飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

乱歩NO.50・・・<押繪と旅する男/1994年>

2006-08-28 | 江戸川乱歩
押繪と旅する男

製作:1994年バンダイビジュアル
監督:川島透
主演:浜村純、鷲尾いさ子、飴屋法水

乱歩の原作は、その数多い作品でも名作として名高い作品である。原作は押絵の女性に惚れてしまった男性が、レンズを通してその絵の世界に入ってしまうという不思議な幻想譚。この短編小説がどのような映画になるのだろうと・・・。そのほとんどは創作となっていますが、乱歩の原作を損なわないよう拡大解釈し、うまく映像化されているんじゃないかなとの印象を受けました。

とにかく壮絶なのは老人を演じた浜村純です。過去と現在と未来が交錯し、どれが本当か分からなくなってきます。押絵の世界の住人になってしまった兄を追っかける浜村は、ひたすら徘徊します。それは一体夢なのか真なのか?痴呆ゆえの幻想を見ているのか?観ていくうちに胸が痛くなってきます。

映画の中では、震災で崩れてしまった十二階の再現や、少年と鷲尾いさ子がキスをするシーンなど見せ場があるのですが、浜村の徘徊ぶりはそれらを吹き飛ばしてしまう勢いと凄みがあります。

夜な夜な徘徊する老人達、彼らもまた彼ら自身のの“押絵の中の男”を探しているのでしょうか?私もそうならないとは限りません。それを考えると身につまされる思いです。

ラスト、映画に出てきた登場人物たちが浜に立ち一様に蜃気楼を眺めています。しかし蜃気楼自身の映像は映りません。彼等は何を見ていたのでしょうか。蜃気楼には、もしかしたら我々観客が映っていたのでしょうか。夢の世界の住人達(=映画)が真の世界の我々(=観客)を、いやその逆の夢の世界に生きる我々(この世は幻)を真の世界の住人である彼等(夜の夢こそ真)が、蜃気楼を通して見ていたのでしょうか。

映画はまるでテレビのスイッチを切るようにブチッと突然終わるのでした。


人気blogランキングへ



■小説
江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男

光文社

このアイテムの詳細を見る

■ビデオ
押繪と旅する男

バンダイビジュアル

このアイテムの詳細を見る
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 乱歩を巡る言葉17・・・『... | トップ | 江戸川乱歩の研究?53⇒「押... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございました (まんだら堂)
2006-08-31 21:24:58
はじめまして

トラックバック有り難うございました。

蔵書がビッシリ詰まった乱歩邸の土蔵をみたときは感動しましたねぇ。

夏休みには団子坂にふらりと行ってきました。

もちろん喫茶「乱歩°」で休息することも忘れておりません。
返信する
コメント (飾釦)
2006-08-31 22:38:18
いただきありがとうございます。

私は乱歩の土蔵には入ったことがありません。うらやましい限りです。

また、よろしくお願いいたします。
返信する
ありがとうございます (wata)
2006-09-10 04:05:00
トラックバックありがとうございます。

こちらの作品は観ていないので

探してみようと思います♪
返信する
コメント (飾釦)
2006-09-10 23:25:46
ありがとうございます。ブログを拝見しました。



私も“情報”という観点からみると今年、乱歩ワールドに足を踏み入れて、ブログをとにかく乱歩にこだわって書き続けると、情報も入ってくるし、何よりも新しい視野と発想が身についたような気がします。
返信する

コメントを投稿

江戸川乱歩」カテゴリの最新記事