みみずく医者の備忘録

名古屋市名東区の内科開業医です。日々の出来事や診察室でのエピソードなどを織り交ぜて綴ります。個人的なメモ代わりです。

肺MAC症

2012-08-28 08:28:20 | 呼吸器科
結核菌の仲間の細菌が引き起こす肺の病気「肺MAC(マック)症」が近年、中高年の女性で急増している。
せきやたんが続く病気で、抗生物質による治療が基本だが、完治させることは難しい。
患者が増えている理由もよく分かっていない。

結核菌は「抗酸菌」と呼ばれる細菌の一種。
結核菌以外の抗酸菌が起こす病気を「非結核性抗酸菌症(NTM)」という。
日本では、抗酸菌による病気の約三割を非結核性抗酸菌症が占めている。

■人から感染せず
肺マック症は、その7割から8割に上る。
アビウム菌とイントラセルラーレ菌という、よく似た2種類の菌が起こす肺の慢性感染症だ。

多くの菌種(20種程度、イントラセルラーレ菌、アビウム菌、カンサシ菌などがある。一般に毒力は弱い)があるが、もっとも多いのが肺MAC(マック症)で全NTMのほぼ70%を占め、次いでカンサシ(MK)症が10~20%程度と推定されている。

欧米では1980年代後半から増え始め、日本でも77年からの20年間で罹患率が6倍余りに上昇した。国内の新規患者は年間8千人から1万人とみられている。
新規患者は、結核30,000人、非結核性抗酸菌症3,000人となっている。
肺結核の1/10の発生頻度だ。

肺結核と違い、肺マック症は人から人に直接感染しないのが特徴だ。
このため、患者を隔離したり、保健所に届けたりする必要はない。


■一生付き合う病気
せきやたんなどの症状やエックス線で撮影した病変は結核によく似ていて、菌も顕微鏡で見ただけでは結核菌と区別がつかないため、結核と誤診されることもある。

肺マック症は「空洞・破壊型」と「結節・気管支拡張型」の二つに大別される。
空洞・破壊型はたばこを吸う男性に多く、普通は1~2で進行し、予後が悪い。

結節・気管支拡張型は全体の8割を占め、緩やかに進行する。
予後は比較的良好だが、ばらつきが大きく、まれに数年で亡くなる人もいる。
確実に治せるという治療法がいまだに確立されていないので、患者数は増える傾向にあり、結果として漸次進行例や重症者が増えてきているのが実情。
割合は軽症30%、中等症50%、重症20%。

結核、肺の真菌症、肺炎、肺がんなどとの鑑別が重要。

治療はクラリスロマイシンなど抗生物質の投与が基本だ。
ただし結核のように完治させることは難しい。

結核は通常6ヶ月の服薬で治るが、抗酸菌症はもっと長く、1-2年程度の服薬が必要となる。

薬の効果が基本的に乏しいことと、いったん除菌できても、菌のすむ環境から繰り返し感染する。
慢性気管支炎などと同じように、一生付き合う病気だ。


■水回りを清潔に
結節・気管支拡張型の肺マック症は近年、持病のない中高年の女性に急増している。
その理由は謎だ。
菌は水や土の中にすんでいるのだが、患者にどう感染するのかも、よく分かっていない。

菌は乾燥に弱い。
浴室を乾燥させないといけない。
24時間風呂から菌が検出された例もある。
シャワーヘッドの掃除など水回りを清潔にすべきだ。



<参考>
非結核性抗酸菌症|慶應義塾大学病院 KOMPAS
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000266.html

女性に急増、肺MAC症 感染源は特定できず
http://qq.kumanichi.com/medical/2008/11/post-169.php

非結核性抗酸菌症
http://www.ne.jp/asahi/web/oki/health/kosankinsho.html



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