江戸川乱歩の研究？６⇒「心理試験」から

ドストエフスキーの『罪と罰』を想起させるような設定である。ラスコーリニコフは超人思想という哲学的命題に取り付かれ金貸しの老婆を殺害した。乱歩の小説の蕗屋清一郎は金の誘惑で老婆の殺害を計画する。

“蕗屋はこの金に誘惑を感じたのだ。あのおいぼれが、あのおいぼれが、そんな大金を持っているということに何の価値がある。それを俺の様な未来のある青年の学資に使用するのは、極めて合理的なことではないか。”

さて、この犯人の蕗屋は心理学者でもある笠森判事の取調べを受けることになり、その対抗として「心理試験」について徹底的に研究し対策をする。それは聯想診断というもので「机」「ペン」などといった言葉に対して何も考えないですぐさま答えていき、その返答集の中から被験者の嘘を見抜き犯人を特定するという手法である。この心理試験は無意識を発見したフロイトの方法論ではないか。フロイトは言い間違いや連想テストなどから、被験者の無意識を浮かび上がらせていったのである。

しかし、主人公の蕗屋は、自然さを練習し装うするあまり、却って明智小五郎に
見破られてしまう。

“あなたはそれを完全にパスしましたね。実際完全すぎた程ですよ。”
“あなたは、その難しい聯想の方を却って早く答えているのです。”
“実際、心理試験という奴は、場合によって非常に危険ななものですからね。”
“あなたが世間並みの裁判官や犯罪者より、十倍も二十倍も進んだ頭を進んだ頭を持っていられたことです。”

明智は自身の分析の感性について大岡越前守をたとえにだした。


※小生投稿記事より、映画「双生児」はこの「心理試験」も題材にしています。
乱歩・・・＜双生児-GEMINI-／１９９９年＞


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