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医療における看護についての雑感(2)

2005-12-10 10:01:09 | 折々の随想
先週は、看護師のいわゆるバーンアウトについて考え、それを測る物差しとしての離職率の数字を眺めてみました。結論は一般の職業と差がないということでした。そして看護師としてのキャリアパスと職業のあり方に、10年経ったら一人前といわれるこの職業の隠れた問題があるのではないか、というのが前回の話でした。

そこで、今日は看護師という仕事について考えるために、いったい世の中はどのような仕事のカテゴリーから成り立っているのかをまとめて見たいと思います。

1.いつでも代替え可能な仕事:

 いわゆるフリーターなどの大多数がついている仕事です。決められたマニュアル通りに、いかに素早く正確に効率よく仕事を行うかだけが期待される仕事です。ITやロボットなどへの代替えが効くので、将来性は低く従って給料も安いのが特徴。看護師も昔は、医師の命令に忠実に動くだけが期待された女中奉公のような仕事だったこともあったようです。

2.社会的な諸機能を担ったり修復に従じる仕事:

 技術や技能が要求される現代の多くの仕事がこの仕事です。何も知識人の仕事という訳ではありません。大工さんや料理人からセールス、アーティストなどに至る幅広い職業がこの仕事に分類されます。看護師も主として医療の機能を担いながら「人間の修復」に、医師とその他のコメディカルと呼ばれる医療従事者と一緒に行っております。

3.調整や統御が主たる仕事:

 公的なサービスを提供している警察、司法、金融などの管理・統括的な仕事です。通常は、法律に基づきその枠組みの中で仕事を行います。そして、公的サービスを組織化して、その運用のシステムも作りそれらの調整と統御を行います。今話題の構造設計書偽造問題における検査機関はまさにこの仕事です。調整と統御の程度は、時の政治権力、官僚機構により法律という一見明瞭ですが曖昧な文書により規定されます。そのため、それをすり抜け甘い汁を吸おうとする勢力が必ず現れます。情報開示が1つの有効な「処方箋」ですが、社会主義国や伝統的官僚主義企業ほどこの点が弱いため、より厳しい「副作用」に襲われるのが特徴です。医療も薬の処方や診療報酬制度などに関係する数々の仕事がこの範疇での仕事と言えます。そのため、基本的に国家資格がこの種の仕事には与えられております。

4.人々を引き寄せる象徴的な仕事:

 聞き慣れない仕事ですが、社会的な価値(政治、経済、教育、宗教、軍事などにおける)を表象し、人格化する機能を果たすとともに、象徴(シンボル)を作り上げる仕事です。わかりやすいのは宗教家ですね。今の教育家の多くはシンボル(何を生徒に提供するのか?)が何かが分かっていないようです。医師(看護師も)は、医学と病気を引き合わせ、「安心」というシンボルを提供しているとも言えます。単に修復するだけの仕事なら、自動診断・手術・介護機などを作れば間に合うこととなります。

5.相互交流によって成り立つ仕事:

 政治活動家は選挙の際はもとより、当選してからも人々との相互交流なくして仕事はできません。医学でも臨床心理分野は最も患者との交流がないと成り立たない仕事と言えます。教育者はいわずもがなです。最近多くなったお笑いタレントも、会場の観客と相互交流する能力(タレント)が必須です。企業の苦情窓口担当者、フライトアテンダント、ジャーナリストなども、相手との「交流」なくして成り立たない仕事であり、別名「感情労働」と言われることもあります。考えてみれば主婦という「職業」もこの仕事に属する訳です。そこを理解しないで、1の仕事だと思ったり、亭主を都合良く管理するための3の仕事だと誤解するところが、この世に「離婚」という不幸が多発する理由の1つかもしれません。

看護師の仕事は、上記の1、2、4、5の仕事にかかわっていることがお分かりでしょう。では3の仕事は関係がないのかというと、実は、これからの看護師に大いに関係することなのです。

バーンアウトがなぜ起こるか。これは実は、看護師が上記の全ての仕事の範疇を担わないと、その本来の仕事を遂行できないにもかかわらず(こうした意識は未だ一般的ではありません。)、一方では、医療や看護の最先端の技術の追求のため、いわゆる「分業」と「専門化」が医療現場で起きていることが、その背景としてあるのではないか、というのが筆者の考えです。

長くなると退屈するでしょうから、今週はこのあたりで止めておきます。実は、上記の仕事の分類方法は、ジャック・アタリという人の本から示唆をうけております。もっと別の分類方法があるのではないかと、筆者も頭を少々ひねってみましたが駄目でした。多少、現代風にアレンジする程度でした。それほど、この仕事の分類は本質をついているようです。世の中には、現実に適用可能な素晴らしい考え方・理論を作る人がおります。そうした人の成果を使わない手はありません。

来週は、この仕事の分類をとっかかりにして、看護師のバーンアウトの問題を更に考えていきたいと思います。
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