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中国鉄路乗車記・D7095次(乗車日:2012年7月16日/CRH1・ボンバルディアタイプ)

2012-07-16 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

7月にMAKIKYUが中国へ足を運んだ際には、様々な種類の高速列車(CRH)に乗車していますが、CRH5・CRH3・CRH380A・CRH2Aと主なタイプに一通り乗車し、最後まで残ったのがCRH1でした。

ボンバルディアはシーメンス・アルストームと並ぶ欧州系鉄道車両製造メーカーの御三家で、欧州などで多数の車両が活躍しています。

中国国内でも地鉄車両などは、シーメンスやアルストームと並び、様々な都市で活躍している姿を見る事ができ、MAKIKYUも幾つかの都市でボンバルディアと中国メーカーの合弁製造した車両に乗車した事があります。

しかしながら高速鉄道に関しては、シーメンス(ICE→CRH3)やアルストーム(TGV・ペンドリーノ→CRH5)と日本勢(新幹線・E2系→CRH2)が世界の主流を占めており、ボンバルディアはイマイチといった状況です。


その劣勢を取り戻すかの如く、既に他国で実績のある高速列車と共に、高速鉄道の急速な発展が見込まれる中華人民共和国の高速列車用に投入された車両がCRH1です。

CRH1は欧州の近郊型車両(それでも最高200km/h程度の設計ですので、標準軌とはいえども在来線規格の車両にしては上等です)をベースにしており、車体材質もステンレス製であるなど、他のCRHシリーズ各種と比べ、異色の存在と言えます。

近郊型の2ドア車をベースにしており、扉数を各車両1箇所に減らして、その分座席を増やした設計にしていますので、奇妙な雰囲気を受ける扉位置となっています。

ドア位置は元々近郊型気動車として導入されたものの、後にムグンファ号用に格上げ改造(座席交換など)と共に扉数削減(2扉→1扉)を行った韓国鉄道(KORAIL)の9501型都市通勤型ディーゼル動車・CDC→RDC化改造車を連想させられます。

MAKIKYUがこのCRH1に乗車したのは、CRH運行開始前から中国鉄路では屈指の高頻度運転区間となっている広州(広州東)→深圳間で、MAKIKYUが広東省を訪問し、同省の2大都市間を列車で移動するのは2回目です。

以前同区間を乗車した際には動力集中方式ながらも、プッシュプル式の電気機関車と客車の固定編成ながらも、CRH以外の中国鉄路では珍しい「電車(EMU)」扱いとなっている車両に乗車し、この車両は次々とトラブル続きで使い物にならない国産EMU(中華之星・中原之星など)を登場させては停運を繰り返してきた中国鉄路にしては珍しい、EMUの成功作と言われる車両でしたが、この車両はCRH台頭後、貴陽省方面のローカル列車に転用されています。

広深間では、この車両の後継として広州・広州東~深圳間を線増し、CRH1の頻発運転を行う他に、北京~天津間・上海~南京間と共に、もう一本高速鉄道線が敷設されています。

大都市間で高速鉄道を複数併設して建設・運行に供するのは、日本では考えられない事ですが、もう一方は広州南~深圳北間を運行しており、こちらの方が所要時間は短く、広州南では武漢方面などの高速鉄道にも接続・乗り入れも行っています。

とはいえ両都市のターミナル立地が郊外で不便、本数が限られる事もあり、こちらは主に深圳から遠方への旅客向け、広州東~深圳間は主に近距離旅客向けという感があります。

MAKIKYUが広州に滞在した際には、中心部に宿泊していた事もあり、深圳へ向かう列車に乗車する際には、本数も多い広州東駅へ向かい、同駅で乗車券を買い求めて乗車したものでした。

広州東駅では需要が旺盛な広深間列車専用窓口もあり、同区間列車でも相変わらず身分証(外国人はパスポート)の提示が必要であるなど、日韓程気軽に乗車券を買えるとは言い難いものの、広深間列車の本数は頻発している事もあり近郊列車感覚、当日の乗車直前に乗車券を買い求めた場合でも、2~3本後の列車への乗車は容易な状況です。

また乗車券も現在中国鉄路では一般的な青緑色・新幹線→CRH2の絵柄が描かれた磁気券ではなく、非磁気化券に良く似たピンク色ながらも、ICタグが埋め込まれた広深鉄路専用の乗車券が用いられているのも大きな特徴ですが、この区間だけわざわざ他に類を見ない乗車券を採用するメリットは一体どれだけあるのか気になる所です。

列車別改札や、発車時間が近づかないと駅台(ホーム)に入場できないシステムなども相変わらずで、ダイヤを見ると近郊列車感覚で乗れそうな区間にも関わらず…という気がします。

そして発車時間が近づき改札を開始、ホームへ向かうと既に列車は停車しており、近郊列車感覚で列車を頻発させている区間と言う事もあるのか、輸送需要の旺盛な区間にも関わらず列車は8両、設備的な余力なども踏まえると、列車両数を増やし、そろそろ広州・深圳両都市の交通カードに対応し、列車指定なしで乗れる都市鉄道化しても…と感じる程です。

列車に乗り込むと、MAKIKYUが乗車する2等軟座は3+2列、片持ち式のクロスシートが並んでおり、背もたれには若干の傾斜が付けられています。

座席下の空間は広く確保され、背面テーブルも付いているなど、一応優等列車の体裁は整えているものの、座席の方向転換は出来ず、リクライニング機能も装備していません。

CRH2などでお馴染みの回転式リクライニングシートとは比べ物にならない劣悪品、それどころか客車列車の軟座と比べても見劣りが否めない代物で、MAKIKYUが今までに乗車した高速鉄道車両の座席では最も劣悪と感じた韓国・KTXの一般室(普通車・2等座相当)で用いている座席の方がまだマシと感じた程です。
(KTX一般室の座席はフランスが太鼓判を押したTGVタイプで方向転換不可、半数は逆向きとなりシートピッチも狭い上に、リクライニング
も座面と共に背もたれが1段階前にせり出すタイプで、現地でも非常に不評です)

元が近郊列車用車両ベース、そして使用路線も所要1時間程度の近郊列車感覚とはいえ、広深鉄路は中国大陸本土では最も物価の高いエリアを走る事もあって、ただでさえ割高な高速列車(CRH)運賃よりも更に割高な運賃を設定していますので、割に合わない設備と言っても過言ではありません。
(それでも香港のKTTや東鉄頭等などに比べれば、支払った金額に見合う対価としてはまだマシかもしれませんが…)

また座席の出来栄えだけでなく、車両全体の出来栄えもイマイチという感があり、所詮近郊型車両ベースである事に加え、大窓の両脇に
ピンを設け、下ろす際にはこのピン(2箇所)に引っ掛ける事で半閉・全閉の2段階しか調節できない粗雑な構造のブラインドなども、ボンバルディアの高速鉄道車両製造実績が乏しい事も影響しているのかもしれませんが、非常に頂けない気がします。

外観デザインも決して格好良いとは言い難く、車両導入費用や運行コストなどの面で営業的メリットが存在するのかもしれませんが、MAKIKYUが乗車したCRHシリーズ動車組車両では、最悪のワースト車両と言わざるを得ない駄作車両と感じたものです。

MAKIKYUが乗車した際には、3人がけ逆向き座席の通路側と言う、非常に有り難くないポジションに加え、車内は常に混雑して立席客の姿を散見する状況だった事も災いしているかもしれませんが、一部では「服務員からお客様ではなく華蓄扱いされる」とも言われる客車硬座のボックス席よりは幾分マシとはいえ、広深間程度ならまだ許容範囲ながら、長時間乗車は避けたい車両と感じたものです。

新幹線→CRH2と乗り比べる事で、新幹線車両の良さを再認識するのには絶好の存在かと思いますし、日本人を含めた外国人の利用も比較的多い路線と見込まれますので、この車両に乗車した事で「中国の高速鉄道は所詮…」と言った印象を持たない様に願いたいものです。

出来る事ならこの車両はD~次(動車組列車)ではなく、短距離の空調普快など格下列車での運用に鞍替えさせるか、さもなければ動車組列車にも硬座運賃の設定を行い、他車両に比べて大幅に設備が劣る分、2等軟座→硬座への等級格下げを行うなど、設備格差に見合った運賃設定を行うなど、営業面での工夫を望みたいた感じてしまったものでした。