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中国鉄路乗車記:C2213・2282次(乗車日:2012年7月11日/CRH3・ICE3タイプ)

2012-07-11 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

7月にMAKIKYUが中国へ出向いた際には、大連から入国し、上海から出国する行程だけは手配済みだったものの、急な旅行だった事もあり、それ以外の列車や宿泊は成り行き任せという状況でした。

東北から北京へ抜け、その後上海へ…という大まかな計画を立てており、7月10日の北京到着時点では、北京市内での滞在日数すら未確定と言う状況でした。

そのため北京からは直接上海へ向かう(高速鉄道開業のお陰で、この乗車券の確保は容易です)か、それとも華南(広東省・香港)方面へも足を伸ばせるかは、列車の空席状況次第と言う状況でしたが、華南方面の火車票(鉄道乗車券)手配も北京で無事に済ませる事ができ、これで華南方面へも足を運ぶ事が確定し、大まかな旅程が完成したものでした。
(中国の火車票は、基本的には出発都市で購入する事が原則となっており、他都市発着の乗車券発券もシステム的には可能なものの、係員次第では断られる事もあり、発券可能な場合でも異地票発券の手数料を請求される事があります)

華南方面への乗車券手配が済んだ事で、北京での宿泊は3泊、11・12の2日間が北京滞在となり、この間は以前MAKIKYUが北京を訪問した際に利用した事がある北京站近くの賓館(ホテル)にも空室がありましたので、この賓館を拠点に北京市内や周辺部へ足を運んだものでした。

その内11日は、北京站近くから日本では珍しいものの、北京ではありふれた存在とも言える2両連結の市内公交汽車(路線バス)に乗車し、高速鉄道が発着する大ターミナルに改装された北京南駅へ向かい、同站を視察する事にしたものでした。


日本の新幹線駅とは比べ物にならない、北京南站の大規模な設備は圧巻というほかなく、今後更に輸送需要が増える事を見越しているとはいえ、よくこれだけのものを短期間で…と感心させられ、ここまで大きく造らなくても、効率的な運行をすれば……と感じてしまい、大き過ぎて却って使い勝手が悪いと感じる面もあるものの、社会体制や国力の違い、そして中国が急速な勢いで発展している事を強く実感させられたものでした。

この巨大な北京南站を見ていると、MAKIKYUは駅舎を視察するだけでなく、高速列車に乗車も…と思い、急遽日帰りで距離も近く、列車本数も多く手配が容易な天津まで足を運ぶ事にしたもので、その際に乗車した列車がC2213次(往路)とC2282次(復路)です。

北京~天津間の高速鉄道は、両都市間のみを結ぶ目的で建設された路線と、天津から更に済南・除州・南京などを経て上海方面へ至る高速鉄道の2路線が、それぞれ複線で建設されており、高速鉄道発祥の国・日本の新幹線でも、2都市間を結ぶ路線が複数存在する事例はまだありませんので、駅設備だけでなく路線網と言う観点でも圧巻です。
(中国では他に上海~南京間と広州~深セン間でも、2都市間で2路線の高速鉄道が運行しています)

その内今回乗車したC2213次とC2282次は、北京~天津間のみを運行する高速鉄道を走る列車で、列車番号がG~次(高速動車組列車)やD~次(動車組列車)ではなく、現在北京~天津市内間を結ぶ高速列車のみが用いているC~次(城際動車組列車)となっているのが特徴です。

このC~次は、列車自体の最高速度や使用車両はG~次と大差なく、高速動車の中でも短距離のシャトル列車的存在である事が、G~次との僅かな相違と言っても過言ではない状況で、高速列車が頻発している上海~南京間(途中駅発着を含む)などでも、C~次を名乗る列車が存在しても不思議でない気がします。

ちなみに北京~天津間の高速列車に用いられる車両は、以前は新幹線E2系タイプ(CRH2)も一部列車に用いられていた様ですが、日本側が想定している設計上の最高速度を越えての運用が問題となり、同区間の運用から外されて他区間での運用に転用されていますので、現在は専らCRH3(ドイツDBのICE3タイプ)が担っており、現在は同車が最高速度300km/h強で運行しています。
(以前は350km/h程度での運行も行っていた様ですが、温州南站付近での追突事故以降に最高速度が若干引き下げられています)

そのため乗車する列車は必然的にCRH3が充当され、東アジアから外へ出た事がないMAKIKYUにとっては、初のICE3タイプ車両乗車になります。


ICE3は個人的にはデザイン的に好印象があり、書籍やネット上の画像などで取り上げられている内装なども結構良さそうな雰囲気ですので、是非一度は乗車してみたい高速列車の筆頭格で、今回の旅行でもこの車両にだけは何とかして乗車したいと思っていましたので、北京~天津間CRH日帰り旅行決行で、晴れて念願を達成する事が出来ました。

北京南站での天津行火車票購入も、日本の新幹線乗車に比べると少々面倒なものの、列車本数が頻発している区間だけあってあっさりと確保でき、期待を膨らませてホームに下りると、今まで書籍やネット上の画像などでしか姿を見た事がなかったICE3タイプの車両と初対面、実際にその姿を目にしても期待を裏切らない車両と感じたものです。

白に細い青帯を纏ったCRHシリーズ共通の装いも、新幹線E2系と共に、この車両の本家(ドイツDBのICE3)よりも見栄えするのでは…と感じる程で、壮大な駅構内ではCRH3だけでなく、CRH2など様々なタイプの高速車両が行き交う様は、はるばる北京まで足を運んだ甲斐は充分にあると感じさせるものです。


車内に足を踏み入れると、木材を多用した温もり感溢れるデッキ部分が目を引き、特徴的な形状の客ドアなどと共に、新幹線とは異なる高速列車という事を強く実感させられます。


客室に足を踏み入れると、中国の車両限界は日本の新幹線並みに大きく、ヨーロッパ規格の車両よりも幅広な事もあってか、本家ドイツDBのICE3よりも車幅が広くなっており、その関係でMAKIKYUが乗車する2等座の座席は新幹線と同様に2+3列配列、一等座も2+2列配列となっています。
(本家DBのICE3は、日本の在来線特急列車の如く2等席が2+2列配列・1等席が2+1列配列です)


そのため本家ICE3に比べると、詰め込みが利く車両(交通機関の整備が発展途上で、輸送力増強が必須の中国では重要な事です)と言えますが、中国鉄路では新幹線E2系=CRH2の回転式リクライニングシートを高く評価し、他の車型も一部を除いてこの座席を若干カスタマイズした背面テーブル付き回転式リクライニングシートを採用していますので、座席定員が多い車両ながらも、韓国KTX(フランスSNCFのTGVベース)の様な窮屈さを感じる事はありません。

CRH2のモケットまで新幹線E2系そのまま、当然ながらリクライニング機能に加え、座面スライド機能まで装備した座席(ボタン位置や色までそのまま)に比べると、座席モケットやリクライニングレバーの違いなどで、座席は少々異なる印象を受けますが、着席した時の印象は日本の新幹線や在来線特急の普通車と大差なく、2等座でも充分快適に過ごせると感じ、逆向き座席が嫌いなMAKIKYUとしては、居住性も本家DBで活躍中の車両よりも良いのでは…と推測しています。
(ごく僅かに本家ドイツDBのICE3レベルの座席を装備した車両も存在しており、こちらは座席が一方向固定座席になっている様です)

またICE3=CRH3は、客室内の内装も天井のFRPが、どことなくCRH2の本家事業者が多数導入している「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い電車」などの安物通勤型車両を連想させる雰囲気がありますが、半透明ガラスの荷棚などは、シンプルながらもデザイン・機能性の両面で優れた逸品と感じます。


車端部に設置された次駅案内などに用いるLED表示器も、表示される文字色や大きさなどの点では、日本の新幹線に比べて見劣りが否めないものの、文字表示装置部分をミラー仕上げにして、目立たない様に工夫しているのも感心させられ、日本の新幹線でこの様な工夫を施した車両が存在しても…と感じさせられます。

ただCRHシリーズ各種は、概ね客窓が広幅となっており、2席で1つの窓が割り当てられる格好となっていますので、どの席が割り当てられるかによって、外の展望をどれだけ楽しめるか格差があり、中国鉄路では現在、乗客が乗車券購入時に任意の座席を選ぶ事も出来ません。

おまけにブラインド式となっている日除けは、CRH2以外は各席毎に任意の位置で止める事が出来ない構造なのは、CRH3が内外共に完成度が高いと感じる車両だけに、少々残念なものです。
(CRH2の場合は、大窓の真ん中にブラインド用のレールがあり、大窓の片方はブラインドを全開・もう一方はブラインドを全閉といった事も可能で、多様な乗客のニーズに応えられるきめ細やかな配慮は高評価できると感じます)

この様な車内を視察していると、北京(北京南站)から120km程度離れている天津站まで、途中武清站に停車するC2213次でも30分台の所要時間はあっという間に過ぎて行きます。

天津到着後は、市内交通の視察などに出向いた後、今度は天津市内でも中心部とは40km程度離れた塘沽(Tanggu)区の塘沽站から北京への帰路に就きますが、北京~天津間のCRHは北京南~天津駅間の運行が圧倒的に多いものの、一部列車は天津を越えて塘沽まで運行しており、帰りはこの塘沽始発の列車を利用したものでした。

塘沽発着の列車は、一部が北京南~塘沽間ノンストップ運行となっているものの、MAKIKYUが乗車したC2282次など過半数の列車は武清こそ通過するとはいえ、基幹駅の天津にも停車しています。

現在天津~塘沽間は在来線を走るために、北京南~塘沽間約160kmの所要時間は概ね1時間前後、それでも北京から塘沽が随分近くなったと感じるものですが、高速列車にしてはさほど早くない部類と言えます。

おまけに塘沽站は比較的小規模な駅ながらも、夕方MAKIKYUが同駅に到着した際には、乗車券売り場の城際列車専用窓口は営業終了、自動券売機も非居住外国人旅行者で人民の身分証を所持していないMAKIKYUは利用できず、一般列車も含めた窓口はかなりの混雑という状況でした。

その上多数の乗客が並んでいるにも関わらず、空いている窓口は限られており、乗車券購入希望者が大勢並んでいる列でも、平然とカーテンを閉めて窓口閉鎖を行う係員も見受けられるなど、快適で斬新な車両が走っていても、その運行やサービスに従事する服務員は依然…と感じさせられたもので、特に塘沽站発着列車は運行本数も限られていますので、同站発着列車の利用予定が予め分かっているならば、北京南站や天津站などで事前に火車票を入手しておいた方が…と感じたものでした。

ただ検票を済ませて站台(ホーム)に入り、列車に乗り込んでしまえば快適で、闇夜を駆け抜けて北京南站までの道程もあっという間、塘沽からの乗客はさほど多くない状況でしたが、天津からは結構な数の乗客が乗り込み、車内は結構賑わっている様に感じたものでした。


塘沽站では列車に乗り込んでから発車まで時間に余裕があり、空いている事もあってか、車内の様子を存分に撮影する事も出来ましたが、8両編成で所要1時間程度のシャトル列車に用いられる車両でも、一応売店スペースは確保されており、この空間のデザインも特徴的です。


2等座の中には、中央に木製のテーブルを挟み、向かい合わせのボックス配置とした区画も設けられており、リクライニングシートが並ぶ客席ばかりの新幹線に比べると、客室設備にバリエーションがあると感じるのは、D12次乗車記で取り上げたCRH5(アルストームタイプ)と同様ですが、これに加えてCRH3は先頭車運転席背後が展望空間となっているのも特徴です。


この区画は、デザインが良く似ているJR九州の振り子式特急車とは異なり、両側共に1等座の座席が設置されており、ガラス製の仕切りで閉鎖している時もあるなど、どの乗客でも自由に入って前面展望を…とは行かないのは難点と感じます。


またCRH3にはC2213次・C2282次以外にも、その後武漢~広州南間でも乗車(G1153次・2等座)する機会があり、こちらは1000km以上の距離を4時間以上かけて走る列車でしたが、再び訪中する機会があり、CRH3に乗車する機会に恵まれるのであれば、今度は1等座にも乗車してみたいと感じたものでした。

CRH3は外観・内装共にCRHシリーズ各種の中では、かなり出来栄えが良い車両と感じ、その後最高速度380km/hでの営業運転を想定した発展型車両として、CRH380Bが登場しているのも頷けるものがあります。

この車両が登場するまでは、ICE3タイプの車両に乗車するにははるばる遠くはなれた本家ドイツや、その周辺諸国へ出向かなくては…
という状況だった事を考えると、空を飛ぶのがダメでも、SIEMENSから大量に車両や部品を購入・技術移転させて、その気になれば日本からも列車や船を乗り継いで比較的容易に訪問できる土地で、ICE3タイプの車両を多数走らせてくれた中国鉄路には「謝謝」と何度もお礼を述べたい程で、塘沽から北京への帰路に乗車した車中で売りに来たCRH3型LEDライト(10元)にも思わず手が出てしまったものでした。

ただ韓国のKORAILがKTX(フランスSNCFのTGVタイプ)を走らせたのに続き、中国鉄路がCRH3(ドイツDBのICE3タイプ)・CRH5(イタリアFSのペンドリーノタイプ)を走らせ、新幹線と異なる種類の高速列車の代表格が、どれも東アジア内で乗車できる時代がやってくるとは、20世紀の頃には考えられなかった事です。

これらの車両に皆乗車してしまい、他に都市鉄道や機関車などで欧州勢の目ぼしい車両が韓中に続々と…なると、空を飛ぶのがダメなMAKIKYUは、辛く苦しい思いをして、我慢して空を飛んでまで欧州へ…という気にはなかなかなれず、まして欧州の物価高も踏まえると、MAKIKYUは東アジアと言う近場から離れられない日々がまだまだ続きそうと感じたものです。
(シベリア鉄道やシルクロード横断など、陸路と海路の乗継移動で欧州まで足を運べるだけの時間が確保できれば話は別ですが、さすがにそこまでの余裕はそう簡単には確保できそうになく、欧州に限らず不要不急の遊びで空を飛んで各地へ出かける気にはなれませんので…)