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近鉄16200系「青の交響曲」~私鉄版「はやとの風」とも感じる異色の特急車両

2016-09-23 | 鉄道[近畿・スルッとKANSAI加盟社局]

毎月21日は幾つかの鉄道系月刊雑誌の発売日、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中にはその内のいずれかを毎月購入、もしくは立ち読みなどで目を通している方も少なくないと思います。

幾つか刊行されている月刊誌の一つでは、最近になって更新内容が変更された近鉄一般車両のB更新(一度更新工事を施行して一定年数が経過した古参車両に対し、更なる長期使用を行うための延命修繕工事)車両に関して特集した記事もあり、この車両の車齢や更新内容などは異例とも感じます。

また狭軌(線路幅1067㎜)の南大阪線用車両の中には、一般車として更新された車両だけでなく、B更新に併せて優等用(特急)車両に改造した車両も存在しており、この車両は用途変更に併せて塗装を改めただけでなく、扉数の減少(各車4→1扉)などで外観も大きく変化、また形式名も6200系→16200系に改められるなど、近年登場しているB更新施工車の中でも、特に目立つ存在となっています。

この16200系は10日に「青の交響曲」として運行を開始したばかりで、1編成しか存在しない事から原則として週6日運転、運休日は一般特急車が代走していますが、MAKIKYUは先月に続いて今月も関西へ足を運ぶ機会があり、早速乗車できましたので取り上げたいと思います。


「青の交響曲」は名前の通り濃い青(紺色)を基調とした装いになっており、装いは往時のブルートレインを連想させる雰囲気、また「交響曲(シンフォニー)」と名乗る事もあり、始発駅での発車前には車内でクラシック楽曲が流れるなど、他の近鉄特急とは随分雰囲気の異なる車両となっています。


改造種車となる6200系は3両と4両の2種類が存在、「青の交響曲」はその中でも3両編成の車両が改造種車として選定されていますが、中間車はラウンジスペースとバーカウンター・フリースペースになっていますので、座席は両先頭車にしか設けられていません。

この座席も2+1列配置のDXシートとなっていますので、3両編成ながらも南大阪・吉野線の一般特急車2両編成よりも旅客定員数は遥かに少なく、随分贅沢な空間の使い方をした車両になっています。


DXシートとなっている両先頭車は、種車が一般車両だけに窓サイズが一致しない事を逆手に取り、元々客窓だった箇所に回転式リクライニングシートを2列、元は客扉だった所を埋めた箇所にテーブルを配したボックス配置の座席(リクライニング可・回転不可)を設置した特徴的な座席配置となっています。


座席の横幅だけでなく、前後のシートピッチもかなり広く感じられたものの、乗車時間がさほど長くない事もあってか、リクライニング角度はやや控えめとなっており、JR新幹線普通車指定席の2+2列席に近い印象を受けたものでした。

これだけの設備にも関わらず、特急料金は「しまかぜ」の様な特別列車料金設定はなく、通常のDXシート料金(さくらライナーのDXシート車と同額)となっており、しかも南大阪・吉野線内は距離比例加算もありませんので、大阪阿部野橋~吉野間を乗り通しても720円、距離比例加算となる近鉄他線区の同距離特急料金(900円)よりも安い設定ですので、豪華な客室設備の割にはお得感があります。

その事もあってか、MAKIKYUが乗車を目論んだ日は当初満席、後にキャンセルが僅かに発生して特急券(全車座席指定)を購入できた位ですが、設備と定員、改造費用や料金設定などを考えると、「青の交響曲」列車単独での収支は満席でも厳しく、私鉄一の高級特急車として知られる「しまかぜ」と同様に、車内物販や沿線誘客なども含めて何とか…というレベルなのではと感じたものでした。


また対象としている利用客の年齢層が高めである事を意識しているのか、観光列車やそれ以外の特急車両では前面展望性を高めた車両が多い中で、種車の一般車時代に比べて展望性が悪化しています。

吉野線内は単線でダイヤに制約が大きい事もあり、一般特急車と同等ダイヤでの運行で観光列車ならではの停車時間設定もありませんので、目的地まで車内でゆっくりとくつろぎたいと感じる向きには好適と感じる反面、子供連れなどで乗って楽しむという雰囲気とはやや異なるのは、難点と捉える向きもあるのでは…と感じたものでした。

ちなみに改造種車の元用途や車齢などは、JR九州が九州新幹線開業に合わせ、様子見状態で古参の一般型気動車・キハ147系を改造した特急「はやとの風」を登場させ、異色の特急列車として注目されたのと酷似しており、「はやとの風」は後に追加改造車の登場や別の同種列車が続く程のヒット作になっています。

近鉄自体でも特急として運行している列車ではありませんが、観光客向けの改装車両として既に伊勢志摩地区を走る「つどい」という前例があり、関西の他私鉄でも南海の「天空」という類似例がありますが、関西私鉄の一般車格上特急車は「青の交響曲」が関西初、大手私鉄全般を見渡しても他の同種事例は東武の「スカイツリートレイン」程度という非常に珍しい車両になっています。
(私鉄の一般車格上げ特急車に関しては、富士急6000系(元JR205系の改装車両)を有料特急車と見做し、開放扱いで普通列車にも充当していると解釈している方は別ですが…)

座席定員数の少なさ故に満席御礼の状況が続くのであれば、今後4両編成で活躍中の6200系や、性能的にはほぼ同等の6020系付随車(サ)を追加改造した4両編成での運行を検討しても…と感じたもので、毎年混雑する吉野の桜シーズンはどの様な運用を行うのかも気になる所です。

「青の交響曲」は種車が首都圏私鉄なら支線運用からも撤退するレベルの古参鋼製抵抗制御車だけに、よくここまで大規模な改造を施工したと感心すると共に、活躍が何時まで続くのかも気になる所ですが、こんな事を感じているのはMAKIKYUだけでしょうか?