新176『岡山の今昔』矢掛町(小田郡)

2021-12-26 21:58:25 | Weblog
176『岡山の今昔』矢掛町(小田郡)

 矢掛町(やかけちょう)は、岡山県の南西部に位置する。小田川とその支流である美山川流域に開けた盆地をなしている。
 年間の平均気温は14.3℃であり、年間を通じて雨は多くなく、冬の雪もほとんど降らず、温暖な気候というものの、2018年7月の豪雨により、新たな認識が必要なのではないか。
 「「僕らは隠れ被災者みたいなものだ」。西日本豪雨に見舞われた矢掛町では、そんな声が聞かれる。50人以上が犠牲になった倉敷市真備町地区に隣接。直接死はゼロだが住宅375戸が被害を受け、住民は「一帯が海」のようになった地域を必死に逃げた。
 5月末。床板が抜けたままの家や、なぎ倒された木々が目につく。矢掛町を流れる小田川では豪雨で堤防が決壊した。」(毎日新聞、2019年6月22日付け)
 県立矢掛高校の生徒のうち、県内で最も多い約20%、5人に1人が被災し、避難生活を余儀なくされたらしい。

 交通の便利は、かなり良い。町の東西を国道486号と鉄道井原線が走る。また、山陽自動車道の笠岡・鴨方・玉島インターチェンジへは約15~20分で接続できるとのこと。
 建物や通りといつた文化面でいうと、かつての本陣が、江戸時代、往時のかなりの程度の町並みが保存されている。圧巻なのは、「矢掛の町並みでしょう」と誰もが笑顔を向けてくれるのだとか。

 その中でも圧巻なのは、山陽道に入って18番目の矢掛の宿場には、里旧矢掛本陣石井家住宅と同脇本陣髙草家住宅といった、国の重要文化財指定(1969)の建築物がある。両方とも、江戸時代中に建てられた、その往時を現代に伝えている。石井家住宅からいうと、裏門・西蔵・酒蔵などを除き、本陣施設としての御成門・玄関・御座敷をはじめ主屋の主要建物は江戸時代後期(天保年間〜安政年間)にかけて再建されたもの。屋敷地の間口は20間(約36メートル)、奥行50間(約90メートル)、面積にすると1000坪(約3200平方メートル)だとされ、そこに十数棟の建物が建っている。
 次いでの脇本陣髙草家だが、本陣から本陣通りを東へおよそ300メートルのところに構える。こちらは、大名に次ぐ家老などが宿泊していたという。明治初年に移築された表門のほかは、建物、敷地とも19世紀初めに整えられた頃の状況をよく保っているとの評価を博している。こちらの保存状態は極めて良くて、約600坪(約200平方メートル)の敷地には、主屋をはじめ蔵座敷、内倉などの建物を配置している。
 さても、両建築物ともに参勤交代で使われる街道に面し、入母屋(いりもや)の母屋(おもや)の広目の間口をくぐって中を進むうちには、奥行きが遥かに色々あって、ネットにて何万かの写真に巡り会うのから察するところ、さまざまな手の行き届いた建物群が現れてくるのだが。それにしてもこの商売、大した羽振りであったように納得した。

 次に紹介するのは、2021年3月、矢掛町中心部の国道486号沿いに、県内17番目の道の駅(第2セクター)として賑々(にぎにき)しくオープンした、「山陽道やかげ宿」だ。およそのアプローチだが、井原(きばら)鉄道の矢掛駅から徒歩約10分。JR新倉敷駅から車で約20分。それと、自動車で山陽自動車道鴨方インターチェンジから約15分の、矢掛町の商店街も近い、ほぼ町の中心部といったところか。
 写真を拝見すると、がっしりした鉄骨2階段建(まるで帽子のような3階と)が通に面して幅広で鎮座している感じだ。黒を基調としているのは、同国道沿いに残る江戸時代からの本陣、脇本陣の醸し出す雰囲気に似せたものだろうか、間口が広目にとられている。
 駅開設にねらいとしては、矢掛の町探検にあたっての玄関口にして、そのため案内フロントを設けてある。訪問者を温かく迎え、その客に古くからの町家や洋風建築が並ぶ矢掛商店街(東西約1キロメートル)とその周辺を巡って買い物、食事などを楽しんでもらおうとしたもの。そのためか、道の駅としては珍しく、レストランや買い物できる施設がない。加えるに、同商店街は同年2月に電線の地中付設化を終え、古民家を改装した観光案内施設「矢掛ビジターセンター問屋」もオープンしたという。

 この辺りにおいて、江戸情緒残る旧宿場町の雰囲気をもり立てることができれば、同商店街が2020年末に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されたのと合わせ、集客力のアップが期待できるというもの、とにかく頑張ってほしいものだ。

  それら以外にも、町木の「赤松」の梁を活かした、郷土美術館が有名だ。高さ16メートルの水見やぐらがシンボルだ。展示室に入ると、矢掛町の名誉町民である書家の田中塊堂(書家)と、洋画家の佐藤一章の作品が中心となって迎えてくれるとのこと。

(続く)

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