先月MAKIKYUが和歌山県の有田川町を訪れた際には、往路はJR紀勢本線の藤並駅から、先日取り上げた有田川町観光施設巡回バス(無料)を利用したのですが、有田川町・金屋口からの復路は丁度良い時間に観光施設巡回バスの便がない事もあり、有田鉄道の路線バス(金屋口~藤並間320円)に乗車しましたので、今日はこのバスに関して取り上げたいと思います。
藤並~金屋口間はかつて有田鉄道が鉄道を走らせていた事でも知られており、MAKIKYUは残念ながらこの路線には乗車機会がないまま廃線となってしまいましたが、末期は休日全列車運休になると共に、運行本数も極めて限られていた事でも有名でした。
(ただ利便性を確保するために定期券類などは両者共通化し、鉄道・バスの相互乗車も可能になっていた様ですので、有鉄自身で公共交通としての役割は充分に果たしており、JR某社のローカル線区の様な代行輸送なしの特定日運休という惨状でなかった事は評価すべき点です)
そのため現在藤並~金屋口間を運行する有田鉄道の路線バスは、有田鉄道線が健在だった時代から、鉄道を補完していた程ですので、かつて存在していた鉄道線の代替も果たしています。
鉄道線の代替バスともなれば、地方でもそこそこの需要が存在する路線という印象が強いですが、有田鉄道の路線バスは大型はおろか、中型すら見かけない程で、藤並~金屋口間に限れば道路条件も極端に劣悪ではないのですが、見かけるバスはマイクロバスばかりで、鉄道線の代替バスらしからぬ印象を受けたものでした。
MAKIKYUが乗車したバスも、有田鉄道では主力を占める三菱ふそう製のマイクロバス(ROSA)で、緑と白の装いの車両がやって来ましたが、路線バスよりも自家用で使われる事が多いROSAとはいえ、前面上部には行先幕を掲げ、側面にもサボを掲出(JR藤並と言う表記は関西らしいですが、JR部分だけ青色というのもポイントです)している辺りは、ROSAでも路線バスである事を強く実感させられます。
また同種の塗り分けでオレンジ色や水色の同形車両も存在しており、どの様な基準で色分けしているのかも気になる所ですが、こちらは高速道路を経由して和歌山市駅まで足を伸ばす路線に充当されている姿も目撃しています。
この手の車両が高速道路を走る片道1時間以上の一般路線に用いられ、しかも大手私鉄のターミナル駅に顔を出すというのは極めて異色ですので、本数が少なく乗り難い路線とはいえ、機会があればこの路線への乗車も試してみたいものです。
車内に足を踏み入れると、ROSAだけあって路線バスよりは送迎車の様な雰囲気が強いですが、整理券発行機や自動両替装置付運賃箱、運賃表示器などの各種ワンマン機器が並ぶ姿は、外観の行先幕などと共に路線バスという事を実感させられ、その中でもMAKIKYUが乗車した車両の運賃表示器は比較的最近普及が進むLCDモニターとなっており、運賃区数が多い事もあって20区分ずつに分けて表示していたのが特徴的でした。
バスが走り出すと路線バスらしく、観光施設巡回バスにはない音声合成装置による各停留所名の案内なども行われ、この案内放送も関西では良く聞くもののそれ以外では…という如何にも関西圏を感じさせる放送というのも好感を感じたものです。
有田川町への公共輸送は観光施設巡回バス・路線バス共に有田鉄道が運行を行っており、後者は区間毎に所定の運賃が必要となりますが、藤並~金屋口(鉄道交流館)間などでは、観光施設巡回バスが運行していない時間帯の移動選択肢が広がると共に、金屋口から高速道路を経由して和歌山市駅へ至る路線や、山間部へ向かう路線なども興味深いものです。
また藤並~金屋口間の路線は土地柄もあって決して至便とは言い難いものの、有田鉄道の路線バスでは最も容易に乗車できる区間で、観光施設巡回バスとの乗り比べや、有田鉄道線の面影を求めながらの乗車も面白いかと思います。
「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方も有田川町を訪れる機会がありましたら、是非有田鉄道の路線バスに乗車してみては如何でしょうか?