ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

「竜馬の妻とその夫と愛人」と映画と演劇のコメディの難しさ

2005年01月30日 | 映画♪
一時期、司馬遼太郎にはまった時期があった。きっかけは司馬の「竜馬がゆく」。もう夢中になってそのままその前後の時代(「世に棲む日日」や「翔ぶが如く」)を一気に読んだ。志士として時代の変革に身を投じた彼らを羨ましく思い、自分だったらこの中の誰それタイプかなとか考えつつ…まぁ、そんな話はおいておいて、「竜馬がゆく」にも軽く書かれていたように、坂本竜馬は妻・お龍にぞっこんだったようで、日本ではじめてハネムーンをしたりもしたようだが、「お龍の面白さは龍馬の中にしか棲んでいない」との言葉が示すとおり、お龍自身は竜馬の周囲の人々からはかなり評判が悪かったらしい。竜馬との死別後、土佐の坂本家に身を寄せつつもやがて離れ、京都、東京を経て、横須賀へと流れていきお金にも困っていたらしい。そのお龍を主人公に、坂本竜馬が暗殺から13年後の世界を描いたコメディがこの映画。

竜馬が暗殺から13年後。新政府の役人・菅野覚兵衛(中井貴一)は、勝海舟から坂本竜馬の十三回忌をに竜馬の元妻・お龍(鈴木京香)をよぶように命じられる。お龍は西村松兵衛(木梨憲武)というテキ屋と再婚し横須賀で貧乏長屋で暮らしていた。菅野はお龍に話をするために松兵衛を訪ねるが、この時既にお龍は竜馬にそっくりの愛人・虎蔵(江口洋介)にぞっこんで一緒に生活していた。
坂本竜馬の妻が男と遊び歩いていては、竜馬の名が汚れてしまうと考えた菅野は松兵衛に虎蔵からお龍を取り戻すよう仕向けるのだが…



そうそうたるメンバーだ。監督は「東京夜曲」を撮った名匠 市川準、脚本は「ラヂオの時間」、「みんなのいえ」で映画でも通用することが証明済みの三谷幸喜。役者陣も鈴木京香、木梨憲武、中井貴一、江口洋介とそうそうたるメンバーであり、それぞれの役柄を見事に演じている。映像は市川流の叙情性に飛んだ美しいものだし、脚本も面白い。なのに、10+10+10+10+10+10+10+10+10+10が「100」ではなく「75」くらいにしかなっていない。う~ん、特にどこをとっても決して悪くないのだけれど、何故なんだろうか。

結局、芝居の面白さを形づくる「テンポ」と映画の面白さをつくる「テンポ」は違うということなのだろう。例えば芝居であれば、「落ち」のためにさりげなく前振りをしておいて、ストーリー自体は本筋を追わせつつ一気に「落とす」といったことを行うわけだけれど、映画の場合、特に叙情派の市川準の場合、本筋のシーンごとにある意味完成されてしまうために「落ち」きらない。「前振り」と「落ち」の間に断絶を感じてしまうのだ。

もちろん映画流の笑いのとり方もある。そうした部分についてはもちろんOKだ。ただ芝居的な笑いのとり方になっている脚本をどう映像化するかについては、もう1つだったのではないだろうか。

これは面白い芝居を映像化する時に必ず課題となることだろう。劇団MONOがやっている「約30の嘘」も評判を聞く限りもう1つ、といったところだ。こちらも椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡、田辺誠一などそうそうたるメンバーが揃っているし、MONOの芝居自体は決して外れがない。しかしMONOの芝居は、芝居というメディアの特徴を知り尽くした土田英生が作り上げているからこそ面白いのであって、全く異なるメディアである「映像」で必ずしもその面白さを表現できるとは限らない。おそらくそのことは現在の評判が示しているのだろう。

とはいえ、決して駄作ではない。あくまで100を期待してしまったところが75だったというだけで、75自体が低いわけではないのだ。

特に、後半、鈴木京香と木梨憲武のやり取りは抜群だ。お龍の想い・孤独・悲劇と自分の下を去っていくお龍に対する松兵衛の想い。セリフも抜群だ。「俺、生きてるから」「俺、お前が背中かゆい時、だいたいどの辺かわかるし」なんて三谷幸喜ってこんなセリフも書けるんだってちょっとびっくり。いやいや役者の熱演もあって心にぐっときます。

まぁ、最後にやっぱりコメディらしくまとめた部分については賛否両論だろうなぁ。


【評価】
総合:★★★☆☆
役者:★★★★☆
それぞれの「らしさ」が出ていた度:★★★★★


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「約三十の嘘」

MONO 公式ホームページ


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五稜郭以来の映像評です。 「竜馬の妻とその夫と愛人」をレンタルビデオで見ました。