ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

「コンビニ」は僕の部屋

2005年04月17日 | ビジネス
一橋大学 楠木健先生の「顧客価値志向のイノベーション」の中で、コンビニの「顧客価値(CV)」とそのイノベーションについて解説をされていた。もともと楠木先生は「次元の見えない競争」として、これまでの「スペック」重視の競争から「コンセプト」重視の競争へのパラダイムシフトの中で、「コンセプト」のイノベーションを研究されている。これはどういうことかというと、例えば自動車を考えた場合に、昔はリッターあたりの走行距離やパワーウィンドウの有無、カーオーディオの搭載の有無といった「必要なもの・基礎的サービス」による競争が中心であった。しかし産業や技術が成熟してくるとこういったものでの「差別化」が難しくなってくる。そうした状況で、他社より優位に立つ、競争に打ち勝つためには、「コンセプト」による差別化が求められる。例えば「環境に優しい車=トヨタ」や「感性に訴えかけるデザイン力=日産」といった具合に。

「ホンダ神話」 本田宗一郎×藤沢武夫という「カリスマ」なき後で

楠木先生の解説では、コンビニのもつ顧客価値は「プライベート空間」なのだそうだ。もともとはコンビニというのは、「開いててよかった!」という緊急避難型コンセプトがベースになっていたが、やがてそれは「プライベート空間」に変わったという。店員との会話は殆どなく、しかしヘビーユーザーは定期的にやってきてはほっとしている。友達と一緒にくれば、買い物をするというよりもいつまでも喋っていたりする。

もともと学生時代は毎日コンビニを3件はしごするような生活をしていただけに、このあたりはまったくその通り。一人で部屋にいれば全くの孤独だけど(最近ネットがあるから違うのかもしれないが)、コンビニに行けば誰かと喋るわけではないが、何となく人と一緒にいる安心感がある。

何かが欲しいから行くのではなく、そこで過ごす時間にこそ意味があるのだ。

この番組では、別にこのことを言いたかったわけではなくて、そこにある「コンセプト」のイノベーションと真の「顧客価値」とは何か、顧客の声を聞くことではなく、スペックよりも流れをもったストーリーとして顧客の潜在的な「求めているもの」を実現する必要がある、ということ。そのあたりについては、番組を見てください。

楠木建「顧客価値志向のイノベーション」

ただ、この番組は最初の放送が1998年11月と素材としてはちよっと古い。例えば、こうしたコンビニをプライベート空間として捉えることは未だに根底にあるとはいえ、こうしたものを支えた社会風潮は一方では「ニート」を増大させたものとも通じており、ここにきて揺り戻しがきているのではないだろうか。もちろん個々の事象で見ればまだまだ「ニート」は増えるだろうが、社会全体にそうしたことを否定する空気が出始めたということは1つの頂点を超えたのだろう。

そう考えると、セブンイレブン 鈴木敏文会長が少し前に「お客さんに声をかける」ように指導していたのは、そうした変化を見てのことかもしれない。最近はあのセブンイレブンのバイトの女の子がお客さんと会話をするCMも流れなくなったので、現場では不評だったのかもしれないが。とはいえ、ローソンなどでも最近では店員の声が元気になったり、お釣りを返すにしてもお客を顔を見て「手」を添えて渡すところを見ていると、全体として、お客との接点を求める方向に来ている気がする。


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