最近首都圏の各バス事業者で、現在1都3県の路線バスで幅広く利用できる磁気式のプリペイドカード「バス共通カード」の販売及び利用の終了が相次いで告知され、昨日付けでHPや車内ポスターなどでの告知を行った事業者が多数存在しています。
(一部事業者ではそれ以前から告知しており、中には京成バスの様に先月に告知を行っている事業者も存在します)
MAKIKYUも昨日各者HPをはじめ、横浜市内を運行している神奈中バス車内などでも告知を目撃していますが、その告知内容は来年(2010年)春にバス共通カードの販売を終了(大半の事業者は3月31日に販売終了予定ですが、東武バスグループなど一部販売終了予定日が異なる事業者も存在します)し、同年7月末限りでバス共通カード取り扱い各事業者での利用を終了、以降5年間に渡って無手数料・利用金額割合に応じたカード残額の払い戻しを行うというものです。
(バス共通カード販売終了後も、7月末までの利用可能期間内の払い戻しは、プレミア分を除いた残額から手数料を差し引いた金額になりますので要注意です)
ICカード導入事業者における磁気バスカードの販売・利用終了は、近年国内各地で見受けられ、最近ではバス業界国内最大手の西日本鉄道(西鉄)グループのバスカード・よかネットカード発売停止(利用は来年3月31日まで・よかネットはバスでは4月以降利用不可能なものの、4月以降も鉄道での乗車券購入等で利用可能)などが代表例です。
首都圏近郊でも富士急グループ<共通>バスカード(この<共通>は富士急グループ内の富士急山梨バス・富士急静岡バスなどを指し示し、富士急グループ以外では利用不可でしたが、バス共通カードが利用不可能な山梨・静岡県内の富士急グループ路線バス利用時には重宝したものでした)の利用終了などがあります。
ICカードと磁気カードの並存状態では、車載のカード読み取り機器や営業所でのデータ処理装置の維持コストが大きい事などを考えると、磁気カードの廃止&ICカードへの一本化は時代の流れといえ、日本国内における磁気バスカードで、利用者数や取扱車両数がダントツの1位となっているバス共通カードの廃止も、いつ告知されるのか気になっていたものでした。
磁気・IC両カードの体制を維持するために運賃の値上げを行う位ならば、ICカード利用可能エリアが拡大し、既存磁気カードの利用可能エリアをカバー出来る様になれば、ICカードへの一本化が妥当なのは言うまでもない事で、これに伴って現在では殆ど利用がない自社専用バスカード(神奈中・京急など)の利用も同時に廃止するのは当然と言えます。
(ただ関東バスの様に、バス共通カードとは異なるメリットがあるDAYカードを廃止し、おまけに磁気カード機器使用停止と便乗して紙製回数券まで発売停止する事例もあり、これは感心できません)
しかしながら今回のバス共通カード廃止に関しては、廃止理由として表向きは「PASMO/Suica(以下PASMOなどと記します)の利用が順調に増大し、バス共通カードからの移行が進んで…」などとは謳っているものの、現状では鉄道利用のためにPASMOなどを利用する乗客が、別個にバス共通カードを路線バス利用のために使用している事例(MAKIKYUもその一人です)が多く、利用の増大はむしろ現金利用客のPASMOなどへの移行が進んでいる方が遥かに多いのでは…と感じます。
バス共通カードの利用が今でも多いのは、5000円券(5850円分利用可能)の割引率が高い事が挙げられ、カードを取り出して読み取り機器に通す手間があるとは言え、積算ポイントが月毎に精算されるなど、余り有り難味を感じない現状のPASMOなどを用いた際の特典サービス「バス特」(バス利用特典サービス)より割引率の面で有利になっています。
そのためPASMOなどでのバス運賃精算時には東京都交通局(都営バス)の乗継割引(この特典があるために、MAKIKYUも都営バス利用時はPASMOを使う事もあります)を除くと、バス共通カード取扱車においては、PASMOなどを利用する事による運賃面でのバス共通カード5000円券を上回るメリットが殆どありません。
バス共通カードの販売が概ね終了となる4月1日以降は、「バス特」のチケット付与率が若干向上され、極一部のケースで5000円のバス共通カードを利用するより得(殆どの場合は損です)になりますので、西鉄の様に極一部の例外を除いて磁気バスカードよりICカード(nimoca)利用が大幅に不利な状況(それでもポイント付与に加え、西鉄バスでは乗継割引などが存在しますので、現金利用よりは有利ですが…)などに比べれば、まだマシとも言えます。
とはいえ現状のMAKIKYUのバス共通カード利用状況(特定路線を高頻度で利用する事はなく、割引率の高い5000円券を購入して様々な事業者を利用し、一枚を概ね3ヶ月程度で使い切ります)では大損で、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中にも、同感と感じる方は少なくないと思います。
ICカードへの一本化で機器維持コストに加え、カード発行費用(使い捨ての磁気カードは一枚につき数十円程度の作成費用がかかりますが、ICカードではチャージして繰り返し利用できる上に、割高なカード費用は基本的に利用者からデポジット(預かり金)として領収しています)なども削減でき、ICカードへの一本化は初期投資は嵩むものの、長期的に見ればコスト的にも有利ですので、今回のバス共通カード廃止はICカード化を口実とした制度改悪&便乗値上げと言っても過言ではありません。
PASMOの発行事業者である株式会社パスモは、機械にタッチするだけの便利さや鉄道・バス・物販(電子マネー)での相互利用が可能な事を前面に打ち出すと共に、路線バスでの「バス特」が非常に有利であるかの様に錯覚させる広告などを相次いで告知していますが、乗継割引が存在する都営を除くと、バス共通カード取扱車を利用する殆どのケースでは、5000円のバス共通カードに比べて不利な事は告知しておらず、利用者に優良誤認の印象を与えていると言っても過言ではありません。
バス事業者の運営が厳しく、止む無く割引率の切り下げを行うのであれば、その旨を告知して旅客の理解を求めるべきで、現状のバス共通カード利用より旅客に不利益な事を告知せず、タッチするだけの便利を強調し、まして「バス特」が非常にお得であるかの様に告知して今後はPASMOをご利用下さいなどと案内するのは論外です。
それでもバス共通カードの割引率と、PASMOなどの便利さという両者の選択肢が存在する状況ならまだしも、問題点の多い「バス特」の制度を若干手直ししただけでバス共通カードを廃止するのは暴挙と言え、株式会社パスモには首都圏路線バスの利用客の一人として、苦情の申し入れをしたいと思った程です。
しかし株式会社パスモHPのお問い合わせ項目には、同社の問い合わせ番号やメールアドレスなどの標記がなく、「PASMOに関するお問い合わせは、PASMO取り扱い事業者の駅・バス営業所などにおたずねください。」と出ており、各運行事業者へのリンクを表示して問い合わせる様に仕向けているのは呆れた限りです。
首都圏における交通系ICカードも、先月訪問した隣国・韓国では随分便利で割安感を感じ、韓国の首都・Seoulとその近郊で通用するT-moneyでは現金利用時より割安なICカード利用運賃を設定し、地下鉄・広域電鉄といった都市鉄道(KORAILをはじめ、現在韓国の首都圏では6事業者に跨って運行していますが、空港鉄道以外は路線の運行事業者に関わらず運賃制度が共通化されています)と市内バス、或いは市内バス同士を乗り継いだ際の運賃通算といった、ICカードならではの機能を駆使した非常に先進的なシステムを導入しています。
その上釜山(Busan)市内や近郊の地下鉄・市内バスとのICカード相互利用をはじめ、地方都市の市内バスでの利用対応も着実に進むなど、非常に便利な事から利用も非常に定着しており、韓国には時折旅行で訪問するだけのMAKIKYUですら、韓国における首都圏の公共交通機関利用では、他地域との間を利用する際の列車利用を除くと、殆どICカード利用という程です。
ちなみにT-moneyをはじめとする韓国の交通系ICカードは、PASMOなどより後発だから先進的なシステムが…というのではなく、PASMOの発売開始よりも以前からこの様な先進的なシステムが実現しており、MAKIKYUが初めてICカードを利用して路線バスに乗車したのも、日本国内ではなく韓国の釜山という程で、日本国内でもPASMOより導入時期が早いICカードの中で、ICカードならではの機能を駆使した魅力的な特典を備えたカードが幾つも存在します。
PASMOは後発で他都市の事例を研究し、より良いシステムを実現する余地が充分あったにも関わらず、ICカードならではの機能をサービスや利便性向上に活用していないどころか、ICカード化に便乗した改悪と言わざるを得ないのが現状で、首都圏における交通系ICカードの現状を、玄界灘を挟んだ東アジアの隣り合う2カ国間で比較した場合、日本に居住する日本人の一人であるMAKIKYUとしても、路線バス利用時の利便や特典などで日本方に軍配を上げるのは…と感じてしまうのは悲しいものです。
とはいえICカードはポイント付与率を変更する事をはじめ、特定区間・時間帯における割引運賃設定やポイント付与増大なども容易で、既に都営バスで乗継割引を実施している事などを踏まえると、同等の仕組みを他事業者が導入する事も容易な筈です。
バス共通カードからの全面移行時には、感心できないPASMOなどの状況も、ICカードの特性を生かし、その後の全体的な制度改善や、事業者毎の独自割引特典設定などに期待したいと感じたものです。
写真はバス共通カード利用終了に関する神奈中バス車内の告知案内と、来年7月限りで利用終了となるバス共通カード・神奈中バスカード・京急バスカードです。
(バスカードの画像は左側2枚がバス共通カードで、最も出回っている現行標準デザインの5000円券と、バス共通カード導入直後の時期に出回っていたデザインの1000円券です)
一般の大人運賃に対応している回数乗車券が
なくなります。
バスはそれでも一応割引制度があるものの、鉄道に至っては切符買う手間がないだけありがたく思え、という感じでしょうか。
スイカでグリーン車に乗れるというので感心したら、駅で一手間必要というコスく不便なシステムでがっかりしました。
振り返るとおっしゃるように韓国が先行していますし、香港のオクトパスに至っては97年導入とパスネットより3年も早い有様、遅くスタートした東京がこれではガッカリです。
特にバスに乗るかどうか迷う場面では「乗らない」という選択、それ以前に「迷わず乗らない方に決める」という事になりそうです。
日中・休日割引や乗継割引など今までの共通カードにない割引があれば別なんですけどね
一足先に廃止になった富士急の昼間割引カードを持っていましたが、利用終了後も払い戻しはプレミア分を差引いて・・とセコイ方式だったのが、共通カードではそうではなさそうなのは一安心ですが・・。
>回数券様
はじめまして。
国際興業に関しては、バス共通カード販売中止と共に紙製回数券の券種整理もHPで確認しましたが、比較的高額で割引率の高い券種が軒並み廃止になっている事は、余り感心できないものです。
ただ大人170円区間に対応する回数券がなくなっても、各券種を組み合わせて利用可能ですので、小額券種のセット券を都内で発売再開する事は評価できると思います。
>乗後景様
PASMO・Suicaでの鉄道利用は、首都圏では特段の需要喚起策がなくても圧倒的な利用がある事も背景にあるかと思いますが、バス利用も含め、ICならではの機能を全然活用しておらず、便利さと事業者側のコストダウンだけが際立つのは、後発にしては酷過ぎます。
(株式会社パスモの状況を見れば、こんなものだろうという所ですが…)
オートチャージでのポイント程度程度ではあんまりで、せめて東京メトロなどで導入している金額式回数券のICカード化程度は行って欲しいものです。
グリーン車への乗車システムも、オクトバス利用での香港の東鉄頭等などに比べると、一手間かかるのはご指摘の通り不便ですが、これはわざと券売機に立ち寄らせて予め準備させる→ラッシュ時の飛び入り乗車を防ぐ事もあるのかもしれません。
>きよぴ様
バス共通カードは、利用終了後の払い戻し方法こそ利用金額に応じた払い戻しで、プレミアを抜いた金額を払い戻し対象とした富士急グループ<共通>バスカードよりはマシと言えます。
しかし今回のPASMO移行は、4月以降のバス特割増で確実に損ではない事を理由に、株式会社パスモは何とか完全な改悪でないとして逃げ切る戦法を駆使していますが、今回発表されたバス特割増だけではあんまりです。
ただバス特に関しては、システム上導入各社で内容を変える事は難しいと思いますし、株式会社パスモには余り期待できませんが、現に都営バスでPASMOを利用した乗継割引が実現している事を踏まえると、システム上他社がこれに追随する事は可能なはずです。
それ以外の特典追加(昼間・土休日や特定区間の引去金額低減など)も機能的には可能なはずで、現にJRバス関東のSuica取扱車で、ICカード利用時に現金利用時より割安な金額を適用する事例がありますので、今後の各バス事業者独自の施策に期待したいものです。
今は何処の事業者もバス得を謳い込んでPASMOやSuicaの利用を促しています。本当にバス得かどうか私も試しに同じICカードで都電に何回も乗ってみた処、都電の運賃は160円の筈なのに、たったの60円だけ差し引かれた時があり、なるほどね~、と思いました。しかーし、履歴を見るとどの様に割引になっているのかが分からないのです。タッチした瞬間だけ60円と表示されてあー得したんだね~と感じても印字で残せないともなれば後々に疑わしく感じちゃうのです。その点は磁気のバス共通カードはパンチ穴で分かるので使っていても割引率が実感出来て気分がいいものです。
そこで履歴印字を出した時にでもバス得割引になっている項目だけに米印で区別して欲しいものです。そう、地下鉄を改札口出て30分以内の場合と同じ様に!私はSuicaを使って地下鉄で大回りする事にハマっていて米印が並んでたり、改札出る時に0円となっていたりすると嬉しくなってしまいます。
この記事でPASMOバス特に関しては、主にパスチケットによる割引に関して触れた内容となっていますが、割引面以外にパスチケット利用時の履歴表示に関しても課題がありますね。
(こちらは乗継割引のある都営バスや、共通カード対象外の富士急山梨バス・伊豆箱根バスやコミュニティ系などでしかPASMOで運賃を支払った事がなく、首都圏の路線バス乗車時は専らバス共通カード利用ですので、バスチケットを獲得した事がなく、この事は思いもしなかったのですが…)
またバス特は月の利用額が一定額以上にならないと得にならない上に、月毎にポイントが精算されるなど、余りお得感を感じないシステムと感じますが、時折バスチケットを獲得して割引よりは、毎回現金より割安な運賃で乗車できるシステムにでもした方が…と感じます。
(チャージ時にプレミア付きとするのは、鉄道との相互利用を考えると厳しいですので…)
あとPASMOなどは鉄道利用も含めた履歴が表示・印字できる事は確かに面白く、こちらも地下鉄の一時出場などは以前のパスネットで楽しんでいた事がありますが、今日のPASMOなどでは連絡改札通過後に改札を出場した際などに、引去額なしの利用履歴が出て来るのも面白いですね。
(小田急・京王線新宿→JR線連絡改札通過後に中央東口出場など)
私の住んでる関西地区ですが、ストアードフェアではJスルー・スルッとKANSAIと互換性無しでしたが、ICカードのICOCA・Pitapaでは互換性が図られています。ICOCAの発売と普及によりJスルーは廃止されましたが、スルッとKANSAIは現在でも発売継続中です。
スルッとKANSAIが現在も発売されているのは、Pitapa利用にはマイレージシステムがあるためクレジットカード契約が必須(対象外のものもあり)であり「敷居が高い」こと、バス会社のハウスカード(私の地元南海バスでは「なんかいバスカード」)がプレミア付で重宝されるため打ち切りにくいことが原因のようです。
いずれはシステムの併用によるコスト増加を避けるためストアードフェアは整理されICカードに一本化されると思いますが、リピート利用客に対する何らかのサービス(例えば10階乗ったら1回分の運賃はタダ)を考えるのは、人口減少社会の中で鉄道会社が生き残っていくために必須といえるでしょう。
関西では京都などで市域共通回数券(紙製)が導入されているものの、首都圏と異なり、磁気カードによる共通バスカードの導入はなく、共通利用可能な磁気カードはプレミアなしのスルッとKANSAIカード各種のみですので、仮に磁気カードが使用中止になったとしても、首都圏ほどの影響はないと思います。
また私鉄・バス各者ではプリペイド式のICカードこそ発行していないものの、JRのICOCAで代用可能ですので、仮に磁気カード利用停止&スルッとKANSAIカードが利用不可となったとしても、さほどの影響はないと思いますが、PiTaPa利用者以外のヘビーユーザー対策は必須になりますね。
現状では磁気式のスルッとKANSAIカードに対応していない奈良交通や神姫バスの様に、ICOCA/PiTaPaに対応しつつも、自社専用のプリペイド式ICカードを導入する方法が、将来的には最も有力かと思います。
ただICカードへ移行するにしても、今回の首都圏PASMO切替や西鉄Nimoca切替の様な明らかな改悪は避けて欲しいもので、ましてクレジットカード加入が前提で、土地のヘビーユーザー以外は実質的に現金乗車以外の選択嗣がなくなるPiTaPaへの全面移行だけは勘弁願いたいものです。