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中国鉄路乗車記:T5325次(乗車日:2012年7月8日/RZ25Z型客車他)

2012-07-08 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

7月にMAKIKYUは5年ぶりに中華人民共和国(中国)へ足を運ぶ機会がありましたが、その際には高速鉄道(CRH)をはじめ、機関車牽引による客車列車や、都市内を走る地鉄など、様々な鉄道を利用したものでした。

その中でも中国鉄路(国鉄)の列車で、7月にMAKIKYUが中国を訪問した際に最初に乗車した列車がT5235次でした。


T5325次は遼寧省の2大都市、大連(Dalian)と瀋陽(Shenyang)を結ぶ特快列車3往復の1本で、大連站を夕方18時台に出発し、およそ4時間程で瀋陽站に到着、そして同市内にある瀋陽北站が終着となる列車で、大連~瀋陽間はノンストップ運転となりますので、現在の瀋大間では最速列車の部類に入ります。

同区間ではこの列車の他にも、快速列車や瀋陽以遠の都市まで運行する長距離列車の設定もあり、長距離列車の中には運賃の安い非空調車が充当される列車もあり、また大連站前からは瀋陽行長途汽車(高速バス)も発着していますので、所要時間や設備・運賃の面では様々な選択肢が存在します。

その中でもMAKIKYUがT5325次を選んだ理由としては、韓国・仁川(Incheon)からのフェリー(大仁フェリー)で大連に入国したMAKIKYUが、大連での滞在時間を確保しつつ、当日中に大連を離れて瀋陽か、或いは瀋陽以遠の都市へ足を運べれば…と考えていたものの、瀋陽以遠へ向かう列車は硬座(無座を含む)以外は殆ど「無」の状態だったにも関わらず、比較的乗車券の買い易いこの列車は残席が多数あったからです。


大連では港に到着後、大仁フェリーが仕立てた無料シャトルバス(他に路線バスもあります)で直接大連駅に向かい、乗車券売り場で乗車券を購入していますが、乗車券売り場は結構な行列が出来ておりかなり騒がしいものです。

幾ら東北とはいえ暑い真夏の最中、空調も入らない蒸し暑い売り場(ガラスで仕切られた服務員のいる空間は、空調が入り快適そうなのですが…)に平然と乗車券購入で旅客を並ばせ、おまけに並んでいる客がいるにも関わらず、時折勝手に窓口を平然と閉じてしまう服務員もいるなど、乗車券購入だけでもウンザリして鉄道利用はもう2度と…と感じる人間も出そうな有様は、中国へ来た事を強く実感させられ、日韓の快適さとは程遠い世界です。

この乗車券売り場では電光表示による乗車券残数の案内も行われ、これは中国語(=漢字)ですので、簡字体といえども中国語が全くダメなMAKIKYUでも容易に判読できるのですが、夕方の特快どころか昼頃の瀋陽北行特快でもまだ残席があり、他に快速(空調車・軟座なし)にも空席がある状況でした。

とはいえ乗車券売り場は結構込み合う上に、発車直前になると売り切れで希望の乗車券が購入できない、場合によっては無座すら売り切れで列車自体に乗れないという事もあり得ますので、予定が決まっている様なら早めに動くに越した事はありません。

そして行列が少しずつ前に進み、MAKIKYUが乗車券を購入する番になると、中国語会話が全く出来ないMAKIKYUは、予め用意しておいた漢字で記したメモを服務員に手渡して乗車券購入となりますが、中国では近年火車票(列車乗車券)が実名制になった事もあり、身分証の提示を要求されます。

そこで100元札と共にパスポートを渡し、ようやく乗車券が発券されるのですが、大連はまだCRHも通っておらず、自動改札機も運用していない事から、出てきたのは以前からお馴染みのピンク色地紋の非磁気化券、そして入力ミスで数字を一つ間違えたパスポート番号(中国人民の場合は、身分証番号だけでなく旅客氏名まで印字されます)が印字されている有様でした。
(大連站では没問題でしたが、CRHなどでは検票(改札)時に火車票と身分証の照合を行っている場合もありますので要注意です)

無事T5235次の火車票を入手した後は、夕方まで市内交通の視察に出向き、18時頃再び大連站に戻ってきて列車に乗車するのですが、站に足を踏み入れるとまず金属探知機等によるセキュリティチェック、そして検票口は列車毎に分かれ、発車時間が近づいてようやくホームへ…といった状況は相変わらずで、検票開始と共に待ち構えていた乗客が次々と站台(ホーム)に駆け下りていきます。


ホームに足を踏み入れると、東北地方は中国の中で比較的冷涼な気候である事や、所得水準も決して…という状況もあってか、緑色に黄帯の非空調車(通称:緑皮車)の姿が幾つも見受けられます。

中国鉄路通の方からは、「緑皮車が走っているなら、是非選んで…」という声も出そうですが、MAKIKYUが乗車する特快は白と青に赤帯の装い、そして隣に停車している快速は空調車と言う事もあって、グレーとオレンジの装いとなっており、どちらが快適な鉄道旅行を堪能できるかは、言うまでもない事です。

ホームに下りると、MAKIKYUが持っている乗車券で指定された座席は13号車とかなり後ろの方ですが、発車まで時間がありますので、一旦最前部まで足を伸ばし、牽引する機関車の撮影に出向きます。


牽引機は東北地方ではよく見かけるSS9型で、MAKIKYUが7年前に初めて中国鉄路を利用し、同区間の特快に乗車した時はSS9G型でしたので、牽引機という点では以前よりやや格落ちです。
(SS9型とSS9G型は装いこそ大きく異なるものの、スペック的には大差なく、またSS9型は東北方面以外では余り見かけない機関車ですので、決して悪くはないのですが…)

機関車の撮影を済ませた後は、連結されている客車を視察しながら13号車へと向かいますが、以前同区間の特快に乗車した時に連結されていた双層車(2階建て車両)の姿こそなく、客車の装いは特快色に統一されていますので、見た目は比較的整った印象を受けます。

しかしながら機関車の後ろに連結された客車は硬臥(3段寝台)、その後ろには硬座が連結され、8号車~13号車が軟座、そして14号車には軟臥が連結されているなど、中国にしては短距離列車だけあって食堂車の連結こそないものの、構成車種は非常に豊富なのが大きな特徴です。


特にMAKIKYUが乗車した13号車を含む6両の軟座車は、8~11号車がRZ25K、12・13号車がRZ25Zと形式が異なり、RZ25Zはやや車高が低いため、RZ25Kと隣り合う部分を見ると違いがはっきりと分かる程です。


RZ25Kの中には「RZ25K 111111」という凄い番号の客車も連結されており、これは狙っても簡単に捕獲できる車両ではないと思いますので、注目の存在と言えます。


13号車の指定座席へ向かうと既に先客が居り、座席を変わって欲しいという仕草と共に、後ろの座席が指定された乗車券を見せられ、MAKIKYUは一つ後ろの座席に移ったのですが、どちらの座席も進行方向向きとはいえ、指定座席は窓柱に邪魔されて車窓が楽しめない上に通路側、それに対し後ろの座席は車端部になるものの、車窓を存分に堪能できる窓側でしたので、こちらも当たり席に変えてもらってラッキーという心境です。


座席に腰掛けると程なく列車は発車、客車列車で機関車から随分離れた後部車両だけあって静かに発車する様は、動力分散方式の車両ばかりが活躍する日本の鉄道とは大きく異なり、広い線路幅(標準軌1435mm)に大柄の客車、そして駅によっては高さの低いホームなども、大陸の鉄道ならではの雰囲気が漂います。

列車は暫く大連の市街地を走り、20分程すると減速し、随分派手に工事を行っている箇所に差し掛かりますが、ここは現在建設中の大連北站で、瀋陽方面への高速線が開業した暁には、この站が起点となります。


街外れの立地は随分不便な印象が否めず、地鉄(建設中)などでのアクセスが整備されない限り、中心部の好立地にある大連站に比べて…と感じます。

日本的に考えればホームを若干増設し、折り返し時間の短縮や引き上げ線整備などで対応する事になるかと思いますが、中国ではその様な考えは通用せず、広大な用地を要する高速鉄道站を各都市の郊外に次々と開業させており、まとまった用地の確保を考えると、空港の如く中心部から離れた立地に高速鉄道駅が存在するのは、当たり前の状況になっています。

建設中の大連北站を過ぎると、所々で高架線となっている高速新線の姿を目撃する事ができ、日本のJR在来線車中から、新幹線の高架線を眺めている様な雰囲気ですが、架線も張られている状況は、開業もそう遠くないと感じます。

大連北站を出て暫く走ると金州に差し掛かり、金州站では大連站を少し前に出発した緑皮車の普快を通過追い抜きしますが、この時点で既に19時を過ぎており、金州站を過ぎて暫くすると日が暮れて、車窓を楽しむ事も厳しくなります。

あとは瀋陽まで延々と闇夜を掛け抜け、時折通過する途中站やその周辺の市街地が見える程度となります。

日が暮れた辺りで夕食を摂りますが、この列車には食堂車の類は連結されておらず、車内販売も菓子類や方便面(カップラーメン)、飲料水程度で弁当類の販売すら見られない状況ですので、持参の方便面などで夕食とします。

幾ら食堂車の連結されない短距離列車(400kmは日本の感覚だと、結構長い部類に入りますが…)とは言えども、余程のローカル列車(普慢など)でない限り、中国鉄路では給湯設備が装備されており、高速列車CRHでも給湯設備が存在する程ですので、MAKIKYU以外にも車内で方便面を食す乗客の姿は至る所で見受けられ、また茶葉を入れた茶筒にお湯を注ぎ、お茶を飲む乗客の姿もしばしばです。

夕食が済んだ後は、他車両の様子を覗きに行きますが、後ろの軟臥車は服務員用の控車になっているのか、鍵がかかっていて立ち入る事はできず、前の方に連結されている軟座車を視察します。


MAKIKYUが乗車したT5325次では、各車両車端部にLEDによる文字表示装置が装備されており、これを有効に活用すれば、中国語の会話や聞き取りが出来ないMAKIKYUの様な外国人には非常に有用で、「下一站 沈陽 Next Shenyang」などと表示して欲しいものですが、プログラムを設定していないのか、まともに活用しているのは号車表示部分だけで、あとはずっと「祝大家旅途愉快!」という表示が出たままです。

こんな表示を見ても全然愉快ではありませんので、LED表示器を使う気がないのであれば、無表示状態にでもしておいた方がまだマシと感じます。

 
軟座車は外観や形式だけでなく、車内の座席も2+2列のボックス席となっている車両と、一方向きリクライニングシート車の2種類が存在しています。

YZ25Zでも隣の12号車はボックス席、8~11号車のYZ25Kも11号車だけがリクライニングシート車となっており、リクライニングシートも集団見合い式(真ん中より前の方が逆向き)で一方向きに固定されています。
(リクライニングシートは固定座席と言うよりも、回転式座席の回転ペダルを撤去し、一方向きに固定した様な雰囲気です)

各車両で定員も異なるなど、軟座車で同じ運賃を支払っても、当り外れがかなり激しいのがT5325次軟座車の大きな特徴で、天井周りなどの内装も客車によって異なるなど、軟座車の見本市化しています。

中国鉄路では希望座席はおろか、2人で利用する際に隣り合った席を指定する事や、窓側・通路側の座席を選ぶ事、進行方向座席を選択する事すら出来ませんし、早めに乗車券を購入したら当り席が割り当てられる訳でもありませんので、どの号車・座席に当るかは完全に運次第です。

7年前にMAKIKYUが大連~瀋陽北間の特快軟座に乗車した際には、定員96名のボックス席、硬座の横幅が広くなって肘掛が付いた程度と言う大ハズレ席に当り、「一等硬座」とでも呼びたい状況でした。

こんな軟座に乗る位ならば、運賃の安い硬座でも…と感じた程で、設備的には日本の普通列車並みかそれ以下という印象を受けたものでしたが、今回乗車した13号車のRZ25Z 110653はリクライニングシートで、ボックス席車よりも定員は少なく、その分シートピッチが広くなっていますので、当たり車両に乗車できて良かったと感じたものです。

乗車区画も進行方向・窓側と、個人的に当りと感じる場所でしたので、そこそこ快適に過ごせ、日本の新幹線車両そのものの座席を装備したCRH2や、CRH2とほぼ同レベルの座席を装備した他のCRH各車種には及ばないものの、中国鉄路が運行する客車列車軟座の中では、何度か乗車した中で最高レベルだったと感じたものです。

大連~瀋陽(瀋陽北)間では、両都市間を結ぶ特快や快速だけでも複数列車が設定され、城際列車がCRH主体となっている今日では、客車列車による城際列車が手頃に楽しめるという点でも注目です。

とはいえ近い将来大連北站が開業し、瀋陽・ハルピン方面への高速線経由CRHが走り始める事が予想されますので、この列車の活躍もそう長くないと思われ、その暁には「大連から瀋陽まで、特快で4時間かけていった」と思い出話を語る事になりそうです。

空を飛ぶ(=航空機に搭乗する)のがダメなMAKIKYUにとっては、遼寧省もかなり遠い土地で、再び訪問する機会に恵まれるのかどうか…という所ですが、発展著しい中国の事ですので、もし再び瀋大間を走る列車に乗車する機会があれば、今度はどの様な列車に乗るのだろうか…と感じたものでした。