ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

マイケル・ジャクソンの消滅とインターネット時代のスター

2009年07月21日 | Weblog
僕にとっては「忌野清志郎」の死の方が何倍もショックが大きいのだけれど、社会的にはその何十倍も「マイケル・ジャクソン」の死の方がインパクトは大きいのだろう。気が付くとうちにもCDがあったりするわけで、そういう意味でも、マイケルジャクソンは世紀の大スターだったのだろう。そんな中で「ネット時代に「次のマイケル・ジャクソン」は生まれるか」というITmediaの記事は、ネット時代の特徴をつかんでいると思う。

ネット時代に「次のマイケル・ジャクソン」は生まれるか - ITmedia News

その理由は記事本文中でも書かれている通り、これまでのような形ではマイケルのようなスターは生まれないだろうというもの。僕なりの言葉でまとめ直しておくと、

1)メディアの拡散と「興味」の分断
2)フラット化した社会と退屈な日常

自分が何かに興味あるという時、一般にその人が何かへの「興味」を見つけ出したと考えるが、実際には外部からの刺激によってその何かに「関心」が向くという場合がほとんどだ。兄貴がビートルズをよく聞いていたから自分も聞くようになった、友達がバイクの話をしていたから自分も欲しくなった、など。そしてそのもっとも影響力のあった外部刺激が「マスメディア」だ。

かってメディアといえば非常に制限されたものだった。テレビやラジオは電波という公共財を使うということで、政府からの認可が必要であり、またその内容なども「公共性」の担保を求められるものだった。一部の例外を除くと、都道府県単位で放送局が設置され、また系列という観点ではNHK、日テレ、TBS、フジ=サンケイ、朝日、テレ東(日経)の6っの絞られる。またこの系列は新聞にもそのまま当てはまる。

情報の流通経路を「メディア」と呼ぶのであれば、インターネット登場前までは、特定の企業によって「流通経路」の上流はおさえられていたのであり、そうしたメディア企業の「プロダクトアウト」によって人々の「関心」は掻き立てられ形成されていたのだ。

テレビ番組やCMとタイアップしたbeingや小室哲哉の曲が売れまくり、W浅野のライフスタイルがみんなの憧れとなった80年代というのはまさにその最後の盛り上がりだったのだろう。

しかし放送の多チャンネル化が進みこれまでのメディアの寡占化が終わりをむかえることになる。更にインターネットの登場は一般の人々が情報発信者に変えた。公共的な情報から個人的な情報まで、社会的に意義のある情報から嗜好性の高い情報まで、様々なメディア・情報チャンネルが生まれ、多様な情報が溢れ出した結果、マスメディアのように誰もが「知っている」情報や話題というものが消滅しつつある。個人が個人の関心のある情報にのみアンテナが張られ、アクセスするようになったのだ。

共同意識・共通了解事項の消失と関心の拡散。

この意味でマイケル・ジャクソンのような「誰もが知っている」「語り継がれる」大スターは成立しにくい時代なのだろう。そのような神話を作り上げるメディアが存在しないのだから。

しかしその一方で、誰もが自分に確固たる興味や関心の「軸」をもっているわけではない。多くの人は、かってはマスメディアによって自らの関心や嗜好性に刺激を受け、育てていったのであり、それがいきなり自発的に育てていけるものでもない。みんな「退屈」しているのだ。

インターネットの世界では情報はフラットに流れることになる。距離や地理、人間関係のような障壁は存在しない。あらゆる情報にアクセスでき、匿名性という鎧に守られて、自らの本能や攻撃性、欲望をむき出しにコミュニケーションをとることが可能だ。

そんな中で、ちょっと盛り上がっているネタがあれば誰もが飛びつくことになる。全てのコミュニケーションはその場限りだ。盛り上がっているネタがあり、言いたいことをいい、責任を負うことなく、時が経てば忘れていく。その行動パターンがプラスに働けば、スーザン・ボイルのように一夜にして世界的なスターとなり(但しその場限りだ)、マイナスに働けば倖田來未の羊水発言のような「炎上」となる。しかしいずれにしろこのインターネット時代では「神話」ではなく「ネタ」としてのヒーローは生まれるかもしれないが、彼らは常に消費されスポイルされ、「語り継がれる」ヒーローにはなりえないのだ。

もしこの記事に書かれているように、新しいメディアにとっての新しいスターが現れるのだとしたら、それは特定の関心をもつコミュニティの中に閉じた、「知っている人だけが知っている」スターなのかもしれない。


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