豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

“怒りの葡萄”

2007年10月16日 | 映画
 “怒りの葡萄”を観た。ギックリ腰のときに観るには、かなりヘビーな内容である。

 ジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ主演。
 20世紀初頭(なのだろうか?)の、アメリカ中西部の農村の荒廃(というよりも、都市資本による農村の収奪)と、それによって土地を奪われた農民の流浪を描いた作品である。
 オクラホマで小作農を営む主人公一家は、資本家に土地を奪われ、なけなしの金で買ったトラックに一家10人と家財道具を積み込んで、カリフォルニアに向かう。葡萄摘みの仕事があると騙されての出発である。

 保安官は、資本家に買収されていて、立ち退き屋のならず者の言いなり、約束の賃金が支払われないことに文句を言った労働者は“アカ”呼ばわりされて、これまた経営者に雇われたならず者に殺されてしまう。

 まるで、現在中国で進行している都市開発をめぐる強制立ち退き劇を見ているようである。中国その他の国の人権弾圧を糾弾するアメリカも、100年前はこんなだったのである。
 ジョン・フォードは今日でいえばマイケル・ムーアである。

 仲間を守ろうとしてならず者を殺してしまい、追われる身になった主人公のヘンリー・フォンダが別れ際に母親に向かって語る言葉、
 --すべての人間はどこかでつながっている。闇の中にも僕はいるし、子どもたちが食事にありついて喜んでいるときは子ども達の中に僕はいる--
 は、“誰がために鐘は鳴る”の冒頭のジョン・ダンの詩と同じである。
 
 そんな気持ちになれた時代だったのだ。この映画に描かれた暗黒時代のカリフォルニアと、現代とどちらがよい時代なのだろうか。

(* 写真は、映画“怒りの葡萄”の1シーン。ルート66を走るジョード一家のトラック。)

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