判も、わたしには、すべて「堅固なものから軟らかいものへ」という、あのヘラクレイトス的夢の論理の延長にすぎないようにさえ思われる。”
“ダリの無限は、時間の停止した、あらゆる音の絶えた、心理的に別次元の空間を開示するためのものである。”
(以上「幻想の画廊から」(河出文庫)から抜粋)
また、かなり前に観た「奇蹟のダリ宝石展」(1984年)のカタログにも澁澤のコメントが寄せられていた。
“おもしろいのは、すでにダリの絵画によって私たちにもお馴染みになっている、あのぐんにゃりと樹にひっかかった時計だの、電話だの、ザクロだの、カタツムリだの、あるいはオベリスクを背中にのせた脚の長い象だのが、金銀や宝石といった新しいマティエールによって、新しいバロック的な表現を獲得しているということであろう。”
(以上「奇蹟のダリ宝石展」カタログから抜粋)
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“ダリは顕著な内閉的な傾向を示す禁欲主義者であり、彼の好む世界は、近代の自由主義やアナーキズムと対立する、堅固な秩序に支配された、進学的な冷たい世界なのだ。”
“ダリのなかには、おそらく、形ののはっきりした堅固なものに対する知的な執着と、形の定まらないぐにゃぐにゃしたものに対する無意識の執着との、奇妙なアンビヴァレンツ(両極性反応)が潜在しているのにちがいない。”
“ダブルイメージも、トロンプ・ルイユも、パラノイア的批判も、わたしには、すべて「堅固なものから軟らかいものへ」という、あのヘラクレイトス的夢の論理の延長にすぎないようにさえ思われる。”
“ダリの無限は、時間の停止した、あらゆる音の絶えた、心理的に別次元の空間を開示するためのものである。”
(以上「幻想の画廊から」(河出文庫)から抜粋)
また、かなり前に観た「奇蹟のダリ宝石展」(1984年)のカタログにも澁澤のコメントが寄せられていた。
“おもしろいのは、すでにダリの絵画によって私たちにもお馴染みになっている、あのぐんにゃりと樹にひっかかった時計だの、電話だの、ザクロだの、カタツムリだの、あるいはオベリスクを背中にのせた脚の長い象だのが、金銀や宝石といった新しいマティエールによって、新しいバロック的な表現を獲得しているということであろう。”
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