♦️随時改訂939『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカ大統領選挙(その結果、2021.1.13時点)

2021-01-25 19:40:38 | Weblog
随時改訂939『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカ大統領選挙(その結果、2021.1.13時点)

『州による選挙結果確定前』
 
 2020年アメリカ大統領選挙において、日本時間でいうと11月8日午前早くに、バイデン候補が過半数270人をクリアする選挙人の数を取るという意味で「当選確実」の形で出たという、アメリカの主要メディアが伝えた。
 また、今回は、郵便投票が極めて多かったという。そのため、終盤の開票作業が遅れていた。全体の確定には、もう少し時間がかかるとしていた。(注1)
 
(注1)として、今回注目の郵送投票、それに軍人や在外有権者の投票受け付けについては、こうある。

○アリゾナ州は、選挙人11名にして、郵送での投票は11月3日必着とする。
○ベンシルバニア州は、選挙人20名にして、郵送分は11月6日まで受け付ける。ただし、軍人や在外有権者は10日まで受け付ける。
○ジョージア州は、選挙人16名にして、郵送での投票は11月6日まで受け付ける。
○ノースカロライナ州は、選挙人15名にして、郵送での投票は11月12日まで受け付ける。
○ネバダ州は、選挙人6名にして、郵送での投票は11月3日必着とする。
 
 
 驚くべきは、まだメディアによる「当選確実」が出る前の時点でトランプ氏が「率直に言って、私は選挙に勝った」と述べたことだ。これでは、「自作自演」と批判されても仕方あるまい。
 これに対し、バイデン氏は「勝利を確信している」とはいえ、「開票が終わるまで辛抱強く待とう」と述べ、勝利宣言を行わなかったのは、候補者として当然なことだ。

 当選確実となった民主党のバイデン氏は、副大統領候補のハリス氏とともに、日本時間10時過ぎから演説を行ったという。その中でバイデン氏は、国民に融和を促すとともに、国民みんなの大統領になると明言し、賛同を求めた。

 なお、選挙の相手方のトランプ大統領は、これを認めず、今後は法廷闘争で挽回するという。どうやら、彼は、始めから、自分が一般投票で旗色が悪ければどうするかを決めていた節があるように見受けられる。
 
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 ちなみに、合衆国憲法修正第12条には、次の記述がある。

 「大統領として最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が大統領となる。過半数に達した者がいないときは、下院は直ちに無記名投票により、大統領としての得票者一覧表の中の3 名を超えない上位得票者の中から、大統領を選出しなければならない。
 但し、この方法により大統領を選出する場合には、投票は州を単位として行い、各州の議員団は1票を投じるものとする。この目的のための定足数は、全州の3分の2の州から1名または2名以上の議員が出席することを要し、大統領は全州の過半数をもって選出されるものとする。」
 
 また、合衆国憲法第二章第1条第3項は、次のように規定している。
 「各々の州は、その立法部が定める方法により、その州から連邦議会に選出することのできる上院議員および下院議員の総数と同数の選挙人を任命する。(後略)」

  加えて、1887年に制定された「選挙人算定法」には、その運用について、次の「セーフハーバー(承認領域)条項」が設けられている。
 「選挙人集会の少なくとも6日前までに、開票作業等の懸案が解決し、当選者を決定できるならば、その州議会の決定は当該州の勝者決定の最終決定とみなす」
 
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 そこで少し込み入ってくる話の方をいうと、仮に激戦州の結果が1月6日の時点でも決着せず、両者の候補者とも選挙人が過半数の270人に届かなかったとする。この場合、憲法修正12条の規定で、連邦議会の下院が直ちに「決選投票」を行うことになる。
 この場合の下院におけるこの決選投票では「各州で1票」ずつを投じ、52州の過半数の26票を争うことになっている。

 
 今後の予定としては、今回の2020大統領選挙の場合、12月8日が各州においての選挙結果確定の期限、12月14日には選挙人による投票が行われる。ちなみに、選挙法は、選挙人投票日を「12月の第2水曜日の後の最初の月曜日」と定められている。
 そして、明けての2021年1月6日には連邦議会、すなわち上下両院合同会議で投票結果を集計し、次期大統領が最終確定する。さらに、1月20日が新大統領就任式となっている。
 
 要するに、アメリカの大統領選挙の仕組みは、投票が済んでからも、誠にややこしい。2つの州を除き、有権者による一般投票で1票でも多く得票した候補者が、州ごとに割りふられた選挙人のすべてを獲得し、その選挙人による投票で、正式な勝者が決まる仕組みになっている。
 面倒なことには、各州で開票作業が行れた後、各州が選挙結果を認定して初めてその州でどちらの候補者が勝利したかが認定される。今回は、州による認定の締切りは12月8日なので、それまでに今勝敗が認定されることになる。認定されると、その後はそれを覆すことが困難になる。
 そういう流れから、トランプ陣営は激戦州での認定を遅延させる作戦に出ていると見られている。選挙結果が不当との訴訟を起こして12月8日までに認定ができない事態となれば、州議会が選挙結果を左右することのできる場合が出てくるからだ。
 
 
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『州による選挙結果確定後』
 
○バイデン候補は、51.1%、80,117,578(11/28の当該サイトで閲覧)
○トランプ候補は、47.2%、73,923,495(11/28の当該サイトで閲覧)
 
 11月半ばには、主要メディアが、選挙結果が確定されたとの報道を行った。それによると、双方が獲得した選挙人の数は、バイデン氏が306人、トランプ氏が232人となり、相当の開きがある。
 ちなみに、総得票数は高い投票率に支えられる形でともに7千万人を超え、その意味でも歴史的な選挙となった。
 
 しかしながら、この時点で、トランプ陣営はなお敗北を認めず、全米で数十件もの訴訟を次から次へと立ち上げるのをやめていない。

 例えば、ペンシルバニア州では、共和党員2人と民主党員2人の委員からなる同州選挙管理委員会は11月23日に会合し、共和党の1人が棄権、残る1人が選挙結果を認めたことから、州として認定が成立した。
 それからは、同委員会の判断は同州の州務長官と州知事による承認が必要であって、敗れた側は、ここで最後の抵抗を試みることもなくはないという、「そうなると、選挙で示された民意はどうなるのか」ということにもなりかねないものの、建国当時からの妥協の産物としての仕組みが現在も生き続けている訳なのだ。
 
 また、同州での訴訟のその後については、CNNニュースが伝えるところによると、トランプ米大統領の選挙陣営がペンシルベニア州の選挙結果に異議を申し立てた訴訟に関連し、連邦第3巡回区控訴裁(ペンシバニア州の連邦高裁)は11月27日、訴訟の復活を求めた陣営の請求を「根拠がない」として退けた。
 同州の選挙結果を巡っては、同州の連邦地裁が先週末、トランプ陣営の訴えを棄却している。これを受け、同陣営は第3巡回区控訴裁に訴訟内容の修正を申し立てていた。
 同裁判所の判事の弁として、「トランプ陣営は投票用紙に不正があったり、違法な有権者によって投票がなされたりしたとの主張を展開できていない」「ある事象を差別と呼んだからといって、実際に差別になるわけではない。第2修正訴状もこうした重大な瑕疵(かし)を抱えており、修正を認めることに利益がない」と伝わる。
 第3巡回区控訴裁の判事はまた、ペンシルベニア州による投票結果の認定の無効化を求めたトランプ大統領の申し立ても退けたという。同州としては、11月24日、選挙結果を認定し、バイデン次期大統領が同州に割り当てられた選挙人20人を獲得したことを正式に認めている。
 
 さらに、CNNニュースによると、11月28日夜の同州最高裁は、米大統領選をめぐって同州選出の共和党議員らが郵便投票の無効などを主張した訴えを退ける判断を下したという。共和党のマイク・ケリー下院議員らはペンシルベニア州の郵便投票を無効と主張し、結果認定の差し止めを求めていたものに対してであり、州最高裁の判事7人は全員一致でこれを退けた(却下した)という。
 大まかには、判事5人の多数意見として、ケリー氏らが郵便投票の手続き確定から1年、投票日からも数週間が経過した時になって訴えを起こしたのはあまりにも遅すぎると指摘した上、同氏らがこの線を残して訴状を書き直して再度訴えることもできないとの判断を示したという。
 
 
 それに、憲法修正第12条にある、「過半数に達した者がいないときは、下院は直ちに無記名投票により、大統領としての得票者一覧表の中の3 名を超えない上位得票者の中から、大統領を選出しなければならない」との規定との関連も、取り沙汰されている。
 しかも、そのような仮定の下では、人口が多い州も少ない州も同じレベルで扱われる建前となっている。そこで「もしそこで選挙人が決められなかったら、下院で投票」というのでは、なんのために選挙を行ったのか、わからなくなってしまうのではないか。この場合は、時代錯誤も甚だしいのと考えられよう。
 ちなみに、人口が最小なのは、ワイオミング州で578,759人、最大なのはカリフォルニア州の39,512,223人とされ(202011.8に当該サイトにアクセス)となっている。
 
 
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『連邦議会での選挙結果確定(2021年1月6日)』 
 
 そして迎えた、年が改まっての1月6日には、連邦議会において、ルール(注)に則り、同選挙結果を確定する手続きが進行していた。
 
(注)
 
 憲法修正第12条にはこうある。
 
「上院議長は、上院議員および下院議員の前で、すべての認証書を開封したの後、投票を数える。大統領として最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が大統領となる。」
 ちなみに、この開票結果を認めない権限は、上院議長に付与されていない。 それというのは、一部の州政府が選挙人団の投票結果を連邦政府に送付しなかった事態が起きたことがあり、それを受けて制定された1887年の選挙人団法は、選挙人の投票結果を検討する権限を連邦議会に与えている。
 
 
 その途中、群衆が大挙して議事堂に乱入した。トランプ大統領の「議事堂に向かおう。そして、勇敢な議員たちを励まそう」との呼び掛けに応じた同大統領の支持者が踏み込み、一時的とはいえ、議場その他を占拠するに至る。
 前代未聞の出来事に違いない、議員らは避難し、難をまぬがれたが、議事は中断、再開されたのは、警察や州兵が群衆を排除してからである。
 議員らは、もはやほとんどが憲法の側に立ち、それが定める手続きを進めることとし、バイデン氏を次期大統領に選出した。
 この事件による一連の混乱により、5人の死者(暴動参加者および警察の双方で)が出たほか、逮捕者も多数に上る見込み。
 
(ここで参考情報として)
 
○1月6日午後4時過ぎの演説で、バイデン次期大統領は、「この国の民主主義が前例のない攻撃を受けている」という。
○バイデン氏は、また、「これは異議申し立てではない。混沌で、ほとんど反乱だ。直ちに終わらせなくてはならない」「議事堂への攻撃は抗議ではない、反逆だ」「本当にショックを受けて、悲しんでいる」「トランプ大統領に呼びかける。直ちにテレビの全国放送に出て、憲法を守るという自分の誓いを果たし、この占拠を終わらせるよう強く要求してもらいたい」などの主張を行う。
 トランプ大統領も同じ頃、ホワイトハウスで録画した演説動画をメディアに載せる。いわく、自分が勝った選挙をこれまで通り「盗まれた」としながらも、自分の支持者に向けては「もう家に帰って。平和が必要だ。法と秩序が必要だ。選挙は奪われたが、もう家に帰って」などとなだめる言葉も伝わる。

 なお、この米議会占拠をめぐる主な動きを時系列でみると、おおむね次の通り(いずれも現地時間)。

 ○1月6日、大統領選挙結果確定のための上下両院議会(上下両院合同会議)を開催。
○正午過ぎ、トランプ大統領が、負けを認めず、議事堂へ行くよう参集した支持者に演説を行う。自身は、ホワイトハウスに戻る。
○午後2時頃、支持者らの一部が暴徒化し、警備を破って議事堂に乱入。議事は中断、一部議員らは避難。
○午後2時半頃、ワシントンで午後6時以降の外出禁止令が出される。
○午後2時38分、トランプ大統領が、ツイッターで彼らに対して「平和的に」と伝える。乱入をテレビで知っても直ちに動こうとしなかったのが、周囲に沈静化へ向けての行動を促されたという。
○午後3時頃、支持者1000人以上が議事堂の包囲を続けていた模様。
○午後4時40分、トランプ大統領が、支持者に「家へ帰ろう」とビデオメッセージを投稿。
○午後5時50分、警察らが、暴徒を議事堂から追い出す、乱入から約4時間が経過。
○午後11時10分、混乱に際して4人が死亡と警察が発表。後、死亡者は5人と伝わる。
○1月7日午前3時40分頃、上下両院議会(上下両院合同会議)において、大統領選挙でのバイデン氏の勝利を確認。
 
 1月7日夜になってのトランプ大統領は、投稿凍結が解除されたツイッターに載せた2分半の動画に載せた、その中での弁には、こうあるという。
○1月20日でのバイデン政権への移行については、「円滑で整然とした政権移行」を行う。
○「議会は選挙結果を確認した。新政権は1月20日に発足する。私の焦点は、円滑で整然とした政権移行を確実に行うことにある。今は癒やしと和解の時だ。」
○6日のトランプ大統領支持者による連邦議会議事堂への乱入事件
については、「私はほかのすべての米国人と同様に、暴力、無法、大混乱に強く憤った。」
○乱入事件を起こした支持者たちに対しては、「あなたたちは我々の国を代表していない。法律を破った者たちへ、あなたたちは代償を支払うことになるだろう。」
○「素晴らしい私の支持者たちが失望していることは分かっている。だが、われわれの旅が始まったばかりであることも知ってほしい。」
 
 トランプ氏としては、民主党などから。この事件を煽ったのはトランプ大統領だとして大統領罷免を定めた憲法修正25条第4項(注)の適用を求める声も出ていることから、急遽大統領権力の平和的移行に態度をあ改めたものと見られる。
 
 (注)なお、前記に紹介した憲法修正25条4節の規定は、次の邦訳引用の通り。

 「副大統領および行政各部の長官の過半数または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないという文書による申し立てを送付する時には、副大統領は直ちに大統領代理として、大統領職の権限と義務を遂行するものとする。
 その後、大統領が上院の臨時議長および下院議長に対し、不能が存在しないという文書による申し立てを送付する時には、大統領はその職務上の権限と義務を再び遂行する。ただし副大統領および行政各部の長官の過半数、または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務の遂行ができないという文書による申し立てを4日以内に送付する時は、この限りでない。
 この場合、連邦議会は、開会中でない時には、48時間以内にその目的のために会議を招集し、問題を決定する。もし、連邦議会が後者の文書による申し立てを受理してから21日以内に、または議会が開会中でない時は会議招集の要求があってから21日以内に、両議院の3分の2の投票により、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないと決定する場合は、副大統領が大統領代理としてその職務を継続する。その反対の場合には、大統領はその職務上の権限と義務を再び行うものとする。」(インターネット配信のサイト「ウィキペディア」から引用)
 
 

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『連邦議会での選挙結果確定(2021年1月6日)からの展開』前大統領弾劾裁判へ
 

 2021年1月13日のアメリカ下院は、トランプ大統領の支持者らが連邦議会議事堂を一時占拠した事件をトランプ氏が扇動したとして弾劾訴追する決議案を、それは野党・民主党が11日に提出していたのを、賛成232、反対197で賛成可決した。
 党派別では、下院で多数派の民主党は全議員が賛成し、下院共和党ナンバー3のリズ・チェイニー議員ら10人の共和党議員も賛成した。
退任を1週間後に控えるトランプ氏が、6日に起きた事件からわずか1週間後に弾劾訴追される、しかも、米大統領に対する弾劾訴追は史上4度目で、任期中に2度にわたって弾劾訴追された大統領はトランプ氏が初めてとなるという異例の事態となった。なお、トランプ氏が2019年に弾劾訴追されたときは、共和党議員の賛成はなかった。


(続く)
 
 
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