白隠和尚のブログ

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映画 [たそがれ清兵衛] NHK

2018-06-27 10:32:49 | 映画の感想

これまで藤沢周平の小説は数多く映像化されてきたが、
この山田洋次作品が傑出していると思う。
彼が初めて手掛けた時代劇で自ら脚本にも名を連ねているので
セリフの歯切れ良さとテンポに山田洋次監督が伝わってくる。

物語は下級武士の日常を淡々と描きながら武家社会の不条理を映像化している。
山田映画に出演する俳優は皆さん名演だ。
その理由は単純では無さそうだが、
山田洋次監督は役者を意のままに動かすことの出来る数少ない人であるという事であろう。
タレントはメディアによって作られた人気を実力と錯覚し勝ちであり、
それに乗ってテレビドラマの粗製乱造を助長している。

主人公の[清兵衛]
(暮らしが貧しく城が引けるたそがれ時には真っ直ぐ家に戻るからこの渾名が付いた)
がまことに名演だ。
物静かで感情を面に表すことをせず、眼差しは力強く表情豊かである。
まだある。侍らしく腰に力を込めて歩く姿、
この姿勢こそが時代劇に登場する役者に肝要。竹刀を刀に見せられるか否かの分かれ目である。

私が最も感銘を受けた場面は
祿高を増やす事を条件に藩内の謀反者を成敗せよと家老から命じられるシーンだ。
清兵衛は何の遺恨もない同輩との決闘を承諾すべきか・・・、
定点カメラの前で清兵衛は10数秒思案するのだが、
その進退極まった男の表情は見事としか言いようがない。

芝居で役を一言も言葉を発せず演技することは至難のことである。
役者を目指すものはこれを修練して漸くタレントから俳優に脱皮する。
力み返り大声を張り上げ、
過剰な涙を流すことを演技と心得ているうちはまだまだ、
真田広之はその陷穽を避けて見事である。

過日、東京葛飾にある[山田洋次記念館](渥美清記念館の向かい)を
娘と共に訪れた。曾て監督が制作した映画の小道具が多数並べてあったが、
何れも意外に質素なもので山田洋次監督の飾らない人柄が伝わってくるようだった。


本日も平穏なり


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2 コメント

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おはようございます。 (トルク)
2018-06-28 02:22:04
たそがれ清兵衛、かっこいいですね。私は殆ど映画やドラマは見ないのですが、寅さんを始めとして、数々の山田監督の名作のさわりを見て、山田監督ならではの、人の心の動きに感銘します。37年前、私の通う短大に、山田監督が公演会にいらっしゃいました。(もち、無料)あの頃は、そんなにすごい人とはつゆ知らず、講演会に行かなかったことを後悔しております。一度DVDをレンタルして、1日山田監督三昧も良いですね。
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Re:おはようございます。 (maria0022)
2018-06-28 05:44:48
おはようございます。たそがれ清兵衛の真田広之が本当すばらしい。私はあなたと同様テレビも映画も見ないですが、山田洋次監督だけは別です。
日本人監督の知性と教養の幅が狭くて低い。メディアはさらに掬いがたしそれに気づかん観客もですが、・・だから観客の心揺さぶる映画がなかなか産まれない。私は青春に演劇をかじり舞台に上がったこともあるのでどうしても辛口になって子供に睨まれます。でも渥美清は日本の役者5本の指に入るね。彼の計算され尽くした演技をDVDでご覧あれ。
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