ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

有頂天ホテル:三谷幸喜が陥ったコメディの罠

2006年01月16日 | 映画♪
三谷幸喜ワールド全開!のっけから場内は爆笑。とにかく笑う笑う。にもかかわらず、「ラヂオの時間」「みんなのいえ」と比べてどうだったかと聞かれると、満足度は結構微妙なところかも。三谷幸喜の凄さ故に、コメディ特有の罠に引っかかってしまったというところか。とはいえ誰もが楽しめること間違いない1作。



「ホテルアバンティ」の副支配人である新藤平吉(役所広司)はアシスタントマネージャーの矢部登紀子(戸田恵子)とともになんとか今日、大晦日を無事に終えようと奮闘していた。ホテルには大晦日だというのに、ある協会の「Man of The Year」の表彰式があったり、カウントダウンパーティーの準備があったり、汚職の噂のある代議士・武藤田勝利(佐藤浩市)や大物演歌歌手・徳川膳勝(西田敏行)が泊まることになっていたり。そんな忙しいさなか、なぜだか総支配人(伊東四郎)は行方知れずになったり、別れた妻(原田美枝子)と遭遇したりとトラブルばかりが発生する。はたして新藤は無事に新年を迎えることができるのか…

基本的には演劇そのもものコメディもの。とにかく冒頭からこれでもかというくらいの展開とキャラクターが登場し、見ている者をどんどん引っ張っていく。役者も絶妙、主役の役所広司はもちろん、そのサポート役・戸田恵子もいい味をだしていたし、コールガール役の篠原涼子も汚職政治家役の佐藤浩市、総支配人・伊東四郎、角野卓造、松たか子などみんな絶妙に配役されていた。とにかく前半はこれでもかという笑いの応酬に誰もが楽しめただろう。

特に演劇なんかの場合、最初の場が温まるまでというのがなかなか大変なのだけど、そこはさすが百戦錬磨の三谷幸喜、一瞬のうちに場内を温めてしまった。がここからがコメディの難しいところ。前半にあまりに1つ1つの「オチ」をベースに笑いをとってしまうと、場が温まるのを越えて笑い疲れてしまう。ストーリー中心に移行したのに、結果的に、急に展開がスローペースに思えてしまったりするのだ。

今回も、その面白さにはうならされるものの、ちょっと前半の飛ばしすぎが中盤以降のつけになった気が。決して中盤以降も面白くないわけではないのに、何故か「中だるみ」のように感じてしまった。

と後半、さまざまな要素が一気に1つの大団円へとむかうのだけれど、うん、このあたりももう少し捻りがあってもよかったのかも。おぉ、こんな風に繋がったか!といった驚きもあまりなく何となく結末を迎えたという感じ。そうでなくてもコメディの場合、エンディングをどのように迎えるかというのは非常に難しいのだけれど、そこは三谷幸喜だけにちょっと期待しすぎたのかも。

それにしても津川雅彦に、登場シーンの半分以上を顔を隠させるなんてことができるのはやはり三谷幸喜だからこそか。

「ラヂオの時間」「みんなのいえ」よりも笑った量は間違いなく多いに違いないし、誰もが楽しめることは間違いない。ただそれゆえに前半のテンションで走りきれなかったのが残念なところだ。


【評価】
総合:★★★☆☆
コメディならではの難しさ:★★★★☆
伊東四郎は反則でしょう:★★★★★


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「竜馬の妻とその夫と愛人」と映画と演劇のコメディの難しさ




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