飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

江戸川乱歩の研究?18⇒「パノラマ島綺譚」から

2006-04-06 | 江戸川乱歩
とにかく江戸川乱歩の「パノラマ島綺譚」、この小説の後半は、人見廣介が完成させたパノラマ島の荒唐無稽というか、空前絶後というか、筆舌に尽くせないほどの万華鏡のような描写が延々と書き連ねられる。それを数行で表現したものは以下の文章か。


◆狂気の世界

“類を絶したカーニバルの狂気が、全島を覆い始めました。花園に咲く裸女の花、湯の池に乱れる人魚の群れ、消えぬ花火、息づく群島、踊り狂う鋼鉄製の黒怪物、酩酊せる笑い上戸の猛獣共、毒蛇の蛇踊り、その間をねり歩く美女の蓮台、そして、蓮台の上には、錦の衣に包まれたこの国々の王様、人見廣介の物狂わしき笑い顔があるのです。・・・

それらのすばらしい舞台での日夜を分たぬ狂気と淫蕩、乱舞と陶酔の歓楽境、生死の遊戯の数々を、作者は如何に語ればよいのでありましょう。それらは恐らく、読者諸君のあらゆる悪夢の内、最も荒唐無稽で、最も血みどろで、そして最も瑰麗なるものに、幾分似通っているのではないかと思われるのですが。”


そして、菰田源三郎に成変りその妻・千代子を自分のものにしようとするが、抵抗に合い殺害してしまう。しかし、狂った人見廣介は、それをもこの理想郷の住人にし祀り上げるのである。


“「千代子はこのパノラマ国の女王様だ。人間界へは決して二度と姿を見せないだろう。お前はこの島にある群像の国を見ただろうか。時として千代子は、あの目まぐるしい林立した裸体像の一人になりすましていることもあるのだよ。そうでない時は海の底の人魚か、毒蛇の国の蛇使いか、花園に咲き乱れた花の精か、そして、その様な遊びにも飽き果てると、この壮麗な宮殿の奥深く、錦のとばりに包まれた、栄耀栄華の女王様だ。”

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